民主党大会でのオバマ大統領受諾のスピーチを聞く

1. フェイスブック(FB)での中島さん古屋さん、コメント有難うございます。FB上での返事がうまく出来ず、申し訳ありません。そのうち若者に教えてもらいます。


2. 今回はオバマです。
YouTubeで、6日夜、彼が2期目の民主党大統領候補を受諾した党大会でのスピーチを聞きました。NY Times が載せたテキストを目にしながらです。
それにしても便利な世の中になりました。

4年に1度のアメリカのお祭りですから、マーケティングや演出といった観点からも面白い出来事ですが、それ以上に、

もちろん私としては、庶民の1人として、日本の政治や政治家や社会の在り方を考えているからこそ、こういう、よその国の出来事に興味を持っているつもりです。


3. 画面を見ながら、あらためて、世界最強国のアメリカがいま、アフリカン・アメリカ人の元首を頂いているという現実を考えました。
例えば、私が、20代半ばで初めてこの国に暮らした時、(暮らしたテキサス州ダラスでは黒人はまだ公然と差別されていた)こういう日がいつか来るとは想像も出来ませんでした。その点では、格差や人種問題を初め、山のような問題を抱え、かつ衰えつつある大国ではありましょうが、「永久に理想には到達しないかもしれない運動体としてのアメリカニズム」は、依然として前に向かって(forward)いると言えるのではないか。
当然ながら、次は、いつ・誰が、初の女性大統領になるか?でしょう。


4. それにしても、いつ聞いても、オバマの演説(約45分)はうまい。
もっとも、彼に限らず、オバマ夫人ミッシェル(25分)ビル・クリントン(50分、彼の熱烈な応援演説が支持率アップに大きく貢献したと言われる)も、誰もが原稿を見ずに、最初から最後まで聴衆を見て、喋る。

なぜ、こんなことが可能なのだろうか?

しかもオバマのスピーチをテキストを参照しながら聞いたが、細かい言い回しの違いや追加があるにせよ、ほとんどテキストの文章と変わらない。

「細かい追加」といえば、例えば、冒頭はNY Timesのテキストでは
「Michelle, I love you 」とあるが、実際のスピーチは「Michelle ,I love you so much」と始まる。

それにしても、奥さんへの呼びかけ、子供への言及からスピーチが始まるあたり、面白いです。

5. アメリカの価値観は常に、「多様性と対立から大義に向かう」であり、自然VS文明、小さな政府VS大きな政府・・・等々、すべて「対立と対決・違い」を自覚することから始めます。


今回もオバマは「いまアメリカは2つの全く異なった選択のどちらを選ぶか?の岐路にあります」
として、自らの路線が、「ミドル・クラス、スモール・ビジネス、そして弱者支援、健全な市民社会」の立場にあることを鮮明にします。


その上で、「自分にも弱点も欠点も失敗もあることは自覚している。」しかし、雇用、医療保険、外交、金融・経済政策・・・等で実績も上げたことを強調しつつ、

「道は長く厳しいが、ともに前にむかって行こう」と呼びかけます。
4年前のキーワード「変化(change)」が今回は「前へ(forward)」です。


6. その「変化」について、
「私ではなく、変化を起こしたのは、あなた方なのだ」と語りかけます。
アリゾナ州フェニックスで、(医療保険のおかげで)心臓に欠陥を抱えた少女が手術を受けて助かることが出来た。それを可能にしたのは、あなた方なのだ」(大きな拍手)

コロラド州のある若者が、{奨学金充実のお陰で}医学の学位を取るチャンスを与えられた。夢にも思わなかったことを可能にしたのは、あなた方なのだ」(同じく)

こう言う風に「 You are the reason」で始まり、「You did that」で終わるフレーズを何度も繰り返し、その中に事例を織り込んでいくレトリックは見事です。



7. 同じようにして、今度は「希望」について語り、
「私に希望を与えてくれるのは“あなた方”です」と再び“you”と語りかけ、

やはり、事例を幾つもあげて、最後に「She (あるいはHe) gives me hope」あるいは「They give me hope」と繰り返し、たたみかけます。

例えば、教育の重要性について語るにあたって
「ある「科学フェア」で会った女性は、バイオロジーに関する調査発表で全国的に認められましたが、彼女は、その時、家族とともに、ホームレス収容所で暮らしていました。彼女の姿は、いまも私に希望を与えてくれます・・・」


8. 彼のスピーチはこんな風に終わります。


「私たちの行く道は厳しいと言わざるを得ません。しかし、それは、より良き場所に向かっての道のりなのです。


私たちの歩く道は長く続きます。しかし、一緒に歩いて行こうではありませんか。
そして、振り返ることなく。誰をも置き去りにすることなく。
私たちは、お互いに引っぱりあって歩いて行きましょう。
神の恩恵が私たちとともにあることを信じ、世界でもっとも偉大な国の市民であることに誇りと自信をもって。」


9. もちろん、
「所詮、選挙演説。建て前とレトリックだろう。」
と皮肉ってしまえば、それまでです。