いよいよスコットランド独立を問う住民投票

1. 前回は信州の山奥で夏を過ごし、家の周りは夜になると真の闇になることに触れました。
都会人は闇を知らないというタイム誌の記事も紹介しました。
田舎では闇だけではなく、朝の散歩で霧に包まれることもあります。

ずっと田舎暮らしという訳にもいかず引き上げてきましたが、改めて、都会は人間と明りと音と、そして情報の洪水だなあと感じています。
情報については、もちろん田舎に居ても、新聞もテレビもインターネットも自由にアクセスできますが、朝霧に包まれていたりすると、情報に接する気持ちが薄れます。
都会に戻ると、世界は何とまあ「事件やニュース」に溢れていることかと驚きます。
個人的にはあまり興味も関心もない出来事も多いし、生臭い国内の事件も少し距離を置きたい気持ちが強いです.

他方で海の向こうの出来事は野次馬的な好奇心もあり、
今回取り上げるのは、18日に実施される、スコットランドの独立を問う歴史的な「住民投票(referendum)」についてです。
日本のメディアも報道していますが、重大さに比例しては大きくはないと思うので、主として最新号のタイム誌の記事から紹介します。

私がロンドンで働いたのは、もう20年以上昔ですが、スコットランドには仕事で4回行きました。秘書が毎回「パスポートを持参するのを忘れないで」と冗談を言って送り出してくれました。もちろん英国内ですから旅券は不要ですが、いよいよその点の住民の意思が公式に問われることになりました。

2. 9月8~15日号のタイムは「Leap of Faith(安全性を確かめずにとる行動)」と題して本問題を取り上げています
まず基本的なことから説明すると、
(1) 投票する人数は?:約4.2百万人
(2) 投票資格は、16歳以上のスコットランドに居住するUK、EUおよび英連邦(British commonwealth)の市民 
(3) スコットランド以外に住むスコットランド人は、投票権はない。
(4)投票で訊かれるのは「スコットランドは独立すべきか?」で、過半数で決まる。
(5)反対が多数の場合、今後の住民投票は?おそらく当分はあり得ない。独立派は今回が「ほとんど唯一最大のチャンス」と考えている。
(6)賛成が多数の場合,時期は?スコットランド独立党(SNP)は現時点では2016年3月24日を独立の日としている。


3. (現状)
予測では反対派(”Better Together”)が賛成派("Yes Scotland”)より優勢だが、その差が徐々に縮小している。タイムズ紙は7日の調査では反対49賛成51と初めて逆転したと報じたが、12日付電子版では反対48賛成52と再逆転したと報じている。


4. (経緯)
(1) 1998年UK(英国連合王国労働党政権下、スコットランド法の制定により、独自の議会が設立され、医療・教育・住宅政策等について大幅な自治を認めた。

(2)2011年のスコットランド議会選挙でSNPが過半数を取り、独立への動きに弾みがつき、同党は住民投票を提唱、キャメロン政権は、これに同意した(2013)。

(3) UK政府は、「圧倒的な反対投票でむしろ動きが収まるだろう」と判断して賭けに出たが、それが「重大なる判断ミスの始まり」と言えなくもない。

5. (影響)
(1) UK政府は妥協策として(留まれば)更なる自治権スコットランドに与えると約束した。しかしこの約束手形は、北アイルランドウェールズの同様な期待を促進させ、さらにはイングランド地方自治をもゆるがす可能性がある。

(2) またどのような結果になるかを、同じように独立への主張がみられる海外(ベルギー、スペインのカタロニア、カナダのケベック州など)が注目している。


5. (賛成過半数の場合の課題)
(1) EU加盟を申請することになろうが・・・ベルギー、スペイン等は反対するだろうし長期間のプロセスが予想される。

(2) 通貨をどうするか?
(3) 財政問題―どの程度の国家収入(とくに北海油田の収入)と債務をUKから受け継ぐか?
(4)  防衛と軍備は?女王の位置づけは?・・・・・等々
(例えば、SNPは4隻の原子力潜水艦スコットランド繋留を認めないとしている。UKは他に適当な軍港を持たず、地上の核装備はない)

6.(UKの海外へのコミットメントは?)
(1)独立が現実の問題になったとき、Great Britain(UK=連合王国)から「小さな英国(Little England)」になることは否めない。
(2)その結果、小さくなったUKの海外へのコミットメントは縮小するのではないか?世界の不安定な動きが今後いっそう予測される(ロシア、中東、アフガン、東アジア・・・等々において)中で、それは大きなマイナスではないか、と指摘する声もある。
(このような危惧とも関連して、6月にはオバマ大統領もついに「アメリカは、強い・統一されたUKを支持する」という異例の公式発言を行った)


7.(最大の問題の1つは北海油田の取り扱い)
(1)スコットランドは他のUKに比べて住民への福祉が手厚い(例えば、大学授業料はいまだに無料)
(2)SNPは独立後の国家のモデルとして、同じく産油国であるノルウェーをあげている。しかし、石油資源を英国とスコットランドとでどう分配するかだけでなく、埋蔵されている石油量の推測についても大きく意見が分かれている。またノルウェースコットランドとほぼ同じ人口だが、石油の産出量はUK全体のほぼ2倍である。


8.(最後に)
(1)18日は高い投票率が予想され、僅差が予測されている。結果が判明するのは翌日以降に持ちこまれる可能性が高い。
(2)どのような結果になろうとも,スコットランドの喫緊の課題は、この問題をめぐって分断された住民の意識とアイデンティテイ(地域や場合によっては家庭内の)をどうやって、まとめて行くかにあるだろう。
(3)UKにとっては、5月のEU議会選挙、今回のレファレンダムに続いて、2015年は総選挙の年、17年までにはUKがEUに留まるか否かを問う国民投票が実施される予定。仮にスコットランド独立派が勝利すれば、総選挙の前にキャメロン辞任の世論が高まるかもしれない。
他方で、2015年には1952年2月即位のエリザベス2世が、歴代国王の中で最長の在位を誇るヴィクトリア女王(63年7カ月)を超えることになる。
(4)
スコットランド出身の有名人もそれぞれ態度を表明。例えば、007を演じたショーン・コネリーは賛成、「夢をつかんだ奇蹟の歌声」で知られるスーザン・ボイルは反対とのこと。


ということで今回は、この問題の紹介だけで終わります。
日本人には関係ないと思う人が多いかもしれませんが、佐藤優氏が「スコットランドと沖縄」という新聞のコラム(12日)で、
「沖縄ではスコットランド住民投票に対する関心が強い」と書いています。