週末に、岩波新書から7月に出た『戦争で死ぬ、ということ』を読みました。


著者の島本慈子さんは、ノンフィクション・ライターで、『住宅喪失』(ちくま新書、05年)など著書豊富です。

島本さんは、まだお会いしたことはないのですが、息子さんが私の勤務する大学の学生で(臨床心理学科です)、そんな関係から本書も贈っていただきました。


雑誌「世界」に連載されたもので、「死を見ずに戦争を語るな、戦後生まれの感性で、いま語り直す戦争のエキス」といううたい文句です。
いまどき戦争の悲惨さ・残酷さについて第2次世界大戦にさかのぼって語る、戦後派の姿勢には動かされるものがありました。


以下お礼状から一部を転記します。

1. 小生とちょうど一回り下の卯年生まれと存じますが、戦争を直接知らない世代の方がこういうテーマに真剣に取り組んでおられることに感銘を受けました。
ぜひ、さらに次の世代に伝えていってほしいものだと思いました。


2. そういう小生自身、幼時に悲惨な体験をしており、かつ戦後の民主主義教育のいわば申し子であるにも拘わらず、しかも、昨今の右傾化の傾向に危惧を抱きつつも、こういう問題に真剣に向き合ってこなかったことに反省しております
(かって「朝日ジャーナル」とともに必読の雑誌だった「世界」も、最近はたまにしか頁をめくらなくなってしまいました)。


3. 小生の場合とくに戦争体験というのが、6歳のときに広島で家族とともに被爆して父親をなくしたという、つらい記憶が原点にあり、長い間、語ることも他人の文章を読むことにも抵抗がありました。
今回、貴著を読んで、60年も経ってようやくこういう記録を冷静に読むことができるようになったなあ(それでも広島の記述はやはり飛ばしてしまいましたが)と感じたところです。


4. 個人的には、さらにそのあと、学生時代に60年安保を体験したことも、その後のノンポリ人生に影響を与えているかもしれません。
何れにせよ、本書は、小生自身のそういった反省をこめてまことに興味深く読ませて頂きました。

5. 北野高校の先輩である手塚治虫の戦争体験から始まり、同時多発テロで亡くなった同じ高校の後輩の話で終わるという組み立てにも感心しました。
9.11、とくにワールドセンタービルの悲劇については、小生も、あの場所から歩いて数分のウォール街で8年ほど働いたことがありますので、大きな衝撃をうけた事件です。その後NYに出張でいくたびに訪れております。

6. あのとき亡くなった日本人の方々についても面識はありませんが、一人一人の悲劇としていまだに心に残っております。
今回、貴著でふれておられるので、この点も印象深く読ませて頂きました。こういう日本人がいたという記録を残しておくことも大事だと思いました。

以上つまらぬ雑感を書き連ねまして恐縮です。

本書は、友人・知人にもすすめたいと思いますし、小生が秋学期から担当する現代社会学科の2回生10数名にも読ませたいなと考えております。お忙しいとは存じますが、お時間がありましたら何れゼミにでもお越し頂ければ有り難いなと思っております。