ksen2005-12-29

寒い日が続きますね。大学も冬休みに入り、私も「京都活動」はしばらくお休みです。もっとも何かと気ぜわしくすべて後手後手にまわって、いまだに東京の留守宅で年賀状を書いています。2006年の年賀状・東京版の図柄は「忠犬ハチ公(香川元太郎画)」で、書きながら、アリス・テッパー・マーリン夫妻のことを思い出しました。
渋谷駅前にある秋田犬ハチの銅像(写真)は、関西の方にはあまりなじみがないかもしれませんが、昔から、東京でもっとも著名な待ち合わせの場所の1つです。いまでは携帯電話の普及で待ち合わせ場所を特定する必要性はかってに比べて薄れたかもしれませんが、それでも、銅像のある広場には大勢の人々がさまざまな出会いを求めて集まっています。
10月末に私どもの招聘で来日したマーリン夫妻は過去に何度も日本に来たことがあり、とくに最初は日米協会の研究員として、一家で3ヶ月滞在したとのこと。従って、風習・言葉・地理と町・友人知人等々の知識やネットワークも豊富です。
今回の滞在中、そんな知識をいろいろ披露してくれましたが、中でも夫のドクター・ジョン・マーリンは、以前訪日中に誰かに聞いて興味をもったらしく、「忠犬ハチ公」について私にさかんに講釈をたれてくれました。「ハチの飼い主は、旧東京帝国大学のプロフェッサー(教授)だったんだよ、知ってるかい?」といった具合です。私は知りませんでした。
1920年代半ばの話、ハチはご主人の出勤や帰宅に合わせて、自宅から渋谷駅まで迎えや見送りに来ていました。そして主人が亡くなってもしばらくは渋谷駅前にきて、今日は帰ってくるのではないかと待っていたそうです。そのエピソードが美談として新聞に取り上げられて、銅像が建立され、ハチ自らも除幕式に参列し、当時の修身の教科書にも載りました。これは事実かどうか知りませんが、ジョンによればハチ公が渋谷駅に姿を見せたのは3年にも及ぶとのこと。私は、ジョンの雑学ぶりに感心しながら聞いていました。忠義に厚いと同時にたいへん賢い犬という評価でもあったそうです。
「しかし、そんなに長く駅で待っていたというのは、賢いより愚か(stupid)というべきべきではないだろうか?」とジョンが言い、「しかし、ロイヤルティ(忠誠・誠実)にはある種の愚かさが必要なんじゃないでしょうか。それにしてもいまの世の中、賢い人ばかりが増えましたね」と私が応じました。年賀状を書きながら、そんな2人の会話を懐かしく思い出しています。
ところで京都では待ち合わせ場所としてよく使われるのが、三条大橋に近い三条京阪駅前の「高山彦九郎」の銅像です。うちの学生が忘年会などを企画する案内状によく「某月某日〜時、「土下座像」に集合」と書いてあります。もちろん何故土下座しているのか?そもそも高山彦九郎とは何者か?知っている人は誰も居ませんが「土下座像」といえば、通じるようです。