年末の東京新聞記事と寂しいこと・心配なこと


1. これが今年最後のブログのつもりで、遅くなって恐縮ですが、美川さん(FB)、我善坊さん、柳居子さん、コメントまことに有難うございます。

「また硬い話を!」と言われそうですが、コメントに触発されて、付言いたします。

まず、美川先生の話は、まことに興味深く、拝読しました。
「真ん中の考えと思っていたのが、いつのまにか「アカ学者」などとネット上に書き込まれる・・・」、まさに世の中、変わっているのでしょうか?
旧職場の大先輩で,もと常務の某さんが「俺は、昔は自分で右翼と思っていたが、意見は変わらないのに今では、中道と見られている」と何度も発言しているのを思い出しました。
旧職場は自他共に許す「リベラル」な職場でしたが、この言葉自体攻撃される時代になってしまったのでしょうか。

たまたま東京新聞(28日夕刊)に中村桂子さんが、
「よく平和ボケといわれるが、とんでもない。ボケていて保たれるほど平和は容易なものではないと覚悟してこれを選択していかなければならないのだ」
と書いたあとで、
「ここで重要なのが寛容であると渡辺は説く」として、渡辺一夫を引用しています。
そう言えば、渡辺が世を去ってもう35年以上、加藤周一も亡くなりました。
寂しいですね。

2. 東京新聞というのは、なかなか面白い新聞です。
昔の都新聞ですから仕方ないのですが、TV芸能とスポーツに多くのページを割いているのは私の好みではないですが(この2つに殆ど関心ないので)、リベラルな姿勢とローカルな立場を守っている点は高く評価できると思います。

スポーツ報道といえば、「松井引退」のニュースはこの日の夕刊が1面を含めて3ページにわたって記事を載せており、これは私もじっくり読みました。
松井について補足しますと、
私事になりますが、まだ「日本とアメリカ」をテーマにした「集中講義」を続けていて毎年、イチローと松井を取上げていること、
一度、NYヤンキーす・スタディアムで彼のプレイを見たことがあること(この日はたしか、サヨナラヒットを打ちました)

から「松井引退」は寂しいニュースでした。
年末の忘年会で、阪神ファンの某君が「ヤンキースだけでなく日本でも松井のピン・ストライプのユニフォーム姿を見たかった」と言っていました。
ご承知の通り、彼は本当は阪神を希望していたが、ドラフトの抽選で巨人が引き当てた。



3.この東京新聞が、26日と30日のそれぞれ朝刊に、ちょと気になる記事とコラムを載せています。

(1)26日は、「ネット愛国者の熱狂」という見出しで、ネットの世界で安部発言が熱狂的な支持を集めていることを伝え、
「安部氏のタカ派路線に期待し、憲法改正や中国への強硬路線を支持する意見が(ネットに)目立つ」とし、
「今の社会や自分の境遇に不満を持つ若年層がネットでの安部支持者の中心」という分析を紹介している。


(2)30日は関連して、「週刊ネットで何が」というコラムで、中川さんというニュースサイト編集者が「首相のフェイスブック」を取上げています。
このフェイスブックが同氏によれば、
「ネットの世界で大きな影響力を持つ愛国的ユーザーをあおるような書き込みが続いているのだ。中でも「マスコミたたき」と「ネットユーザーへの共闘呼びかけが目だっている」として
「安部氏のネット戦略の一つはおそらく愛国的ユーザーの「溜飲を下げる」ことにあるだろう」
と解説しています。


(3)さらには、このフェイスブックには「誤爆(意図的にかどうか、事実と異なる発言)もあって、美川先生の中高の同級生。藤原帰一東大教授もその被害を受けている、と紹介しています。

4. こういう状況を知ると、2013年、
この国の「ナショナリズム」さらには、「パトリオティズム愛国主義)」がどういう方向に行くか、
「オールド・リベラリストの爪の先」みたいな人間としては心配でなりません。


同時に、孫引きですが、思想家の橋川文三(彼は丸山真男ゼミの卒業生ですが、思想傾向は丸山より右だと思う)が引用している、あるフランスの政治家の言葉を思い出しました。


「近代的ナショナリストとは、ネーションの鏡の中に映る己れの美貌に陶然とするナルシシズムにほかならない」

5. 美川さんのコメントからの付言で紙数が尽きそうです。
我善坊さん、柳居子さんのコメント、
シンタロー閣下と福沢諭吉『痩せ我慢の説』冒頭の有名な言葉
「立国は私なり、公にあらざるなり」
について付言する余裕が今回はなくなりました。
閣下が選挙でこの点に触れたということ、関連するTVも新聞も無視していたので知りませんでした。
「福沢のナショナリズム」というのは実に興味深いテーマですが、我善坊さんご指摘のように、明らかに誤読か、意図的な読み替えでしょうね。
柳居子さんの「党名」のコメントも面白いですね。

それにしても、我善坊さんも同様の発言をしておられましたが、
私の周りの誰を見渡しても、彼に投票したという人を殆ど知らない。
それなりに、かって3百万票もの支持を得たというのが不思議です。

いまや、「オールド・リベラリスト」は、「絶滅危惧動物」に指定されそうですが、来年も「天邪鬼精神」を忘れずに老後を過ごすつもりでおります。

皆様、よいお年をお迎えください。