世田谷市民大学と福沢諭吉

しばらく、ブログの更新をさぼっております。
7月初めて、9日ぶりです。


猛暑と節電との調整にいささか身体がへたばっているのも理由の1つですが、このところ、結構、雑用が舞い込んで時間を食われてもおります。


雑用と言っても、余計なことに自分から首を突っ込んでいる面も多いですが・・・。


その1つに、「世田谷市民大学」というのに、4月から新入生として、週1回、通い始めて、おまけに「大学」にはゼミもあって、たまたま先週と今週の2回、私が発表の担当に当たって準備に忙しかったということもあります。


そこで、今回はちょっと、「世田谷市民大学」の話をします。
友人の某さんから「教えるより、教わる方が楽しいでしょう?」と言われましたが、たしかにその通りですね。



1.「世田谷市民大学」とは?「区民だれもが参加できる学習の場です。“政治・社会・人間・経済”に関連した幅広いテーマや地域社会に密着した問題を取り上げ、市民自治の担い手に必要な現代社会の諸問題に対する確かなものの見方を培うよう、講師陣が時間をかけて丁寧に系統的な講義を行います」と案内にある。
区役所に近接した納税事務所の2階に、大教室1つとゼミ室2つ、小さいながら図書室もあり、事務局のスタッフは4人。


2.メインは、政治・社会・人間・経済の「昼間講義」正規4コース(2年間で修了)で、1つのコースは週に1日で、午前中に講義が2つ、午後にゼミが2時間。これが、春学期は4月〜7月の12回、秋も同じく12回。


3.以上がいわば正規の授業だが、この他に、「公開講座」「少人数特別講座」「夜間講座」「サマーフォーラム」も設置されている。

受講者はこのうち、幾つ取っても構わない。
正規コースの受講料は学期ごとに1コースで2万円。


4.そうは言っても、そんなに時間を割けないので、私の場合は「人間コース」を選択。

この、春学期の授業内容は、以下の通り。
・午前中の講義が
福澤諭吉門下生の近代」(坂井達朗慶応義塾大学名誉教授)
「ロシア史の基本問題」(塩川東大教授他、オムニバス)


・午後のゼミが
福澤諭吉を読む〜福澤の近代を考える」(米山光儀慶応義塾大学教授、慶応福澤研究センター所長)
・因みに、米山さんは「世田谷市民大学」の学長である。


5.どのコースを選ぶか?
決め手になったのは「ゼミ」で「人間―福澤」にするか?
それとも「政治」の「思想史から見た“戦後政治学”」(苅部直東大教授)にするか?
迷ったあげく、実はあまり知らない福澤の著作を読んでみたいという気持ちが勝ちました。


6.世田谷に長年住んでいても、知らなかったのですが、すでに30年続いているプログラムで、昨年の30周年には記念のシンポジウムが開催されたり、冊子が出たり(上の写真)、しかもその企画準備は受講生の中からボランティアが関わったとのこと。


7.こういうプログラムは、東京でも世田谷区だけではないかと聞きましたが、感心したのは、以下の点です。


(1)受講者が多く(講義は100人を超す)、熱心である(もちろん高齢者・退職者が多いが、女性の場合は中年の人もいる)。10年以上続けて通っている人もいる。


(2)講師陣が充実している。運営委員会に一流の教授陣が入ってカリキュラムを作っていることもあって、良くも悪くもアカデミックな内容であり(カルチャー・センター的な内容では全くない)、それにふさわしい講師が参加する。かつ、講師を長年続けるケースが多いので、勝手がわかっている。



(3)30周年の時にも述べたように、受講生のボランティアによる、さまざまな企画段階での参加も期待されている。


(4)講義だけでなく「ゼミ」があり、講師と受講生、受講生同士の交流が図られる。


(5)区の経済的な支援があるとみえて、受講料が安い。この点は、区の「事業仕分け」の検討対象になっているという噂だが、ゼミで知り合った受講生の誰もが、継続を強く望んでいる。


7.「ゼミ」について触れると、福澤諭吉を読むということで、『福翁自伝』に始まり、『学問のすすめ』で春学期を終わり、9月からは『文明論之概略』を中心に読む予定。


17名のゼミ生ですが、
初回の自己紹介で私は以下のように挨拶しました。

「実は、先生には申し訳ないが、福澤諭吉はあまり好きではない。
京都で長く仕事をしてきて同志社大学とも多少縁があったが、創立者新島襄は個人的に尊敬しており、その対比で福澤は全く違うタイプの教育者ではないかと感じている。


最大の理由は、
一万円札(福澤)より千円札(いまは野口英世に変わったが、2007年までは夏目漱石)の方が日々よほど馴染みがあって、好きだということがある。


但し、正直言って「食わず嫌い」でもある、つまり福澤を真面目に勉強していない、それがこのゼミを選んだ理由であり、この機会に勉強したいと考えている・・・」


8.さて、福澤を読み始めてみて、まだ彼を好きになった、とまでは言えないにしても、意外に面白いし、人物・生涯ともに興味を惹かれるなという心境になっています。


ということで、
生前から「ほらを福澤、うそを諭吉」とも言われ、
人によっては神様みたいに尊敬する・あの丸山真男・もと東大教授(日本政治思想史)が、「幕末から明治初期にかけての最大の啓蒙思想家」とたいへん高く評価する人物について、ちょっと追いかけているところです。