ソーシャル・アントレプレナー(社会起業家)とソーシャルビジネス

今回は、12月17日(金)18日(土)に六本木ヒルズで開催された
「ソーシャルビジネス・ネットワーク(以下「ネットワーク」)
設立記念ソーシャル・アントレプレナー・ギャザリング
(以下「ギャザリング」)の報告をいたします。


1. 実は当初は敬遠のつもりだったのですが、新しいネットワークの常務理事
に就任した株式会社カスタネット植木さんのご招待という形で入れてもらいました。
 
  18日の一日だけでしたが、なかなか面白かったです。
なお植木さんが自分のブログで報告しています。
http://ueki.biz/2010-12-21.html

2. 朝一番は、植木さんと/株式会社いろどり社長の横石さんとの対談。

いろどりは、徳島県上勝町のお婆さんが元気で働き、PCも使いこなして注文を
取って出荷している「葉っぱビジネス」として有名です。

2人のコメントに共通しているのは、
(1) 理念や夢だけではメシは食えない。社会性から入るのはどうか?
いちばん難しいのは稼ぐこと。
(2) まず、足元と自分の周りを固めて、キャパシティに応じて実行すること
(3) いろどりであれば、年寄りと「居場所」と「出番づくり」の追求(これが
“理念”)を目指して、自分が楽しく・面白くなることをやってもらう。
小さなビジネスだが12期連続黒字である。

3. もう1つは、
/社会福祉法人太陽の家中村太郎理事長
株式会社スワン海津歩社長
NPO法人ぱれっと理事長の谷口奈保子理事長
以上3人のパネルディスカッション。

この3つは、何れも、障害者の雇用や社会復帰を目指して活動している
組織としてよく知られています。

(1) 太陽の家は、京都にあるオムロンと合弁のオムロン京都太陽株式会社
など幾つかの大企業と連携しています。
オムロン京都太陽は私も何度も工場見学に行ったことがあり、古いブログにも
紹介しました。http://d.hatena.ne.jp/ksen/20051031



(2) スワンは言わずとしれた、クロネコヤマト流通革命を引きおこした
ヤマト運輸の故小倉昌男さんがスタートしたプロジェクトです。


(3) そして、ぱれっとは27年前、普通の主婦だった谷口さんが、「きれいごと
になるが、正義感から始めた」障害者の雇用やつながりの場所をつくる活動です。


どんな言説が印象に残ったか、詳しくは書けませんが、

・スワンはフランチャイズで希望する人に障害者を雇用したカフェやベーカリー
を経営してもらうが、理念だけでは経営できない。
・しかし同時に、理念は大事。理念や夢を共有できない人には任せられない。
何のためにやるか?きちんとした夢を持っているか?をみきわめるように
している。

・毎日、やってられないことばかり。毎日くじけている。
しかし、小倉イズムを信じ、小倉さんの想いを立証したいという気持ちで
やっている。

ぱれっとであれば、実は障害者を育てている親ごさんとの「闘い」が
いちばんしんどいし、辛い。

・きれいごとになるが、正義感と使命感が無くてはだめ。
同時に、続けるには、
「わくわく」「アイディア」「面白い」といったファクターを大事にする。

・・・・・等々
何れも、いい話でした。

4. あとは「社会を変えるプレゼンテーション」というセッションがあり、
「スケールアウトによってソーシャルビジネス市場を拡大していこう!
ソーシャル・イノベーションの担い手たちがプロジェクトの提案を
行います!」という呼びかけで、

多くの(主として)若者が、それぞれ10分間のプレゼンを行うのを聞きました。
・例えば、NGO/NPO支援のための募金サイトを立ち上げた、ユナイテッドピープル
株式会社の関根さん
http://www.unitedpeople.jp

・出版を「応援ビジネス」と位置付けて意味ある書物の出版を意図する
http://www.eijipress.co.jp/:TITLE=英治出版の原田さん
・農業を元気にしたい、「かっこよく・感動があって・稼げる」3K産業に
したいというhttp://ameblo.jp/kosegarenet/:TITLE=NPO農家のこせがれネットワークの宮治さん


・・・・・等々

いちど、KSENの「元気人リレートーク」でも喋ってもらった
http://d.hatena.ne.jp/ksen/20100529

有限会社キュアリンクの谷口知子さんも登壇しました。


これも大事な機会だと思いました。


5. 最後に、本題とはそれますが、

何せ、この業界、プログラムをみても

「ソーシャル・アントレプレナー
「ソーシャル・イノベーション
「ソーシャルビジネス」
「ネットワーク」
「ギャザリング」
あと「セッション」「プレゼンテーション」「ミッション」「パネルディスカッション」
・・・・等々、とにかく、カタカナが殆ど。


これ、なかなか難しい問題ですね。


例えば、
「ソーシャル・アントレプレナー」ひとつを取っても、
社会起業家」「社会企業家」「社会的企業家」の3つの
訳語が使われて今だに定着しない。

カタカナはいやだという人も多いのですが、

他方で、言葉は文化や社会や文明と深く結びついているため訳語にしたら
そこがあいまいになってしまうというリスク
(これもカタカナ)がある。

例えば、福沢諭吉が、明治に英語からの訳語として
「自由」という日本語を使用した。


もちろん、その点は高く評価するが、
英語は「liberty」と「freedom」の2つを使い分けるということまでは
行けない。


結局、コミュニケーションも、マーケティングも、イノベーション
リスクも・・・それ自体が、もともとの日本人にはない概念である場合、
訳語を作っても定着しない。

アントレプレナー」を「企業家」「起業家」と訳しても
概念が伝わらない、
それなら、コミュニケ―ションと同じくカタカナのままにしておく
・・・・としたからと言って
アントレプレナーシップ」という、良くも悪くもアメリカ的な
思考と行動が日本のビジネス(これもカタカナを使ってしまい
ますが)社会に定着するという保証はない・

難しいものです。