3回目の東下りと「床屋談義」

  1. 前回のブログに、杭にとまっている、とても小さいカワセミの写真を載せたところ、田中さん&松崎さんから「見つけた」とコメントを頂きました。視力がいいのは若い証拠、羨ましいです。

 岡田さんからは、「漢字では翡翠と書く。英語のkingfisherよりピンとくる」というコメントがありました。翡翠は宝石のヒスイでもあり、これをカワセミと読ませるのはご指摘の通り洒落ていますね。

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 岡村さんは「フィンランドに旅行したとき、手作りの店でカワセミのペンダントを売っているのを見た」とのこと。写真を添付していただいたので転載します。世界のあちこちで写真を撮っておられます。

 

 老人二人は、朝の散歩の途次、池のほとりで相変わらずカワセミ探しです。一昨日は辛うじて捉えることが出来ました。 

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2.  話変わって今回は、赤坂で、京都からお越しの下前さんの講話を聞いた報告です。

 「床屋談義」と題する「京都の話」は昨年の夏に始まり、これで3回目です。皆さん喜んで聞いていて、まだまだ続いて欲しいものです。

 

(1)今回の本題は、「京都のまちなみ」について。

下前理容店のある姉小路通りは、25年以上も住民が、「姉小路界隈を考える会」を作って活動している。下前さんは副会長。

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(2)会が自主的に動いて、「平成版の町式目」や「建築協定」を制定し、ルール作りを図った。

その結果、「5階以下の中低層の街並みを基本とする」方針を打ち出し、京町家再生の事業にも取り組み、10年かけて26件の京町家を再生した。

 

(3)取り組みに関心を持つ人も増えて、海外から調査に来る人も多い。

アメリカの名門校MIT(マサチューセッツ工科大)の学生が先生に連れられてフィールド・リサーチに来て、下前さんが応対したこともあった。

 

(4)京都の中心部は、「職住同居」の住まいが多かったこともあり、いまも木造建築が多い。

  昭和の戦争で空襲がなかった幸運もあり、いまも残っているが、どんどん減ってきている。「瓦屋根で格子戸のはまった町家は、日本人の住まいの原風景の想いがして後の世に残したい」と下前さんは言います。

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(5) 例えば、近くにある「イノダコーヒ」の本店は、彼は17歳の時から60年毎朝通っているが、外装も内装も基本は昔のままであり、変わっていない。

 古い頃の「イノダ」や「和菓子の亀末廣」や「鳩居堂」などの写真を見ながら、そんな話を聞きました。

 

(6) 文化を守る、大事な取り組みですね。

一つだけ贅沢なお願いを言えば、祇園の花見小路のように、電線の地中化を実現してもらえないかです。費用が難問でしょうが、ロンドンやパリやニューヨークの街を歩いていて、電柱を見かけることはまずありません。「電柱大国日本」を何とかしてほしいと思うのですが・・・・・。

 

3. この日は、もう一つ、文化財、とくに国宝や重文などの絵画・典籍などの修理に携わる装潢師(“そうこうし”と読みます。私は初めて聞く言葉です)の仕事についてもお話がありました。

これもやはり文化を守る人たちについてで、面白かったです。できれば次回にご報告したいです。

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この2つの講話を聞きながら、

――「何が失われた大切なものか?」、そして、

「何が、新しく生まれた美しいものか?」―

の2つを考えていくことが大事ではないか、とあらためて考えました。

 前述した「町家の保存」と「電線の地中化」は、「失わない」努力と「新しく美しいもの」とを共存させる「新しい文化」ではないでしょうか。

 

  1. 講話の合間には、

  「イノダ」からスタッフが出張してくれて、ドリップ式の珈琲を入れてくれました。

 

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(1)  犬のマークのついたビクターの手回し蓄音機で、45回転のレコードのシャンソンを聴きました。

流れたシャンソンは、1943年にイブ・モンタンが歌った「枯葉」や越路吹雪でした。

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(2) この会は、松井孝治慶應義塾大教授の主宰するシンクタンクの企画です。

同教授は親子3代、下前理容店で頭を刈ってもらっているそうで、旧知の間柄。

そういうこともあってか毎回、雰囲気の良い、よく考えられた洒落た企画でした。

カワセミを探す。「子供たちに本を」の活動を見る。

  1. 朝の散歩の目的地、目黒区の駒場野公園には小さな池があります。

 鴨やアオサギをよく見かけます。カワセミもいる、と駒場に住む友人夫妻が教えてくれて、これは珍しい、ぜひ見たいと思っていましたが、なかなか出くわしません。

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 友人は大学の写真部OBで、彼が撮った写真を送ってくれたので掲載させて頂きます。背中が鮮やかな水色の、お腹は茶色の、小さい美しい鳥です。

 先週になってやっと朝2回ほど、遠くから見つけました。水面近くを早く飛ぶので、あっという間に見えなくなってしまいます。

 私の腕では撮影は難しく、何とか写したのを下に載せましたが、小さくてどこに写っているのか、お分かりにならないでしょう。

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  一年中いるのに、なぜか夏の季語になっています。繁殖期を除いて、水辺に単独で生息する鳥だそうで、孤独を愛するのでしょうか。「御庭池かわせみ去って鷺(さぎ)来(きた)る」(正岡子規)という句があるように、駒場野公園でも鷺とは一緒にいることが多く、相性がよいのかもしれません。

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  1. 散歩を終えて帰宅して、BS3の「世界のトップニュース」を見ることが多いです。

      先週は、アフガンの食糧危機で飢えに苦しむ子供たちや、英国に辿り着こうとする難民を乗せた小さなゴムボーが沈没して何十人も死亡したという悲惨な報道が「トップニュース」でした。映像は日本のニュースと異なり、生々しいというか、時に目を覆いたくなることもあります。

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    3.日々の「トップニュース」の他に、個別のトピックスを取りあげた「特集」コーナーが面白いです。

   毎週金曜日の「特集」は、マイケル・マカティアさんによる「ニューヨークからの報告」です。マイケルさんは京都生まれだそうで、日本語が日本人以上に堪能な120%バイリンガルです。

 1か月も前でしたが、ニューヨーク・ブルックリンでの、子供たちに本を無料で配る活動を紹介していました。
 

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(1) NPO「ブルックリン・ブック・ボデガ(雑貨店)」は、3人のママ友が設立、助成金と寄付をつのり、本を寄付してもらい、公園で、子供たちに「1回に1人1冊無料」で提供する試みを続けている。10万冊を寄付してくれた出版社もあり、毎回数百冊を子供に提供する。

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(2)「一家に100冊の本を」をNPOのスローガンにしている。

 代表者の女性は、「子供に本を読ませることが大事、読書は自立心を養うから」だと語ります。「自立した考えを持つ人は、困難や障害に出会ったときに自分で解決できるようになる」。

 

(3)「子供が本を読むようになるのはどうしたらよいか?」とマイケルさんが訊くと、

 もちろん図書館の存在も大事だが、それだけではなく、「家のあちこちに本がある環境が大事だ」と彼女は言います。

「トイレにも親の寝室などにも本を置いておくこと」。

「しかし本をたくさん家に揃えるには費用もかかるから、私たちが無料で配布する」という信念が活動の原点のようです。

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(4)それなら、ニューヨークの大人たちは果たして本を読んでいるだろうか?とNHKのキャスターが質問しました。

 マイケルさんは「実は、結構読んでいる」と答えていました。

「NYの地下鉄の中には、電源が全く届かないところも少なくない。それもあって電車で活字の本を読んでいる光景をよく見かける」そうです。日本の電車では殆ど見かけませんね。

 また、社員に「お勧めの読書リスト」を用意する大手の会社もあるそうで、古典的な文学書もたくさん入っている、と言っていました。強制ではないでしょうが、社員同士のコミュニケ―ションの一助にはなるかもしれません。

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(5) どこの国でも、SNSに時間をとられて、子供たちの「本離れ」は進んでいるでしょう。

マイケルさん、最後に「僕も子どもと一緒に読もうと思います」と約束していました。

 

読書の秋、実りの秋、落ち葉の季節

  1. 秋は実りの季節で、庭のかりんの木にも実がなります。

妻が、門前に「どうぞご自由に」と書いて置いておくと、けっこう持っていってくださる人がいます。食べられないのですが、香りが貴重がられるようです。

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  1. 年に一度、植木屋の竹内さんが入ります。

 

(1) もっぱら妻が相手ですが、昔の、我が家にまだ梅や松があった頃からの長い付き合いです。

今は畳2畳ほどのごく小さな庭になりましたが、竹内さんはこの日も、「季節外れの陽気ですね」と言いながら、汗を拭きふき、丁寧な仕事をしてくれました。

数年前に独立して「世田谷・庭竹」と名乗り、頑張っている職人さんです。

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(2) 暖かな秋日和で、私も卓と椅子を出して本を拡げていたところ、「顔を見えないように写真を撮っていいですか?」と訊かれました。

ブログをやっているそうで、毎回写真と短文を載せる、家の主が庭を好んでいる光景はとても嬉しいので紹介したいということでした。

 

(3) 翌日、早速アップしてくれたので覗いてみました。

「手入れの仕上がったお庭で、お茶を片手に読書をされているお客さんです。

お庭を上手に楽しまれる方がいらっしゃると、植木屋(庭師)としても嬉しくなります」

と書いてくれました

この文章は前置きで、彼のブログのこの日の本題は、「年内は予約でいっぱいで、新規の対応はできない」というお詫びでした。こういう仕事が忙しいのは結構なことだと思いました。

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(3) 若い頃は、庭木への関心は薄く、仕事で忙しいのを口実に、もっぱら妻任せでした。

 あの頃、もっと竹内さんの話を聞いておけばよかったと今になって悔やんでいます。

 昔なら縁側があって、休憩時間に庭師が座ってお茶を飲みながら、木や花々を眺めながら家主とのんびり会話を交わす、そんな光景があちこちで見られた筈です。

 

(4) 椿の植え込みがあり、そこに妙なものがぶら下がっているのを数日前に妻が見つけました。

二人で確かめて、どうやら蛇の抜け殻ではないだろうかと、ちょうど竹内さんが来てくれたので訊いてみました。

やはり、「そうだ」ということで驚きました。十年以上昔は、まだ蛇も蛙もいましたが、長い間見かけず、さすがにもういないだろうと思っていましたが、どうやらまだ頑張っているようです。

我が家は二人とも、大の苦手で、見かけると足がすくんでしまう方です。

この時期は、脱皮したあとは、どこか地中にもぐって冬眠に入るのでしょう、姿は見かけません。しかし来年の春になったら、地上での活動が始まるのではないか、

・・・・というようなことを二人で話し、少しおっかなびっくりの来年になるかもしれません。

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  1. もとより庭といってもいろいろで、蓼科の山奥にある田舎家は、手入れもせず、ほったらかしです。

落葉松やもみじの紅葉がきれいですが、晩秋はなかなか訪れるのも難しく、残念に思っていたら、近くに住む友人が親切にも写真を撮って送ってくれました。感謝をこめて載せさせていただきます。

京都の紅葉もいまが盛りでしょう。

 コロナの前はよく散歩していた東大駒場のキャンパスは、銀杏がきれいに紅葉している筈ですが、もう2年近く部外者は入れません。

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  1. 先週は本当に気持ちよい日が続き、外出もしました。

用事があってお茶の水まで出かけ、それを済ませてから、神田界隈を散歩しました。

 

(1) おりがみ会館を覗き、精巧な折り紙細工に感心し、

(2) 神田明神にお参りし、

―――週末でもあり、七五三の若い家族連れや婚礼にも出会いました。

 

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(3) 湯島聖堂に寄り、聖橋を渡って、ニコライ堂を眺めながら、神保町に足を延ばしました。

この辺りは、京都人の岡村さんが私よりはるかに詳しいところだなと思いつつ、彼がお気に入りの喫茶店「さぼうる」の前を通りました。ちょうど昼時のこともあって行列でお客が待っていました。京都の「イノダコーヒ」なみの人気です。

 

(4) 私は、古書街をぶらぶら歩いてから交差点そばにある旧岩波ブックセンターの後にできたカフェで休憩。読みかけの本を拡げました。

古書店も一時は閉まっていましたが、すべて開店して、立ち止まって古書を眺める本好きも見かけました。

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 徐々にではありますが、人々の日常が普段に戻りつつあるようです。

散歩や庭での読書、そしてたまに「ハレ」に出掛ける、そんな日々が生きる価値と感じる、これはコロナのお陰でしょうか。

AI自動翻訳のDeepL(ディープエル)―その2

f:id:ksen:20211024112142j:plain1.前回、AI自動翻訳のDeepL(ディープエル)を紹介したところ、フェイスブックでコメントを頂きました。

 

  1. ご存知の方ももちろんいて、中島さんから、

「産業翻訳や一般的な説明書などを含めて、需要は大きい。理科系の論文はほぼ問題ないとの評判。英語力にハンディのあった日本人研究者には福音だろう」とあります。

 

  1. ドイツ在住の刈谷さんからは以下の情報提供がありました。

(1)Google翻訳を使っているが、これも結構いける(DeepLもこれから試したい)。

(2)例えば、フランスに旅する際、ドイツ語で書いてグーグルでフランス語に変換してメールする。欧州言語同士であれば、宿の予約程度の文章なら、ほぼ問題なく使える。

(たしかに、AIの翻訳機能は、まずは、英語と欧州言語および欧州言語同士から、早く進歩しそうです)。

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(3)また、

「(日本にいる)友人が大学の授業で、英文のエッセイを書くよう課題を出したら、何人かの学生の英語がかなりこなれていた、どうやら自動翻訳してそのまま提出したらしい」。

添削しながら、「私はいったい誰の答案を直しているんだろう」と思ったそうです。・・・・・・」

(先生が、機械による翻訳を、大学生には書けない「こなれた英語」だと思ったところが面白い。日本の学生のレベルよりは上と判断したのでしょう。)

(4)このようにGoogle翻訳が先行して、後発のドイツのベンチャー企業DeepLが追いかけるという構図でしょうか。

もちろん他にも多数が研究・開発しているでしょうから、競争原理がうまく働けば、質もさらに向上するのではないか。

 

  1. 「早速試してみたが、素晴らしい。驚きました」あるいは「これから無料体験する」というコメントも頂きました。

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  1. 岡田さんからは、

(1) 「高校生に教えている「キャリア教育」の教材に使おうと、昔の教科書に載っていた、南北戦争時のリー将軍が息子に送った手紙の一節を日本語訳にしてみた。音声も聞いた」とメールを貰い、「早いのに驚いたが、後半の訳がだいぶずれている」という指摘を頂きました。

 

(2) ちなみに、もとの英文は以下の通りです。

 「January 23, 1861 A LETTER TO HIS SON

(A) If you have any fault to find with any one, tell him, not others, or of what you complain ;

(B) there is no more dangerous experiment than that of undertaking to one thing before a man’s face and another thing behind his back.  Robert E. Lee 」

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(3)岡田さんが試して、出てきたDeepLの翻訳は以下の通りです。

――「(A)誰かに不満がある場合は、他の人ではなくその人に、あるいは何について不満があるのかを伝えましょう。

(B)ある人の顔を見て、別の人の背中を見て請け負うほど危険な実験はありません。――

 

➡(A)は、うまい訳とはいえませんが、意味は通じます。

しかし(B)は、理解できません。岡田さんご指摘の通りです。

 

(4)そこで、メールを頂いた翌日、念のため私も試してみました。

(A)の部分は変わりません。

(B)の部分はこう変わっていました。

――「人の前ではあることをして、人の後ろでは別のことをするということほど危険な実験はない。」

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(5)私あてに出てきたDeepL訳の(B)部分は、やはりうまい訳ではないが、意味は通じる。機械としては上出来と言えるのではないでしょうか。少なくとも、誤訳ではない。

 

(6) ということで、岡田さんとメールで「一日遅れただけで、どうして違う訳が出てきたのか。不思議ですね」と話し合ったところです。

 

(7) ちなみに、ロバート・リー将軍は、アメリ南北戦争のときの南軍の司令官。敗軍の将ながら、名将かつ高潔な人物との評価が高い。故郷ヴァージニアを見捨てることはできず、リンカーンからの誘いも断り、南軍に参加した。戦争や、奴隷制に必ずしも賛成ではなかったとも言われています。

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しかし、昨年のアメリカ全土を揺るがした人種差別抗議の嵐の中で、「南部の象徴」として攻撃され、銅像が幾つも撤去されて話題になりました。

 

AI自動翻訳Deepl(ディープエル)のこと

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  1. 前回のブログで、アメリカン・ドリーム、ならびに、NYでの新しい人生を目指す新カップルを取り上げました。

岡田さんからのコメントで、アメリカン・ドリームを追いかけて前向きに生きている次女のことを伺いました。会社の支援でMBACPAの資格を取り、近々CFOになるそうです。本人の努力も立派だし、優秀な社員を支援するアメリカの会社の姿勢も素晴らしいです。

 

岡村さんからは、若いころ海外を旅して、こんなところでと思うような場所で日本女性が頑張っているという話です。

――「北極圏の町外れに住む日本人女性にも会った。夫は遠洋漁業に出ると長く帰ってこない。2人の子供を育てる姿をみて、女性はすごいと思った」とあります。

 そして、「潔いプリンセスがいる。小室さんの覚悟はどうなのか。僕は、彼が米国籍を取り、晩年もアメリカで過ごしてほしいと願っています」というコメントもあり、将来を思いやる気持が伝わってきます。

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  1. ところで、前回は世田谷読書会で、アメリカ文学の傑作と言われるスコット・フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』を取り上げた話もしました。

(1) 会で、AIによる自動翻訳「Deepl(ディープエル)」について紹介してくれた人(お医者さん)がいました。

 

(2)「Deepl翻訳」でウィキを検索すると、「2017年にサービスを開始した無償の機械翻訳サービスで、ドイツケルンに本拠地を置く DeepL GmbHが開発した。Google 翻訳よりも精度が高く、微妙なニュアンスのある翻訳ができると肯定的な報道を受けている」とあります。

 

(3) 紹介者は『グレート・ギャツビー』の英文の一部をこの機械で訳してくれました。

読んでみて、誤訳や訳を抜かした箇所があり、文学作品にはまだまだ使えないなというのが読書会メンバーの感想でした。

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  1. ところが、

(1) 自宅に帰って早速いろいろ試してみると、新聞や雑誌の記事の翻訳には結構使えることが分かってきました。AIの進歩や恐るべしの印象です。

 

(2) たまたま昔の職場の友人からも、以下のようなメールが来ました。

―「自動翻訳のDeepL、もうご存じかと思いますが、関西の私立大学の教授の友人に教えられて、試してみました。レベルの高さに驚きました。

自動翻訳は、レベルが上がったとはいえ、どうしても不自然な言葉が入り、「矢張り、人間でなければできないことがある」と感じていたのですが、DeepLは、少々試しただけですが、そういった違和感が全くありません。

早稲田の理系の教授の知人がいます。研究所でも、DeepL を使っているとのことです」。

 

(3) 気付いたのは、

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・以下のサイトから簡単に入れる。

DeepL翻訳:世界一高精度な翻訳ツール

 

・一定の範囲で、無料で使える(私はまだもっぱら無料使用です)。

 

・20以上の言語の翻訳が一瞬でできる。その速さには驚く。数千字の文章が数秒でOK。

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  1. 私が試したのは、例えば、10月26日、プリンセス・マコの結婚に関する電子版の英国BBCやEconomistの記事です。一瞬で日本語に訳してくれる。

Japan's Princess Mako finally marries commoner boyfriend Kei Komuro - BBC News

Japan's Princess Mako: The woman who gave up royal status to marry - BBC News

A long-delayed royal wedding reveals awkward truths about Japan | The Economist

 

 Deeplのサイトを開けて、左の欄に原文をコピペすると、右に日本語訳が出てきます。

 こなれた日本語になっているかどうかはともかく、決定的な過ちもない、文章にさほどの違和感もない。

  

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5.不満を言えばきりがないでしょうが、いろんな使い方がありそうです。

・まずは機械で下仕事・下処理をやってもらい、そのあと自分で納得のいくように推敲し、良い文章に直すとか、

・もちろん、日本語を英語にする作業も可能ですから、英語の文章を書く、とくに論文を書く研究者にとっては、ここまで下働きをやってくれれば、大助かりではないでしょうか。

こういう時代になってきたのですね。

いつの日か、フィッツジェラルドの美しい文章を必死になって翻訳した村上春樹の営為を乗り越えるような邦訳の傑作が、AIのデイープ・ラーニングから生まれるでしょうか。

『グレート・ギャツビー』とアメリカン・ドリーム

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  1. 先週初めは、今年最後の蓼科滞在でした。

 日曜日は気持ちよく晴れて、原村にある八ヶ岳農業実践大学校を訪れました。

誰でも入れて、学生たちが作る野菜や乳製品を売っています。牛や羊がのんびりと牧草を食み、八ヶ岳やアルプスも遠望できます。

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  1. その1週前の日曜日は東京で、世田谷読書会に久しぶりに出席しました。

年配の読書家が多く集まり、面白い会です。

本を推薦し、発表&議事進行を担当する機会も多く、いままでに私が取りあげたのは16冊。

 

日の名残り』(カズオ・イシグロ)や,『こころ』や三島由紀夫に始まり、

大岡信の『日本の詩歌』(岩波文庫)、加藤陽子の『それでも日本人は「戦争」を選んだ』、

水村美苗の『日本語が亡びるとき』、『ユーモアのレッスン』(外山滋比古中公新書)、『女性のいない民主主義』(前田健太郎)、『黒人差別とアメリ公民権運動』・・・・など多岐にわたり、思い返すと懐かしいです。

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  1. 今回のテキストは、スコット・フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』が選ばれました。

 

(1) 4回も映画化されている、アメリカ文学を代表する作品です。

(2) 26歳のアメリカ滞在時に読み、その後何度も読み返している、「青春の書」です。

 

(3)語り手ニックを通して描かれる「ギャツビー」は,青春時代に南部で会った富豪の娘デイジーに恋い焦がれる。

ギャツビーは、「貧しい若者は、金持ちの娘と結婚しようなんて考えるべきではない」という警告を受けながら、彼女の愛を獲得すべく努力し、しかし結局は挫折し、悲劇的な死で終わってしまう。

 

(4)本書は、翻訳した村上春樹も言うように「アメリカン・ドリームとその崩壊の物語である」という評価が定説です。

アメリカン・ドリームとは、アメリカでは生まれや家柄に関係なく、機会は誰にでも平等に与えられている、誰もが自らの努力によって夢を叶えることができるという「神話」です。

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(5) しかし私は、「アメリカン・ドリーム再生の物語でもある」と理解しています。

本書は語り手ニックの「成長物語」でもあるからです。

 

たしかにギャツビーは挫折した。しかし彼が抱いた夢は、ただ一人、ギャツビーを「グレート」な人間だと信じるニックを通して継承されていくだろう。

そこがこの物語の大いなる魅力です。原文の最後の文章は、まさにそのこと、「夢の再生」について美しく語っているのではないでしょうか

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―――「ギャツビーが信じた緑の灯―年月とともに遠ざかっていく素晴らしい未来―は、今回は私たちの手から滑り落ちてしまった。しかし、それでも構わないではないか。――明日には、私たちはもっと速く走り、両腕をもっと先まで差し伸べるのだ・・・・そうすれば、いつか素晴らしい朝には――。

だから私たちは、絶え間なく過去へと押し戻されても、流れに逆らうボートのように前へ前へと進み続ける。」)

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  1. アメリカの新聞・雑誌を読むと、「アメリカン・ドリームなんて死んだ」と叫ぶ若者の声を多く伝えています。

 しかし、理解しておく必要があると思うのは、

 

・このキーワードが今後ともアメリカという国家を支えていくために絶対必要な「神話」だということ(日本で相当するものは何か?)。

 

・かつ、いまも決して「完全に死んではいない」ということ。

例えば、最高裁判事ソニア・ソトマイヨールです。2009年、当時のオバマ大統領は、プエルトリコからの貧しい移民の両親から生まれたソトマイヨールを指名するスピーチで、「彼女こそアメリカン・ドリームです」と述べました。

本書がいまも「アメリカ文学最高の傑作」と言われる所以の1つだろうと思います。

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6.翻って26日の英国BBCは、日本の新カップル誕生を報じる記事を、「見出し」に続いて「プリンセス・マコは、カレッジ時代の恋人ケイ・コムロと結婚し、かくして皇族の身分を失った」という一文から始めます。(Japan's Princess Mako has married her college sweetheart Kei Komuro、thus losing her royal status)。

そして、皇室典範12条の規定、「皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と結婚したときは、皇族の身分を離れる」を紹介します。

 彼女は、NYという新天地でアメリカン・ドリームに挑戦したいと考えているのでしょうか。

真鍋博士の言葉に共感して、ひょっとして国籍を移すこともあるでしょうか・・・・。

神代植物公園の薔薇と総選挙に思うこと

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  1. 自粛が緩和されて、再開された神代植物公園へ、今が盛りの薔薇やダリアを見に

行きました。深大寺にお参りして、「秋深し深大寺そばひとすすり」です。

 

  1. もっとも、老人の行動が急に変わるわけもなく、コロナ以来夕食は妻と差し向かいが多いです。

 

(1) その結果、夫婦の会話量が増えた、かつ真面目な会話が増えた気がします。

 

(2) 妻の読書量も増えました。

ときには何を読むか悩んで、私のブログを参考にして、原田マハの『総理の夫』や衆議院議員小川淳也の『本当に君は総理大臣になれないのか』(講談社現代新書)などを熱心に読んでいます。 

似たような状況の友人が多いようで、本を送ってもいます。「面白い本を有難う」や「小川さんは私も前から応援しています」といった返事が来たそうです。

妻は家政学部卒ですから、政治や法律は学んでいません。それだけに、よい勉強になっているようです。

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(3)夕食をとりながら、質問をされることもあり、私も知識を再確認する機会になります。

 

(4) 時には、うんちくを垂れることもあります。

例えば、『議院内閣制――変貌する英国モデル』(高安健将、中公新書)―これもブログで紹介しましたーを種本にしながら、

・英国が模範と言われる「議院内閣制」について、その長所と欠陥について語り、

・「議院内閣制」とアメリカの「大統領制」の2つの政治体制の違いについて、前者は性善説(政治家への信頼)、後者は性悪説(権力をいかに法で縛るか)にもとづく、

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(4) そして、「変貌する英国モデル」と本書の副題にあるように、英国が議院内閣制の欠陥を是正すべく、どのように制度改革に取り組んできたかを説明し、

 

(5) それに比べて、日本が制度の欠陥を是正する努力をしてこなかったか(いつまでも与党であれば、その意識は生まれてこない)、

―――というようなことを喋ります。

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  1. コロナのおかげで悪いことばかりではないなと思います。すなわち、

(1) こんな風に、夫婦の会話が多くなり、話題も広がり、真面目な話が増えた。

(2) 政治・社会問題への妻の関心が高まり、新聞も従来以上に読むようになった。

(3) その話題をほぼ同世代の女性の友人と共有する機会も生まれた。

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  1. そんな状況で、総選挙の投票日が1週間後に迫りました。

誰を応援するか?

選挙区が違うので1票を投じることはできませんが、応援している候補者が2人います。

 

(1) ひとりは、香川1区から出馬している小川淳也さん(50歳)。

 言うまでもなく、『本当に君は総理大臣になれないのか』の主人公です。

ブログで紹介したところ、京都の下前さんと親しい、私も夕食をともにしたことのあるお医者さんから、「こういう人物を総理にしなくちゃ。応援したい」というコメントを頂きました。

また、中高と大学が一緒の廣田尚久さん(弁護士)は、最近小川さんに会い、『共存主義、ポスト資本主義の見取り図』という自著を渡す機会があったそうです。

彼からは、「『本当に~』に書いてある通りの、一点の曇りもない人物という党内の評を聞いている。長期的観点で物事を考える政治家と思った」という報告を貰いました。

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(2) もう一人は京都6区、宇治市などが選挙区の、山井和則さん(59歳)。

田中美貴子さんが応援しています。

田中さんは宇治市の市会議員から議長になり、いまは府会議員です。昔、「まちづくり委員会」など、いろいろ一緒にやりましたが、市民の声を熱心に聞き、ともに動く人です。明るく、元気で、庶民的で、地方政治家のロール・モデルではないかと感じていました。

その田中さんが応援する山井さんも立派な人です。

5年ほど前になりますが、彼女が「いちど紹介したい」と声をかけてくれて、上京した折に二人で国会の予算委員会を傍聴し、そのあと山井氏を入れて夕食をともにしていろいろ話をしました。

地味な、しかし真面目で誠実な印象を受ける人物です。

京大の工学修士で、スウェーデンの大学でも学び、福祉の専門家でもあります。

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  1. この二人には、引き続き国政で活躍してほしいと願っています。

そして、むろん異論のある方もおられるでしょうが、ドイツのように与野党が接戦を演じてほしいです。プロ野球だって、優勝はヤクルトか阪神か、ロッテかオリックスか、ドキドキ・ハラハラする方が緊張感があると言ったら不謹慎でしょうか。