アリスのボランティア活動は、13歳の夏に始まりました。アメリカでは学校の夏休みが長く3ヶ月近くあるので、彼女の場合、ある非営利組織が運営する、身体障害児のための宿泊キャンプのジュニア相談員としてふた夏を過ごしたとのことです。彼女はそこで、障害児たちが抱える二重の苦難、彼ら・彼女らが障害をもっているだけでなく、貧困にさいなまれているという事実を知ります。
 多発性硬化症を患う少女は自分が20歳まで生きられないだろうということを知っていました。年毎に症状は重くなり、身体を動かすことがいっそう難しくなっていくのです。中には、生まれたときから障害をおっている子供たちや腕や脚のない子供たち、車イスの子供たちもたくさんいました。しかし共通して言えることは、全員がキャンプでとても楽しく過ごしていたということです。キャンプは質素な施設でしたが、清潔できちんとしており、水泳プールまであったのです。
 アリスはそこで、障害児がともに過ごすことが彼らにとって実に大事なのだと気づきました。そこでは、少しでも障害の度合いの少ない子供たちが、より重い障害児の面倒をみようとする、どんな人でも自分より弱い人を助けることができるということを学ぶのです。生まれて初めて他人をケアするという経験をして、自分が生きていることの本当の意味と自信とが生まれてくるのです。
 そういう障害児たちと日々つきあった夏、10代前半のアリスは「毎日、涙がとまらなかった」と語ります。しかし、彼ら・彼女たちは涙もみせずに楽しく過ごし、泣いてしまうのはキャンプを去らなければならない最後の日になってからでした。というのも、再び自分たちが本来住む過酷な環境に戻っていかなければならないからです。
 そしてアリスはこう結びます・・・「このふた夏のボランティア活動が、将来何をして生きていきたいかという私の思いに深い影響をおよぼした、私はいまそう考えています」。