17歳『列車の音色』という作品

ksen2009-11-21

紅葉の季節ですね。

20日、東京から旧友が現れ、法然院に案内しました。
自分の写真で恐縮ですが、彼が撮ってくれたのと背景がきれいなので・・・


今回は私事で恥ずかしながら、15日に宇治市でちょっとしたイベントがありました。


藤野さん田中(美)さん、ブログまことに有難うございます。


桐野夏生さんというプロの作家の「女神記」という作品が文学賞を受賞。


まだ読んだことがありませんが、すでに谷崎潤一郎文学賞泉鏡花文学賞など総なめ。
「少し貰いすぎではないか」という意見もあったが「良いものは良い」という結論で
受賞が決まったという審査委員の説明がありました。


立派なものです。

年齢は(前に書いたが、日本の新聞はなぜか必ず年齢を入れるので)
私よりちょうど一回り下の「うさぎ」です。


他方で17歳の女子高校生の作品、『列車の音色』という作品が市民文化賞。
86枚の小説ですが、これ、とても面白く読みました。

この若さでこれだけのものが書けるというのは、やはり才能でしょうか。これから楽しみです。


ストーリーというほどのものは無い不思議な作品ですが・・・・

―――死んで死後の世界にやってきた「レイ」(この名前、「霊」から取ったのではないかと
思いますが・・・)は、少女の体を借りる。

死後の世界には、動物も植物もいない、人間と建物だけの世界(読んでいて、
デ・キリコ」の絵を思い起こす)で、統治者も役人もいる。


退屈で孤独な「死後の世界」・・・そこで「エネルギーを貯め」た人間は、また現世に戻ることができる。

「何かをしたい、という強い欲求は、次の世界に生まれ出るもっとも大切なエネルギーでもあるから」―――


上に引用した「・・・」の文章を読んで、

何かをしたいというエネルギーで、人は生きるんだ・・・という、17歳の、
認識・覚悟に大げさに言えば、感動しました。

そんなテーマを扱いながら、本人は意識していないかもしれないが、文章に時折ユーモアがあって、
これが実にいい。



例えば、「レイ」が役人以外にたった一人知り合った少女(まだ完全に死んでいないのに死後の世界
に来てしまった・・)に語る場面—

「ここには、植物はないんだね。他の動物も居ない」
ああ、とレイは言った。
「人間以外の動植物は別の世界へ行くの。人間は何かと厄介だから、別にしてあるんだ、って、
役人から聞いたことがある」――


ここを読んで、にやっとする読者は私一人ではないでしょう。

全く、人間は厄介な存在で、それを17歳でさらりと言うところに、驚きます。
他にも
幾つかたくまざるユーモアの箇所があるのですが、省略します。


東宇治高校の3年生。どこの大学に行くのでしょう。推薦ではなく一般入試を受けるのでいま勉強中、
文学を学びたいがいろいろ違う世界の文学を知りたい、と言っていました。
物静かで、落ち着いた高校生でした。