ksen2006-06-17



以下、佐野さんに伺った話しの要約です。


(現状)

・ 3年前の調査だが、全国のホームレスは約2万5千人。
95%が男性で、もと建築の現場など中高年の男性労働者が多い、平均年齢56歳。
これに対してアメリカやイギリスは30代前半が多い。
ビッグイシュー販売は「きつい」仕事であることを認識してもらっている。

  ①路上で売るということ=一種の「カミング・アウト」
  ② 仕事の肉体的なきつさ(立ち通しなど) 
  ③精神的な孤独感 
  ④客商売に慣れていない・・・
・ 一日1人25〜30部をうる。現在、総発行部数は平均35〜40千部。
・ 500人程度が販売人として登録しているが、1ヶ月以上続くのはうち4割。  現在は実働120人ほど。
・ 雑誌の購買層は、20代女性:26%、30代女性:13%、20代男性・40代女性・  50代女性:それぞれ11%・・・。
  読者層は20〜30代の若者を想定している。学生はあまり買ってくれない。
・ 販売場所は、大阪・東京・京都・神戸・千葉・神奈川・青森・宮城に続いてて、今年、広島と名古屋でも開始
  ――販売員をしてくれるホームレスがいることと(例えば名古屋が現在5人)手渡しなどの活動を手伝ってくれる市民団体の存在が必要。
・ 当初、多くの人から、「絶対、成功しない」と反対されながら2年10ヶ月、  何とか、この5月に創刊50号を出すことができた。
  「三重苦」といわれた常識(①フリーペーパーがあふれている中での有料販売   ②路上での販売の文化がない③ホームレスからは買わない)に挑戦してやってきた。
  市民の協力も大きい。
・このたび「ホームレスに年間7000千万円の収入を与えた」として、編集長が「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」(総合3位、日経ウーマン誌)に選ばれた。
・有給スタッフは、販売4人・編集3人+佐野さんで計8人。



(これから)

・ まだまだ、千万円単位の累損があり、経営的には苦しいが、試行錯誤を繰り返しながら、何とか持続させたい。
・ 45〜50千部売れるようになれば、ペイするので部数をのばしたい。
・ 広報に使うお金はないが、幸い、マスコミ等が報道してくれて認知度は拡がっている。
・ 夢は、雑誌の発行と平行して、ホームレスの職業訓練・就業支援のためのNPOを作ること。


(なぜ、NPOではなく、有限会社なのか?)
NPOは使命に生きる存在。ミッションを声高にさけび理解してもらうのがNPOのやるべきこと。
・ 対して、(有)ビッグイシュー日本は、雑誌を売るのが目的。事業性と機動性に賭けている。
・ かつビッグイシューは「ウィン・ウィン」の事業である。
・ またビジネスだと、うまく行かなくなったときに「ごめんなさい」と撤退することが比較的簡単。NPOはミッションを振りかざす以上、なかなか旗をおろしにくい。


(最後に)

・ 以上は佐野さんに伺ったことの一部です。
・ 私自身は、「社会起業家(ソーシャル・アントレプレナー)」に関する話しを授業その他でするときは、必ず、ビッグイシュー日本を事例として取りあげることにしています。
・    但し、こういうサイトがあることもたまたま目にとまったので載せておきます。
  ビッグイシュー日本の行動への批判です。
・ 世の中どこでも、いつでも、何か新しいことをやろうとすれば(とくに権力も名前もない市民の場合は余計に)こういう批判は避けて通れないのだろうという感じがしています。