京都で「アシュリー」「やなせたかしさん」など

1. 前回のブログは、友人がフェイスブックでいろいろコメントをしてくれて嬉しく思いました。
このFBという代物、私はまだ使いこなせず、何よりもコメントのスピードについて行けずに、ご迷惑を掛けています。
前回は、
「“LREFWO”を並べ替えて意味のある英語の単語にしてください」という質問を紹介しました。
私はさっぱり分かりませんでしたが、何人かの同年代の友人に会う機会があって、早速試してみたところ、1人だけほぼ直ちに、正解を当てた人が居ました。どういう頭の構造になっているのか、感心しています。

2. 今回は京都での話です。
京都府の応援も得て開講している「ソーシャルビジネス町家塾」を手伝っていますが、10月から第3年度、3期生12名への「塾」が始まり、私の担当する15コマ(予定)の第1回が先週スタートしました。
その報告ですが、
{1} 塾は毎回半年間、実習と座学の組み合わせで、毎日平日9時半から16時まで。
{2} 座学は、実践的な内容―会計・財務、マ―ケティング、IT、ビジネスマナー等々―が中心だが、私はむしろ、ゼミ形式を取り、本を読みながら話合うことを通して、「ソーシャルとは?ビジネスとは?」を考えてもらう。
{3} この「ゼミ形式」というのは、意外に大学で経験していない人も多くて、「1つの事について皆で意見を出し合い、語り合う大切さと面白さを感じた」という感想を述べてくれた塾生も居ました。


3. まずは「自己紹介」と題して、これにかなり時間を使います。前にもここで紹介したことがありますが、
{1} 自分がどういう「事業プラン」を考えているか、と同時に
{2} いままでに印象に残った本(映画でも良いし、幾つでもよい)
{3} 印象に残った人物(実際に会った人でなくてもよい)
{4} 生涯でいちばん嬉しかったこと
を語ってもらい、それぞれの「語り」をもとに皆で話し合うので、かなり時間がかかります。
「例えば、1冊の本から「自分の物語」を語ってもらいたい、その「物語」を皆で共有したい」と趣旨を説明します。
前のブログにも以下のように書きました。
―――「これからの設計」を立てるためには、まず「振り返ること」が大事、その契機として「本」と「人」と「出来事」を考えてもらいたいという狙いです。
抽象的な「自分探し」というような作業は好きではなく、具体的な「名前」や「固有名詞」から思考を進めるというのが、私がいつも学生に伝える流儀です ――

1日目で全員の話を聞くつもりが、5人で終わってしまいました。

4. 実は、人の話を聞くのは、私自身にとっても大いに勉強になります。
例えば「1冊の本」で、某さんが「アシュリー」について語ってくれました。
7年前、日本のテレビでかなり話題になったようで皆は多少の知識があるようでしたが、私はテレビを殆ど見ないこともあって、この名前は初耳でした。
アシュリー・ヘギ

というカナダの女性が自ら書いた本(邦訳は扶桑社)。
彼女は、2009年に17歳で死去。
プロジェリア症候群(早期老化症)という、世界でも数十人しかいないという、健常者の10倍も速く老化するという治癒不能の奇病を持って生まれ、しかし明るく・元気に短い生を全うした、という。
「落ち込んだときに、何度も何度もこの本を読む」とは発表者の言葉でした。

私は、こういう病の患者が実際に存在するということを恥ずかしながら知りませんでした。
最近読んだアメリカの推理小説トマス・H・クックの『キャサリン・カーの終わりなき旅』(因みに彼の推理小説は好みが割れるでしょうが私はファンの1人です)の中に、このプロジェリアを患う頭脳明晰な少女が出てきて、主人公の謎解きの手伝いをするのですが、私は、作者が作りだした架空の病気だとばかり思っていました。

塾生には、この推理小説を紹介し、同時に、カズオ・イシグロの小説『私を離さないで』の話もしました。
『私を離さないで』は、プロジェリアとは関係ありませんが、やはり、「早い死」を運命付けられた若者たちの、心に沁みる物語です。
 
5.「死」という言葉が、第1日の塾生から何がなし浮かびあがってきたようです。
{2}の「印象に残った人」では、「母方の祖父とその死」を2名があげ、最近94歳で亡くなった「やなせたかし」さんの名前も出ました。
2人とも「母方」の祖父、というのは偶然かもしれませんが、「頑丈だった」「可愛がってくれた」「厳しかった」「大好きだった」「もと学校の先生だが、作物を作り・育てることを一から教えてくれた」・・・・そういう老人がいつか老い、死んで行く(1人は自分の20歳の誕生日に倒れたそうです)、という事実は、若者にとって、深く心に残る出来事だったのです。


{4} の「いちばん嬉しかったこと」では、父親との思い出を語る若い女性がいました。
父親は無口な人で子ども時代からあまり話合う仲ではなかった。
中学生のとき、いろいろ悩んでいる時期があり、ある日食事の時に、「山に行きたい」とぽつりと口にした。
日ごろ無口な父親が「じゃあ、一緒に行こう」と突然言い出して、2人で富士山に登った。
5合目から歩いて、ご来迎も見ることが出来た。
・・・・いい話だなと思いながら聞きました。

6. 今の若者、スマホばかりで本を読まない、と言われますが、今回の塾生はそういう人がたまたま集まったのか、5人のうち3人が「本大好き」人間で、中島敦『李稜』や岡本太郎の『強く生きる言葉』を「1冊」にあげる人がいました。三島由紀夫の名前も出て、驚きました。
私の知らない映画の名前もたくさん出ました。『酔いどれ詩人になるまえに』(アメリカ)『人生ここにあり』(イタリア)などなど。
画家の岡本太郎の個性や生き方が、いま見直されて、一部の若者に強い共感と支持が生まれているという話も面白く聞きました。

やなせたかしさんと「アンパンマン」の魅力も教えてもらいました。この漫画が、3歳の息子との会話の、大事なキーワードになっているという報告も、楽しそうでよかったです。
私の場合は、漫画が親子のコミュニケ―ションの題材にはならなかったな、とちょっと残念にも思いました。皆さんの発表のキーワードをいつものようにホワイトボードに書くのですが「あんぱんまん」と平仮名で書いて皆に笑われました。
何だか講師の方が、いろいろと教えてもらっています。