京都でジャック・ウェルチを読み終わる


1. 前回は「ソーシャルビジネス塾」で塾生とジャック・ウェルチが書いた
『ウィニング、勝利の経営』を読んでいる話をしました。
11月の最終週に京都に1泊し、合計4時間の発表と意見交換で本書を終えました。
こういう機会が無ければ絶対に手にとることが無かったような本を強制的に読まされて、面白かったと思ってくれた人が多かったようで、その点は良かったなと思っています。


今回は、第3部(「戦略」「社内ベンチャー」・・・等)第4部(「天職」「ワークライフバランス」・・・等)第5部(最後のまとめ)を、4人の塾生に発表してもらい、意見交換をしました。


2. 「最後のまとめ」で、ジャック・ウェルチは、自分をどういう人間と理解してほしいか? 自らはこう言います。


・・・後世の人が私を思い出すとき、あの人は、リーダーシップとは他の人が成長し成功することを手助けすることだ、と理解させようとした人だ、と言ってもらえればいいな、と思う。
・・・また、率直さと能力主義の熱心な提唱者であり、誰もが機会を与えられるべきだと信じていた人として思い出してもらいたい。
それから、自分自身を犠牲にしてはならない、というポイントを強調した人としても思い出してほしい。


3. 最後に、この本を読んでジャック・ウェルチという人間をどう思うか?
全員が一言ずつ発言しましたが、
「嫌い」という人、1人。「好き(この本を読んだ限りで、の前提付きですが)」が2人。あとは「好き・嫌いの両面ある」でした。

「意外に日本人に近い心情を感じた」と同時に、例えば
ワークライフバランス(仕事と人生との調和)」についてはかなり厳しい意見の持ち主であり、働く女性にとっては、男性視点だなあ、という違和感もあったようで、無理ないところでしょう。
塾生の1人から「彼自身は、自分を嫌いと言われてもあまり気にしないのではないか、むしろそういう率直さを評価するのではないか」という発言があって、
彼の人となり(もちろん本書を読んだ限りですが)をよく見ているな、と思いました。


4. 最後に、私がジャック・ウェルチをどう思うか?ですが、
あまりにも自分と違う人間としての魅力を感じるとしか言えませんが、ともかく、その強烈な個性と自己主張には、時に辟易しつつ、時に感心する、として、
彼の「自伝」から以下を紹介しました。

(1) ウェルチの父方の両親も母方の両親もアイルランドからの移民であり、祖父母も両親も高校を出ていない。
父親はボストンを走る電車の車掌さんだった。
一族の中で大学に進学したのは彼ひとりだった。

(2) しかも少・青年時代のウェルチは、決して秀才ではなく、あちこちの一流大学に落ちて、学士号も博士号も公立の大学での猛勉強の結果である。

(3) そのような彼を時に叱りとばし、時に愛情で包み込み、そして勝つために全力で戦うこと、つねに頂点をめざせ、勉強せよと教え、自信をつけさせたのが母親、グレイス・ウェルチだった。


(4) ウェルチの『自伝』は高校時代のアイスホッケーの試合のエピソードから始まる。
キャプテンとして負けた試合にふてくされた態度をとったジャックは、その態度がだらしない、と母親に仲間の面前で罵倒される。
ウェルチはその場面を思い出して、「母は、私が人生において最も影響を受けた人物である。グレイス・ウェルチは私に、競争が価値あるものであることを教えてくれ、同じように、勝つ喜びと敗北を乗り切ることの大切さを教えてくれたのである」と書き、次のように続ける。


「そして、私の基本とする経営理念の多く――勝つために全力で競争する、現実と四つに組む、時に抱きしめ時に蹴飛ばしたりしな人のやる気を引き出す、無理なほど高い目標を掲げる、仕事がきちんとなされたかを確かめるために容赦なく人を追いつめる――は、同じように母から影響されたものであろう。
(略)
「勉強をしなければまともな人間にならない」が母の口癖だった。「全くどうしようもない人間にしかなれない。近道なんかないんだから、甘く見てはいけない」。
母の、こうした率直かつ断固としたお説教が、いまも毎日、聞こえてくるようだ。ある取引やビジネスで問題が生じて、私がつい安易に処理する手だてを講じようという気になるたびに、母の言葉が私を正道に戻してくれるのだ・・・・」


5. 私のような、何となくサラリーマン人生を送り、仕事の上で全力で競争をしたことなど一度もなかったと思う(今頃反省しても遅いけど)人間が、こういう人物を紹介する価値があるかどうか、分かりません。

しかし、塾生には(夫々が自らの価値感と照らし合わせてどう思うかは違うでしょうが)、こういう人間が居るんだということを知ってほしいとは考えました。


6. ということで、今年の京都滞在は終りです。
また来年、彼らに会う予定ですが、
なかなか良いメンバーで、気持よく・前向きに話合うことが出来て良かったです。
いまの社会や政治の悪口を、ただ非生産的に口にする、なんてことがなく、
まずは自分だけでもちゃんと生きていこうとする若者たちが日本に居る、というのは嬉しいものです。