1. 今年は台風の到来が多いような気がしますね。
災害日本への影響がまたまた心配です。
昨日まで、10日ほどは好天でした。写真は、7日、清里の清泉寮までドライブしたときのですが、富士山がよく見えて、まさに唄の文句「頭を雲の上に出し〜〜」の通りでした。
2. さわやかNさん、有難うございます。
「サブカルチャーを・・ブランドとして輸出して他国民のハートをつかんでいる」
「WBCは、民間でやっている米国への思いやり予算・・・」
その通りですね。
まさにジョセフ・ナイの言う、衰えたりとは言え、「ソフトパワー」の威力でしょう。
3. ということで、7年も昔の出来事ながら、いまだに授業で使っている、
イチロー選手のDVD解説の続きです。
私が、学生に補足説明するのは以下のようなことです。
4. まず、前回、新聞報道を紹介したように、「観客45,572人という超満員の球場で記録を達成した」ということ。
つまり、この観客のほとんどが、イチローを見に来ていたということ(日本からも含めて)。
10月1日はすでにリーグ戦終了間際であり、シアトル・マリナーズと対するテキサス・レンジャーズは最下位とブービーのチームであり、このゲームはいわゆる「消化試合」。
本来なら観客は数千人ほどではないか。
彼の集客力が、弱小チームに多大の収入をもたらした筈で、これがプロ野球のビジネスたる所以です。
5. そう言えば、詳細は忘れましたが、例の「白熱教室」で有名なハーバード大学の名物教授のサンデルさんが東大での出張講義で
「オバマ大統領の給与は年に数千万円、対してイチロー選手の年俸は10数億円。これだけの差は当然と思うか?否か?」という問いを発して、授業を進めていたのを思い出しました。
6. もう1つは、前回の学生の質問
「イチローは自分の成績は立派だが、チームは弱小。ジコチューではないか?WBCのときのようにリーダーシップを発揮してチームに貢献すべきではないか?
についてです。
この点は、私は「正直言って、分からない。君たちはどう思うか?」と問い返します。
そして以下のように付け加えます。
「あくまで私個人の推測だが、彼はとても頭の良い人だから、自分の役割を分かっているのではないか」
つまり、アメリカ大リーグには今や、アフリカン・アメリカンもヒスパニックもアジア系もプレイヤーとして活躍している。
しかし(詳しくは調べていないが)、監督やコーチといった立場にはまだ少ないのではないか。
チームのリーダーになるのは自分の役割ではないし反発もあるだろう、とイチローは感じているのではないか。
もっと言えば、だからこそ、日本が優勝した昨年のWBCでは、余計にリーダーシップを発揮しようとしたのではないか?
7. ところで、本日のメインは、これも前回ふれたシスラー選手とその遺族についてです。
この点は私が指摘するまで学生の誰もが気付かなかったことで、
(1) シスラーのお嬢さんフランシス(いまはお婆さん)と4人のお孫さんが最前列で試合を見ている。
(2) 当然に、球団(あるい球場)が招待したはず。
(3) イチローの記録達成に、5人は立ちあがって拍手で祝福する。
(4) そして、・・・・・ここが大事ですが、
1塁ベースにいたイチローは、家族のところに走っていってフランシスと握手をして言葉を交わします。
(内容は分かりませんが、おそらく「来て頂いて有難う(Thank you very much for coming)と言ったでしょう」
以上です。
8. 学生は「たしかに、その通り」とびっくりし、「日本ではこういう光景は見たことがない」と一様に言います。
「これが“マーケティング”なんだ」と答えることにしています。
9. 遺族を招いて、シスラー選手(自分の親・祖父)の記録が破られるのを見てもらう。それは、ジョージ・シスラーに対する最大の敬意の表明、とアメリカ人は考えます。
そして、イチローは、祝福する遺族に応えて、挨拶に行き、握手をする。
つまり、彼もまた、シスラーに敬意を表する。
アメリカ人は、このような「エールの交歓」を好みます。イチローの反応はたいへん嬉しかったと思います。
だから、この模様をTVも丁寧に写し、翌日の新聞も丁寧に報道します。
10.最後に1つだけ、細かいことを言えば、このときイチローはグローブのままフランシスの手を握っていたが、出来れば、脱いでほしかった。
それ以外は、このときのイチローの行動は完ぺきでした。
アメリカ人の心理を実によく理解しているな、と感心しましたし、
主催者としての「マ―ケティング」作戦も、このため、大成功を収めたと思います。