アメリカのリタイアメント・コミュニティとは?

1. GWの連休に入り、無事に休みを取って久しぶりに英気を養っている人もいるでしょう。
もちろん人が休んでいるときほど忙しく働いている人もたくさん居ます。
たまたま必要があって、クロネコヤマトに頼んで荷物(たくさんの書物など)を運んでもらいました。
当方は、この荷物を連休中に整理しないといけないのですが、多くの人が休暇をとっているときに「働いている」宅急便の2人の若者に、妻が「お休み中にたいへんね」と声を掛けたところ、「仕事があるだけでも有難いと思ってます」という答えが返ってきました。


連休を利用して、東北の被災地にボランティアに出かけている人もいます。
KSENの仲間の以下のブログを読んだところです。
「来てほしい」という被災地の声がある。
行く人もいる。
行かれなくて、そのことをじっと考えている人もいる。
http://sandgasa.exblog.jp/17884212/

・ ・・というようなことを考えました。
当方は連休を「働いて」おり、ブログの更新も遅れ勝ちですが、もちろん誰の役に立つ仕事でもなく自分勝手な事情です。


2. 方々、いまだに3月に出かけた、アメリカへの旅の記録を残そうとしています。

言い訳とは思いつつも、この国に居て何も役に立っていないよりも、離れたところからこの国を見る、逃げ出す、逃げ出しながら考える、という選択肢もありか・・・・
ということで、今回は離れてしまった日本人のご夫婦にお会いした記録です。


前々回に、NYのペンステーション(マディソン・スクエア・ガーデンの地下にある)から電車に乗って首都ワシントンに行ったと書きました。その際に、ジョン・マーリンが駅まで来てくれました。

NYからワシントンまで、電車で2時間40分ほど。時間も値段も、新幹線で東京から大阪に行くようなものです。
もっとも目的地はワシントンではなく、そこから地下鉄に乗ってさらに40分、終点の駅から車で10分ほど、メリーランド州の田舎町にある「リタイアメント・コミュニティ(あるいはホーム」に住んでおられる日本人の友人Tさん夫妻(奥さん同士が学校時代の親しい友人)を訪れて、1泊してきました。

3. 日本では有料老人ホームと呼ぶのでしょうか。
今回は両方とも「ホーム」と略することにしますが、何れにせよ私もよく理解していませんが、それぞれ多少の違いはあるにせよ、
・ 一定の年齢以上の人たちが入居できる。
・ (A)元気に動ける、(B)補助を必要とする、(C)介護を必要とする
の3段階の居住者がいる。
・ 病院はないが、介護のスタッフは常駐している
といったところでしょうか。この点はおそらく日米あまり変わらないでしょう。

私が訪れたホームは「アズベリー・メソディスト・ヴィレッジ」(以下AMVと略します)という名前で、アメリカでも評判の良い、中産層向けのホームで、NPO(非営利組織)が経営しており、ここが本拠ですが、アメリカのあちこちに展開しています。

もちろん、アメリカですから、広い敷地、恵まれた環境にあることは日本とは違いますが、建物や住まいそのものは、とくに豪華でもぜいたくでもなく、日本のごく普通のホームに近いのではないでしょうか。
Tさんも「日本で、まあ普通の家を買うような値段です」というコメントでした。


ご夫婦は、3年ほど前に、日本の家を売却して、いわば退路を断って、そのお金でここを手に入れて、以来2人で暮らしています。

もちろん、そういう決断の理由としては、
・ 夫はもと商社マンでアメリカに20年以上勤務した
・ お嬢さんが1人いるが、アメリカ人と結婚してすぐ近くに住んでいる
という事情があるので、この点、私たち普通の日本人とはかなり状況ガ違います。

しかし、私が興味を持ったのは、お2人が実に快適に・満足して老後を暮らしているということで、アメリカの高齢者はこういう場所でどのように老後を過しているかを知りたいという気持ちがありました。

4. AMVは広大な土地(130エーカー、1エーカーは約1200坪)のキャンパスと呼ばれる敷地に、(日本語で言う)マンションや家々が散在しており、居住者は希望に応じて、マンションでも独立した家でも選ぶことができます。


(A)(B)(C)と健康状況に応じて3段階の生活環境が用意されていることは上述したとおりですが、現在、
全部で1300人強が住み、うち(1)が70%を占めている。
平均年令は83歳。最年少は61歳で、100歳を超えた人が7人。


Tさん夫妻はもちろんまだ元気なので(1)に入りますが、マンションを選び、「パークヴュー」という名前の7階建ての1室(日本でいうと、3DKになるか)に居住しています。

ここにお邪魔して、あちこち案内してもらい、夕食は建物の1階にある食堂でアメリカ人の友人夫妻も入って賑やかにとり、その夜はヴィレッジ内の講演会があるというのでこれを聴きに行き、そのあと部屋でいろいろと話を伺い、私にはたいへん面白かったです。

5. 奥様が日本の友人に向けて発信された報告がありますので、これを事前承諾の得ずですが、勝手に引用させていただき、お2人の印象をお伝えしたいと思います。

(1) 他の居住者の暮らし方
・他の居住者(もちろんアメリカ人ですが)が「非常に前向きで、屈託がなく、自然そのもので、健康状態に即した何らかの役目をそれぞれが引き受けて活動して」いる。
  ・「出る釘は打たれる、どころか、歓迎される」雰囲気が出来あがっているようだ。
  ・ロビーのデコレーション、月々のニュースレター、簡単な料理をもちよる集まりの係りなど。
ビル内の運動器具のおいてあるトレーニング・ルームや図書館も自分たちが管理運営している。

・ 居住者の中には、講演にヨーロッパまで出かける、車いすでキャンパスを走り回り・このビルの自治会の会長をしている、池の周辺で撮った動植物の写真をカレンダーにして介護施設の資金集めを仲間とともにしている、グループで野菜や花を作って住民に買ってもらい、その資金を(B)や(C)の施設運営に寄付する、・・・・等々、本当にエネルギッシュな人たちに驚いた。

・ その一方で、出来ることがなければ、全く何もしないで心地よく暮らしている人も多くいて、周りもそういう人たちを暖かく見守っているようだ。


(2) 他の居住者への接し方
・ 「パークヴュー」の居住者は70世帯ほどだが、そういう役の人がいるのだろうが、入居早々Tさん夫妻の写真を撮ってくれ、インタビューを受けて紹介文が出来て、それを「パークヴュー・ファミリー」という小冊子に入れてくれた。

・ そうすると、「ここはあなた方の新居、心から歓迎!」というカードがポストに入っていたり、何人もの人が、「私のアパートで軽く一杯やってから下の食堂で一緒に食事をしない?」と誘ってくれ、また、自宅での立食パーティに招いてくれたり、トマトやインゲンを玄関のところに置いてくれたり、ある時は、エレベーターで初めて会った人から「ちょっと、いま時間ある?見せたいものがあるのだけど、寄って!」と、掃除しかけのアパートに案内されたり・・・・・
アメリカでは、新入りが、ご近所に挨拶をするという習慣はないが、むしろ、周囲から飾らない態度で接してくれて、すぐに、みんなと知り合いになってしまった。

6. 以上、アメリカの「ホーム」に住む高齢者について、(1)と(2)の2つの姿を紹介しました。
このうち(1)について言えば、このように元気な高齢者は日本でも珍しくないし、どんどん増えているのではないかと思います。
ただ、その元気さが、このような「コミュニティ」のためにという活動になると、まだそれほど多くないかもしれません。
日本の老人ホームというのは、よく知りませんが、元気な居住者もそうでない人も一律にホーム側で手取り足取り、面倒を見てしまう、自主的に主体的に元気な居住者がコミュニティづくりに動くというのは、少ないように思います。

それと(2)の点です。
これは、日米の、知らない他人同士の付き合い文化の違いかもしれませんが、日本ではこういう人間関係はなかなか成り立ちにくいでしょうね。

これからの日本での老後、そこでの人間関係やコミュニティのあり方について、ちょっと考えさせられた今回の「ホーム」訪問でした。