柳居子さん、たいへん遅くなりましたが、6月27日付の第2のコメント有難うございます。


日本語についてですが、たしかに、万葉集の古代から変わっていないというご指摘、もっともですね。
実は、数週間前に、古くから京都に住む、まあ文化人の代表みたいな従妹夫妻と食事をしたのですが、その際の従妹の意見も同じで、日本語ぐらい長い間変化していない国語はない、これは誇るべき日本の文化であるという意見でした。

源氏物語」の話から発展して、議論になったのですが、たしかに言われてみると納得するところもあって、私の持論(英語はディケンズでも何とか読めるが、日本語は幸田露伴でも森鴎外でも読みにくい・・・)は少し修正の必要がありそうです。


話は変わりますが、「食事」をしたのは、祇園の巽橋のすぐ近くにあるフランス料理で、ちょっとお高いですが、おいしかったです。「たまには気張りましょう」という従妹の意見で、張り込みました。

写真は、そのときに賞味した、アントレです。

また別件ですが、7月が明日で終わります。
今月は京都文化博物館で古い日本映画を4本も見ました。

7月の映画は「映画にみる京女」がテーマ。「京の伝統、しきたり、家族などの問題に悩み、それを契機に成長していく女を描いた作品」を特集しました。

 毎年恒例の『祇園祭』をはじめ、川端康成原作の『古都』など8本。

中で、吉村公三郎監督の作品が3本を占めます。

祇園の芸妓母子を描く『偽れる盛装』(1951年)、西陣の織元の没落と一家離散の物語『西陣の姉妹』(52年)、京銘菓の老舗を守る一人娘を岡田茉莉子が演じる『女の坂』(60年)。京都を取り上げた吉村作品は他に、堀川の染屋を舞台にした、山本富士子主演『夜の河』がよく知られています。

大津市生まれだが幼少のころ京都に住んだことがあり、この地には思い出と思い入れがあるのでしょう。古い京の町並みや市電、鴨川べりの風情などの映像は、幼い時期、下鴨にあった母の実家に疎開した私にとっても懐かしいです。


何れも女性を描くのがうまい、都会風の味わいとつやのある作品です。深刻なテーマを扱っていても、適度な甘さと品の良さがあって、それが吉村映画の限界という人もいるかもしれないが、私の好みではああります。


『偽れる盛装』と『西陣の姉妹』の2作品を二週続けて観ましたが、何れも「ご恩返し」という古い日本語が出てきて心に沁みました。

2作とも、かって祇園の名妓だったもとお妾さんが使う言葉。前者では、お世話になった商家の主人が亡くなり、落ちぶれた長男の苦境を救おうとするときに娘(京マチ子が熱演する。商家の旦那は彼女の父親でもある)に言ってきかせる。後者では、莫大な借金を残して自殺した西陣の織元に囲われた女性(田中絹代)が、昔買ってもらった家を売って得たお金を持って、少しでもお役に立てばと遺族を訪れるとき口にします。


これらの映画は、全て新藤兼人が脚本を書いており、名コンビと言ってよいでしょう。ちなみに新藤は、90歳を超えてまだ健在。

吉村公三郎に、1978年に刊行された『京の路地裏』というエッセイ集があって、氏があとがきを書いています。吉村は「監督は職人や、ゲイジュツカいうようなものやあらへん」という師匠島津保次郎の言葉が好きで、「彼もまた職人であることを誇りとし、『わいは職人や』が口癖となった」。

この『京の路地裏』は、京都の女性のいやらしさや意地悪さも、丁寧に紹介して実に面白いですが、長くなりすぎましたので、紹介は省略。