東北関東大震災とオバマ大統領


1. 米国オバマ大統領は、16日菅首相と電話で話し、翌日日本国駐米大使館を訪問したと伝えられています。
同17日{現地}ホワイトハウスから大統領のスピーチが発表されました。
私は、NYタイムズの電子版で読みましたので、一部を拙速(読みなおしている時間がないので間違いも意訳もあると思う)で以下に邦訳します。


2. 本日、渋谷まで往復歩きましたが、東急本店は店内を暗くし時間を短縮して営業。7階の本屋のコーナーも暗いけど、ここで珈琲を飲みながら、テキストを読みました。
最後に、ごく短い感想を書きます。

3. 以下、オバマ大統領スピーチ

「こんにちは、皆さん
ここ数日にわたってアメリカ国民は、日本で起きていることに深く心を痛め、心配もしているはずである。


この度の地震津波が、世界でももっとも親しい友人かつ同盟国の1つを襲い、想像もつかない、本当に想定もしなかった数の命を奪い・破壊し尽くした。そしてこの災害は、本来平和的なエネルギーを国民に送るべき原子炉の被害を通してさらなる破局を引き起こしている。


本日、私は、日本で何が起きているかについて私が知る限りのことを、またアメリカ国民を守るために我々が何をしているか、我々自身の原子炉の安全性はどうか、そして災害に遭い、立ち直ろうとしている日本の国民をどのように支援しているかについて、現状を伝えようと思う。

(省略)


最後に、この途方もないチャレンジに直面しているこの時、我々もまた同盟国日本を支援するために全力をあげている。

捜索・救助隊が日本に派遣されている。被災者の支援と対応にあたるチームも現地で働いている。何十年にわたって、日本の安全保障を担ってきた米軍は、いま昼夜をわかたず奮闘している。

現在まで、救助・支援のため、何百ものミッションを派遣し、膨大な水や食料をあちこちに提供している。専門家も派遣し、原子炉の被害を最小限にするための努力を助けている。我々は彼らと専門知識や技術を共有し、現地で対応している勇敢な彼らがアメリカをあげてのチームワークとサポートを得られるように図っている。

そして、アメリカ国民もまた、心を開いている。多くの市民が支援を提供している。アメリ赤十字は、避難を余儀なくされている人たちの緊急の必要に応じるべく、援助の手をのべている。そして私からは、手を差し伸べたいと思っている人たちに、一人一人が何ができるか、どうか「USエイド」に行ってほしいとお願いする。

昨夜、菅首相にお伝えし、本日日本大使館に再度申し上げたように、この深い試練と悲しみにあって、日本国民は決して独りではない。いま自分たちで全力で立ち直ろうとしているとき、私たちも太平洋を越えてアメリカから支援の手を差し伸べる。

言うまでもなく、私たちは、半世紀以上にわたって、絆を強め、同じ利益と民主主義の価値を守るために結びついてきた同盟国なのだ。私たちは、家族や文化や通商の価値観を共有しているのだ。アメリカの軍は、日本の領土を守るために尽くし、アメリカ市民は、日本の都市や街に良き機会と友情とを育んできた。


何をおいても、私は、日本人の力強さと精神力とで、日本が必ずや復興し再建するであろうことを確信している。
災害のあと今も、人々は自分の家を提供しあっている。乏しい水や食料をわかちあっている。避難所をたちあげ、無料の医療品を提供し、いまもっとも被害をうけた同胞を探し求めている。ある日本人は、言葉少なく「それが日本人なんです。私たちは助け合うんです」と語っている。


この国難にあっても、未来への希望があることを忘れないようにしよう。津波でほぼ消え失せてしまった小さな町で、救助の人たちは、生後4カ月の赤ちゃんを助け出した。彼女は津波にのみ込まれた親の腕からはなれ、何日も瓦礫になかで生存していた。水と瓦礫の中で彼女がどうして生き延びることが出来たのか、誰にも分からない。

人間には不思議な力が備わっているのだ。


他方で、経済が回復しつつあり、グローバルな繁栄がみとめられるさなかにあって、このような災害は、人間のもつヒューマンな尊さをあらたに認識させてくれた。福島原発での命を賭けて作業している人たち。70カ国にもおよぶ世界からの援助。そして、瓦礫の中から奇跡的に助かった赤ちゃんの泣き声。


これからも私たちは、アメリカ国民の安全とエネルギー源の確保のために全力を尽くす所存である。
と同時に、私たちは、これからも、危機をのりこえ、苦難を克服し、そしてあの偉大な国家を再建するであろう日本の皆さんとともに、立ち続ける決意である。


皆さん、どうも有難う。」


4. 今回はこれを読んでいただくだけが趣旨なので、以下補足です。


(1) これ、誰かが、どこかで(とくに大新聞)訳して載せているのだろうか。
私はまだ知らない。
こんな年寄りの庶民が何をやっているのか、アホかと思われるかもしれない。
本来ならメディアのエリート諸君にやってもらいたい。

(2) と同時に、日本政府はこのメッセージにどう応えたのか?
お礼と感謝を当然に伝えたと思うが(もちろん、アメリカだけでなく同様な全ての国に対して)、メディアはなぜそれも報道しないのか。
怠慢ではないのか。

(3) 誤解してはならないのは、これは大統領のアメリカ国民向けのスピーチだということだ。
私はテキストを読みあげるのに8分かかった。長い文章である。
邦訳は冒頭と「最後の」という日本向けのメッセージから終わりまでである。


(4) 従ってアメリカ人向けに語りかけたもっとも重要な2点が抜けている。
1つは、アメリカ国民を守るためにとった措置について(原発から50マイル以内の在日アメリカ人の退去命令を含めて)。
第2は、放射能の危険がアメリカの国土には決して及ばない、安全であることを伝えること。
そして、今後もアメリカ国民に、知りうるあらゆる情報を伝える約束。
「私が大統領として知りうる限りのことを皆さんも知る必要があると私は信じている」


(5) その上で、「最後に〜」として日本・日本人へのメッセージを発している。
それも読みようによっては、アメリカのPRではないかと思う向きもあろう。しかし、それは(4)もそうだが、アメリカの大統領として自国民を守り、かついま日本で救助にあたっている自国民を激励するという当然の責任であり義務でもあるのだ。
これこそ1国の指導者のリーダーシップではないのか。


(6) それでも、それでもなお、
繰り返すが、いま日本のために場合によっては命を賭けて闘っているアメリカ人は居るし、

何よりも、このオバマの言葉は、我々日本人の心を打つではないか!


なお訳にあたって以下のサイトを参照した。

http://www.nytimes.com/2011/03/17/us/politics/18obama-japan-text.html?_r=2&scp=1&sq=Obamas%20speech%20on%20Japan&st=cse