信州にこなしの花咲く

週末思い立って、茅野に1泊しました。高速1000円で走れるのは
有難いです。


日曜日に帰りますが、本日は寒くて雨で静かです。
昨日の土曜日は好天で、原村にある小さな音楽会に行きました。

N響の首席チェロ奏者の藤村さんの演奏会で、最大60人が座れるという
ホールは満員の盛況でした。
もとフジテレビのアナウンサーだったという方が1人で常住しているお宅での、
いわばホームコンサート。今年が10周年だそうで、妻は何回も来ていますが、
私は初めてです。

1時間半ほど、途中でお話しも入れて。とくに舞台が設えられているわけでもなく、ごく気楽な雰囲気でした。

古い、すこし傷のあるようなチェロの音色はさすがで、これが1700年製造、
310歳になる逸品だそうです。

この日、バッハの「無伴奏組曲の6番」を「6曲の中でもいちばんの難曲です」と
いう
前置きのあと弾かれましたが、1685年生まれのバッハが活躍したときには既に
製造されていたわけです。

いったい幾らぐらいしたのか、いままで誰が弾いたのかという歴史を
たどれるのか?障害保険は掛けられるのか?など興味を持ちました。
演奏のあと、紅茶とクッキーを頂き、
藤村さんに質問する機会もあったのですが、あまり音楽とは関係ない、
下世話な話で遠慮しました。

数日前に、隠居した昔の職場の仲間の集まりで聞いた話も思いだしました。


退職後の暮らしを語る近況報告の中に、フルートの演奏をしている某君
がいて、こんな内容でした。

・ 日本人は楽器の中で笛が好き。とくにフルート人口が最大で、
プロと言えるのは300人ほどだが、裾野が広い。フルートでプロになるのが、
いちばん狭き門。


・ フルートには中国製の1万円ほどから、プラチナの7百数十万するもの
まで、ピンからキリまである。彼がもっているのは、銀製・金めっきで
正価3百数十万円を百万円ほど安くしてもらった。
車を買う代わりにフルート。


・ 素人の演奏の集まりは、フルートだけの集まりを含めて、数多くあり、
自分も4つほど入っていたが、最近すべてやめてしまった。人間関係がなかなか
難しい。日本人特有かどうか分からないが、アマチュア演奏家の中には、
実に細かいことにうるさい・こだわる人がいて、疲れる。いま、新しい
人間関係をリセットすべく、考え直しており、ひとりで吹いている。

そんな報告でした。


そんな話を思い出したので、これも下世話な疑問ですが、藤村さんに、
「すぐれた音楽家とすぐれた人間性とは無関係だろうか?
そもそも両立するものだろうか?」と訊いてみたかったのですが、
これも下世話な話題なので遠慮しました。


別に、音楽家でなくとも政治家でも小説家でも経営者でもいいのですが、
とくに音楽家の場合、美しい音楽をつくり・演奏する人間と美しい人間性
とは必ずしも一致しないことがある・・・そこが面白いなとかねて考えて
います。


それにしても、音楽を人に伝えるのには、何ともお金がかかるのでしょうね。
パトロンを含めて応援する文化が大事ですね。

昔、あるチェリストから、飛行機で移動する場合は、チェロ用に2人分の
航空券を購入すると聞いて、たいへんだなあと思ったことがあります。

藤村さんは、お話とそのあとの質疑応答の対応を拝見しても、なかなか
人柄の良さそうな方だなあ、こういう人は応援したいなという印象を
受けました。

金曜日にN響の演奏会を終えて、翌日、ピアノ伴奏の奥様と2人で、
こんな小さな音楽会のために信州まで駆けつけるのですから、
たいへんです。

ホールの前庭には「こなし」の花が咲いていました。

こなしは、いつも蓼科で会う友人のおすすめの花で6月に一斉に咲く姿が
桜より美しいというのが氏の評価です。


白い色の花で、桜と違って花と葉が一緒で、色は違いますが、昔、
オーストラリアでやはり春に咲くジャカランダを思い出します。

私は、初めてだったので、「あれは、こなしですか?」と主催者に伺った
ところ、「こなしとも、“ずみ”だとも、“こりんご”だとも言う人がいる。
この3つがそれぞれ違う植物だとも同じとも言う人がいる。
詳しくは知らないが、あれは「こなし」と思う」というお答えでした。