英米で社会起業家への注目が高まる!

1.(はじめに)東京は2月の最終日は昼過ぎまで雪。]
3月初日の今日は一転して穏やかな日和で世田谷羽根木公園の梅もやっと咲きました。「梅まつり」はもう終わっていますが。
明日から2泊で京都行きです。


2.(社会起業家英米でもやっと公に認識されてきた)

このところ2回、エコノミスト誌の記事を紹介しました。
政府や大手メディアが真面目に注目するようになったのは英米でもごく最近のことだということに再度、留意したいと思います。


従って、2010年8月のエコノミスト誌でも、さらに最近の他の記事でも、面白いと思うのは、記事中に「社会起業家(social entrepreneurソーシャル・アントレプレナー以下SEと略)とは?」という説明を必ず加えていることです。
まだ、そういう補足を加えないと、知らない読者が多いという現状を反映しているのでしょう。


3.(社会起業家とは?大手メディアが語ること)

(1) 例えば、前述のエコノミスト誌は以下のような説明を加えています。


「SEは、例えば貧困の改善を図るためのビジネスモデルを考えるように、社会的な問題にイノベイティブな解決策で対処しようと行動する人たちである。
10年前だったら、この言葉を知る人はごく限られていた。しかし、今ではロンドンからラゴスまで、誰もがなりたいと思う存在である。代表的なビジネススクールでSEをテーマにした会議は、いま最も学生の集まるイベントである。
(略)
おそらく最も良く知られたSEの1人は、グラミン銀行創立者、2006年ノーベル平和賞ムハマド・ユヌスであろう。
もう1人をあげると、「ティーチ・フォー・アメリカ」を立ち上げたウェンディ・コップであろう。この組織は、一流の大学・大学院を卒業したばかりの優秀な若者を数千人もアメリカ各地の劣悪な学校に派遣し、教育の質の向上に取り組んでいる。

(2) 僭越に言わせてもらえば、2000年12月に町田洋次さんが『社会起業家、「よい社会」をつくる人たち』(PHP新書)を出したころからこの存在に注目して研究テーマにして、ささやかながら、支援する活動も続けてきた私に言わせれば、


「あのエコノミスト誌がいまごろ、SEとは?だの、ムハマド・ユヌスやウェンディ・コップの名前を持ち出すのは、ちょっと片腹痛いよ」と言いたくなりますが、まあそういう状況なのでしょう。

注目されてきたのは結構ですが、一時の流行のように取り上げるとしたら、そこには問題もあるような気がします。


4.(ワシントン・ポスト紙も、SEの「そもそも論」を述べる)
エコノミストはもちろん英国ですが、アメリカはどうか?
ごく最近、2011年11月9日のワシントン・ポスト紙のウェブ版が
「ソーシャル・アントレプレナーと次世代の社会貢献」という
記事]を載せています。
http://www.washingtonpost.com/national/on-innovations/social-entrepreneurship-and-the-next-generation-of-giving/2011/10/26/gIQAH7nR1M_story.html
事例としてはKIVAが取上げられており
(KIVAについてウェキペディアの説明はhttp://ja.wikipedia.org/wiki/Kiva  )
これまた今更、こんな著名な事例を出すのはやや驚きですが、やはり面白いのは、SEについて分かりやすく解説しているところです。

(1) KIVAの他、ここでもグラミン銀行ティーチ・フォー・アメリカの2つが紹介されている。


(2)「今日SEは、社会的な意識の高い思想家やビジネス人がもっとも関心を強めている言葉である」
アントレプレナー(起業家)は、さまざまな課題に対して、元気、ビジネスの活力、知性、そして資源を有効に活用する人たちである。
ソーシャル・アントレプレナー社会起業家SE)は、社会的な課題・問題に対して同じような原理をあてはめようとする」

(3)30年以上も前、
1979年代の後半に(社会起業家を支援するNPOアショカの創立者)ビル・ドレイトンは「公共のためのイノベーター」という言葉を唱えた。
英国の起業家であるマイケル・ヤングは「ソーシャル・イノベーション」という用語で説明しようとした。

ドレイトンの用語は普及しなかったが、考え方は持続した。
彼はアショカを創設した1980年ごろには「ソーシャル・アントレプレナー(SE)」という新しい用語を使い出した。

(4) 「社会的問題を解決するためには民間の資源(ヒト・モノ・カネ)の活用が一層必要であり、推進役がSEである、とデューク大のDEES教授は語る」
(と、ポスト紙は得々とDEES教授の言を引用するが、彼が最初に「ソーシャル・アントレプレナーシップの意義」というエッセイを書いたのは1998年、14年も昔である)
http://www.partnerships.org.au/Library/the_meaning_of_social_entrepreneurship.htm

5.(これからは、SEの、SEとの、コラボレーション・協働がキーワード)
ということで以上紹介した、SEの意味や意義について解説を加えるワシントン・ポストの記事は、わずか3ヶ月前ですが、内容は、この分野の研究者・活動家にとっては一向に珍しい内容ではありません。


但し、内容はともかく、こういうメディアの動きを私が取上げる意味があると思うのは、
(1) エコノミスト誌と同じように、いまになって大手メディアが注目して取上げようとしているという、その事実。
(2) SEの活動にとって大事なのは、イノベーションやビジネスモデル等であるが、同時に、昨今、SEと営利企業や政府との、或いはSE相互の「協働、パートナーシップ、コラボレーション」が強調されるようになっていること。
(この点はエコノミスト誌の内容と一致します)

の2点だろうと思います。
今回の最後に上の(2)についてのポスト紙の記事を補足して終わりにします。

「社会的な課題の多くを解決するには、ビジネス、非営利組織、そして政府機関それぞれのセクター同士の協働が重要である。その鍵を握るのがSEであり、かつ
最終的には、グローバルに考える必要があるだろう。
例えばドレイトンが運営するアショカであれば、「collaborative entrepreneurship
(協働する起業家たち)」というチームを組織内に設けている。そして、
「世界中から、最良の社会起業家を集めて、
何を考えるべきか?何が可能か?どういう方向を目指すべきか?どうやって達成すべきか?をともに考えてもらう。彼らは挑戦することが大好きなのだ」