ksen2006-06-28


我善坊さんコメント有り難うございます。
学生にもっと背伸びをさせろというアドバイス、その通りですね。これから心したい
と思います。
どの程度「背伸び」させるか、どの方向に(教養か専門知識か)「背伸び」させるか?
も悩むところです。

もちろん、教養と専門との境界線は難しいでしょうが、そうかといって今の学生に『プロ倫』や『日本の思想』(丸山真男)や『シジフォスの神話』(カミュ)を読ませてもついてこないでしょうし・・・


私の6月1日ブログでも紹介したように『教養主義の没落』(竹内洋)によると、教養主義は良くも悪くも70年代をピークに没落していったということですね。
つまり、全共闘世代・団塊の世代あたりから、こういう本を読まなくなった。
「世界」や「朝日ジャーナル」の代わりに「平凡パンチ」や「少年ジャンプ」という、カウンター・カルチャーの世代といっていいかもしれません。
ということは、いまの学生の親の世代も、いわゆる「教養」(エリート志向と言い換えてもいいかもしれません)への違和感をもち、この種の本を読まなくなった・・・とすれば、そういう親を見て育った若者にどういう方向感を与えてしかるべきか?
またアドバイスをお願いいたします。


ところで、断続的に紹介している、ゼミ生の「1冊の本」ですが、私もできれば13冊全てを読んで学生に批評しようと思いながら、まだ果たしていません。
最初に読んだ『夏の庭The Friends』(湯本香樹実)はなかなかよかったです。
新潮文庫で200ページちょっと。著者は東京音大出の女性。平成6年発行で、私が買ったのはすでに37刷、世界十数カ国で翻訳出版され、映画や舞台にもなった児童文学の名作だそうです。


小学6年の仲良し3人組が、ひとり暮らしの孤独な老人と交流し、その生と死を見詰めることを通して成長していく、イニシエーションを経ていくという単純な物語ですが、文章にみずみずしさとユーモアがあります。
・・・「もしかすると、歳をとるのは楽しいことなのかもしれない。歳をとればとるほど、思い出は増えるのだから。そしていつかその持ち主があとかたもなく消えてしまっても、思い出は空気の中を漂い、雨に溶け、土に染みこんで、生き続けるとしたら・・・・・いろんなところを漂いながら、また別のだれかの心に、ちょっとしのびこんでみるかもしれない(略)そう考えて、ぼくはなんだかうれしくなった」(P156)。
プロの物書きである弟に話したら、「この本を読む大学生は「通」だと思う」と言っていました。


全く知らなかったので、若者にいい本を教えてもらったととても喜んでいます。

シドニーの友人に世話になることがあったので、ささやかなお礼にアマゾン経由贈りました。「読みながら涙が止まらず自分でびっくりしました」というメールが届きました。