ksen2005-11-02

オムロン京都太陽」のビジネスモデル確立にあたっては、前回もふれたようにオムロン創立者である故立石一真http://www.omron.co.jp/history/kazuma/page15.htmlの意志が強く働いたであろうと思われます。ところで障害者の雇用の促進等に関する法律http://www.houko.com/00/01/S35/123.HTMをご存じでしょうか?この法律では、「障害者雇用率」の制度を設けて、一定数以上の規模の企業等に対して、その雇用している労働者にしめる障害者の割合の最低基準を決めています。官公庁は2.1%、民間企業は1.8%です。
 オムロン京都太陽を訪問した際も、その後オムロン本社に伺ったときも、このことが話題になりました。その際のご説明によると、最近時点の対象企業の全国平均は1.46%、およそ57%の企業が1.8%を未達成(未達成の企業等は罰金を払うことで対応)。それに対して、オムロンの数字は、オムロン京都太陽(このように障害者を多数雇用することを目的に設立された子会社を「特例子会社」とよび、本制度上は親会社と同一の事業主体とみなされます)を含めて2.27%とのことでした。
 さらに感心したのは、2007年度を目標にして、会社全体での達成だけではなく、各工場や事業所ごとにこの数字を達成しようという目標を掲げたとのことです。工場に比べて例えば営業部門などは実現にいっそうの苦労と工夫がともなうことは容易に想像できます。当然ながら現場の抵抗はかなり強かったようですが、トップの強いリーダーシップのもと、やるんだという意志が表明されて、最後はどこも納得したという説明でした。
 2人になったときにジョンとしばらくこの話をしました。「アメリカにはもちろんこんな法律はないし、」と言うジョン。「おそらく法案を作ること自体無理だろう。アメリカはやはり政府や法律の押しつけではなくて、自発的な民間の創意に基づくものでなければ支持を得るのは難しいし、かつ基本的に、全てが市場原理によって達成されなければならないと信じている人が多いんだ」。
「いかにもアメリカの経済学者らしい発言だと思うけど・・。しかし素晴らしい制度だとは思わないか?こういうことが自発的な創意だけで実現されると思うか?」と訊くと「うーん、うちのゼミの学生みたいに突っ込みがきついね」という応答でした。気さくで実に人柄の良いジョンですが、やはりアメリカが日本に劣っていると思われるのはどうにも嬉しくない、という顔つきでした。
実は、このやりとりを思い出しながら、ジョンの言いたい気持ちも分かるな・・・という風にも感じています。「障害者の雇用の促進等に関する法律」の趣旨は素晴らしい。世界に誇ってもいい制度だと思います。しかし、法律があるから守る・政府の決めたことだから従う(従っていない人も上述のようにたくさんいるのですが)・・・というのではない風土ももう少しこの国に必要ではないか。企業や市民セクターが自発的に声をあげ・行動していく社会のあり方、その点ではアメリカにも見習うことが多いのではないか・・・・・少し議論が飛躍してしまうかもしれませんが、批判的なコメントがあれば歓迎です。いささか長いブログになり、恐縮です。