英国エコノミスト誌と「元気な社会起業家」

(まえおき)
1. 今年は世田谷区羽根木公園の梅も遅いようです。
20日に歩きましたが、まだまだでした。「梅まつり」は26日に終わるというのに少し気温も上がり、満開になって元気が出るとよいですが。

元気と言えば、今回は、古い記事ではありますが、英エコノミスト誌の伝える「元気な社会起業家(The rise of the social entrepreneur)」についてです。
その前に「まえおき」が長いですが。

2.このブログでは海外の情報を紹介することも「活動」の1つに入れています。
個人的な趣味で、かつ公開されている記事の「要約」ですから著作権の問題はなかろうという判断です。
といっても、怠け者ですからNYタイムズやTIME、NEWWEEK誌などに限られます。
内容は、私個人の関心に沿って、アメリカの社会・文化・ビジネスなどが中心になります。
場合によって日本に関する報道も入り、東日本大震災のときはNYタイムズの記事などを何度か紹介しました。


情報源として英エコノミストも時々、覗いており、2010年11月の同誌の日本特集(「日本の重荷」)は以下のブログに書きました。
http://d.hatena.ne.jp/ksen/20110106

因みに同誌は、国際政治や経済に関する記事が中心の週刊誌で、ウキペディアによると


「2009年の発行部数は160万部。社会的地位の高い層をターゲットにしており、官僚や大企業で経営に携わる人なども含まれる。鋭い分析からなる記事が与える影響が大きく、世界でもっとも重要な政治経済紙の一つと見なされている」
とのこと。
3・いちおう私の研究分野にしている「社会企業」「社会起業家」についても紹介したいと思っていますが手が回らず、そのうちKSENの若い仲間がやってくれそうな気配で期待しています。


このエコノミスト誌が、私が知る限り、過去に以下の2回、「社会起業家」に関する記事を載せています。

(1)2006年2月23日号に載った「社会起業家立ち上がる((The rise of the social entrepreneur)」という記事が同誌が社会起業家について初めて取り上げたと思う。

(2)次いで、2010年8月12日号の「ソーシャル・イノベーション、彼らの声に耳を傾けよう(Social innovation, Let’s hear those ideas )」です。

古い記事ではありますが、こういう硬派の・レベルの高い雑誌が取り上げているので、
今回、(1)を簡単に紹介します。

エコノミスト誌から「立ち上がる社会起業家」の要約)
http://www.economist.com/node/5517666

1. 超富裕層・富裕層だけを相手にする、あるスイスの銀行(プライベート・バンク)が社会起業家を支援する非営利組織{NPO}であるアショカとの協働プログラムを始めた。
アショカが支援する社会起業家にこれらの富裕層が資金的な援助をするというもの。

2. 社会起業家の存在や活動が徐々に注目されている。
背景には、NPOの経営の効率性を高める必要性が増していることがあり。

NPOが抱える課題として
・優秀な人材の確保
・資金調達の多様化
マーケティングの強化
等があるが、これらの点で、事業家・投資家タイプの社会活動家の必要が叫ばれている。


3. 彼らの発想を入れて、大事なのは
(1) 社会セクター・NPOセクターはもっと、自分たちが活動しやすいインフラや仕組みの整備に努力すべき。
(2) 資本やノウハウの持ち主とNPOセクターとを仲介する存在が必要
(3) 冒頭紹介したスイスの事例のように、NPOセクターと営利企業との協働をもっと増やす必要がある。

この点を補足すれば、
(1)であれば、
NPOの数が多すぎるのが問題。
例えばホームレスを支援する組織は、ロンドンにおよそ40あるが、活動がうまく行っているのはうち8つぐらいと言う意見がある。
NPOにはM&Aの市場がない・・・・


(2)(3)であれば、冒頭紹介したスイスの銀行とアショカのような事例がこれから増えるであろう。
営利企業NPOの協働の事例―ハイブリッドによる価値創造―も具体化している。
例えば、メキシコでスラム対策に取り組むコミュニティグル―プとあるセメント製造の大企業とのコラボのように、
スラムに住む貧しい人たちの信頼を得ている活動家と組むことで企業も多少の利益を得て新しいビジネスに参入出来ている。


(感想)

1. 6年前の記事だから、例えば、アショカの活動や社会起業家とは?といった説明など、今では珍しくないような内容も多い。

2.ただし、この時点で「エコノミスト誌」が取り上げて紹介したという意味は大きい。
つまり代表的なエスタブリッシュメント側(ということは保守的)のメディアがこういう社会を変える存在に注目したということ。

3.内容も陳腐になっておらず、挙げられているNPOの課題など日本でもまだ十分に解決されているとは思えない。

4. 以下は私見で、異論もあるかもしれないが、日本の非営利組織についても
(1) 数が多すぎる。同じような活動をしている小さな組織が、良くも悪くも独立しており、しかも自立しているところが少ない。
(2) これらのNPOが協働するという事例がまだ少ない。
企業とNPOとのコラボレーションは事例も増えてきているが、NPO相互に協働し、知恵やヒト・モノ・カネを共有するというネットワークづくりが弱い。

(3) エコノミスト誌の記事でとくに面白いと思ったのは「NPOセクターにはまだM&A市場がない」という指摘です。
つまりM&Aの対象になるようなNPOがまだ育っていないということ。
いかにもビジネスの発想で、抵抗感のある人もいるでしょうが、こういう問題意識が大事だと個人的には考えています。