ksen2006-01-13

私たちにはあまりに縁が無さ過ぎる世界ではありますが、特権階級あるいは超エリートの社会貢献・フィランソロピーに関して、ビル・アンド・ミランダ・ゲイツ夫妻とボノ(BONO、アイルランド出身の世界的ロックスター)に触れたいと思います。05年、タイム誌が彼ら3人を「Persons ofthe Year」に選んだことは、町田洋次さん(12月27日)およびcanarylondonさん(1月1日)のブログでも紹介されています。私はタイム誌(05年12月26日号)の記事を昨日やっと、たいへん興味深く読み終えたので遅ればせながら、この話をするつもりです。
「The Person of the Year(今年の時の人)」はタイム誌が1927年から始めたもので以来恒例になっています。初回がチャールズ・リンドバーグ。もちろん世界中が対象ですが、どうしてもアメリカ中心・アメリカの世界観によるもので時にナショナリズム高揚の狙いもあるやに感じられ、その点の注意は必要でしょう。アジアからは過去に、ガンジー蒋介石、Deng Xiaoping(2回)、残念ながら日本からはゼロ。「時の人」というのは良い意味でも悪い意味でもということで、従って、1938年はヒトラー、39年と42年はスターリンです。2000年からを振り返ると、00年:ブッシュ大統領、01年:ジュリアーニNY市長(当時)、02年:The Whistleblowers(内部告発者とくにエンロン事件の)、03年:アメリカの兵士たち・・・と続きます。
前置きが長くなりましたが、今回の3人には「The Good Samaritans(良きサマリア人たち)」という副題が付いています。慈善事業の革新者としての評価だろうと思います。ビル・アンド・ミランダ・ゲイツ財団について言えば、総資産290億ドル、日本円にして3兆円強という世界最大のcharity(慈善団体)で1年間の予算はWHO(世界保健機構)に匹敵するとのこと。
非常に興味深くかつ特徴的なのは、"They run the foundation like a business"とあるように、ビジネスライクな発想が根底にあること。例えば以下のようなミランダの発言は言い回しも含めて象徴的です・・・「新生児の命を救うことほどリターンの高い投資はありません」。
そのことを最も表しているのが、金融用語としてきわめて重要なleverage(てこ、借入資本利用の効果)への認識です。財団およびゲイツ夫妻のコミットメントは”solution(解決策)”ではなく”catalyst(触媒)”だということです。財団は自らをleverage(てこ)にして、より大きな効果を生み出そうとしているのです・・・とまあ、今回はこの辺で。