「タイム誌2014年今年の人」は「エボラ・ファイターズ」

1. お礼が越年になってしまいましたが十字峡さん有り難うございます。いつも硬い内容で申し訳ありません。もっと読みやすい努力ができるといいのですが。

今年始めの私のブログは、恒例ですが、「タイム誌2014年今年の人」の紹介です。
すでに日本のメディアも伝えていますが、「今年の人」は「エボラ・ファイターズ(エボラ出血熱と戦う戦士たち)」で

「2位以下のショート・リスト(選抜候補者名簿)」は
2位は、「米ミズーリ州ファーガソンで白人警官の黒人青年射殺に抗議する人たち」―抗議者(プロテスターズ)
3位―ロシア・プーチン大統領帝国主義者(インペリアリスト)
4位―クルディスタン自治政府の代表バルザニー機会主義者(オポチュニスト)
5位―中国アリババの馬雲会長―資本家(キャピタリスト)


2. 西アフリカに拡がるエボラ出血熱と闘う人達を「今年の人」に選んだ理由について、女性編集長が書いた2014年12月29日号タイム誌の論説を要約したいと思います。

「なぜエボラ・ファイターズが“今年の人”か?」の文章を彼女は、
「戦いに真に必要なのは輝く武器よりも英雄の心だ、という格言がある。
この言葉は、漂白剤と祈りがいちばん必要であるエボラとの戦いにおいてこそいっそう当てはまると言ってよいだろう」という文章で始めます。


そして
(1) 何十年もアフリカの田舎の村を、神話に出て来る怪物のように時折り襲っては村人を恐怖に陥れていたエボラ出血熱が、2014年、ついに「流行病・疫病」としてアフリカの都市を襲い、リベリアギニア、シエラ・レオナなどの都市の貧困世帯を直撃し、さらにはスペイン、ドイツ、アメリカ合衆国で感染者を出すまでに至った。
その結果、前例のない大量の医者や看護師を世界各地で動員することにもなった。

(2) しかも現地の政府も欧米も全く備えが出来ておらず、さらに現地政府ではそもそも腐敗・汚職を含む統治体制の問題もあって対応が遅れ、
他方でWHO(世界保健機構)は当初極めて官僚的で、感染が拡大しているというのに、イソップ童話の「狼少年が来た」と言っていると非難を浴びせた。

3. そういう状況にあって最初に動いたのは、現場の人たちだった。「国境なき医師団」やキリスト教系の団体や世界中から駆け付けた様々なNPO、そして現地の医療関係者や、救急車の運転手や埋葬チームがお互いに手を取り合って事態に立ち向かった。

タイム誌は彼らを「呼びかけに応じた人たち(The Ones who Answered The Call)」と讃え、「何があなたを動かしたのか?」と訊いてみる・・・・
――神について語る者、火が燃えたら誰だって消すために駆けつけるでしょう、と語る者。「アメリカから、ウガンダから私の隣人を助けに来てくれる人がいるのを見て」と語るリベリアの看護師がいる「彼らの姿を見たら、自分の国なんだから私だって、という気になる・・・・」。辛うじて感染を免れた救急車の運転手は言う。「全力をあげてエボラと戦うしかないんだ」。

国境なき医師団」の看護師助手のサロメ・カラワ(上の写真)は、患者に寄り添い、身体を洗い食事の世話をしているが、実は両親もエボラで失い、自らも辛うじて生き伸びた。「何故この仕事を続けるのか?」という問いに「神様がもう一度私にチャンスを下さったんだと思うんです」と彼女は答える。


4. タイム誌編集長は以下のような言葉で総括します。
「エボラは戦いであり、警告でもある。現状の世界的な医療システムは、こういう感染症を、(私たちを含めて全ての人類にとって)防ぐのに十分ではないことは明らかである。
だからこそ、私たちがいま安心して自宅で眠ることが出来るのは、自らの意志で、蔓延する疫病に立ち向かう人たちが居るからなのだ。
彼らの休むことのない勇気と慈悲の「心」を、世界が備えを固める時間を稼ぐことを可能にさせてくれる彼らの「存在」を
リスクを恐れず、挑戦し続ける、自らを犠牲にし、人々の命を救おうとする「行為」を・・・
これらを高く評価するがゆえにタイム誌は「エボラ・ファイター」を「2014年今年の人」に選定した。


5. タイム誌はこのあと、写真を含めて34頁にわたって、この「エボラ・ファイターズ」の1人1人について具体的に紹介します。約50人の顔写真が載っていますが、もちろん「ファイターズ」のごく一部でしょう。
様々な「物語」が語られ、彼らのコメントが紹介されます。
(1) 人口4百万の貧しい国リベリアの首都でキリスト教系の病院を運営する医師ブラウンは、礼拝堂をエボラ隔離施設に代えて患者に対応することを決めてスタッフに協力を求めた・・
(2) そのリベリアで、スラムの少女たちに教育を与えるために学校を作って活動していた32歳の女性は、ミッションを変更してブラウン医師の応援に駆けつける

(エボラというと皆さんは、数字―感染者や死者の数−や防護服を着た人達を思い浮かべるでしょう。しかし私にとって“エボラ”とは、家族全てを亡くし一人生き残った少女エスターのことなのです=上の写真)
(3) 治療に当たり自らも感染した人、世界中から駆けつけた人、現地で別の活動をしていて踏みとどまった人・・・等々が紹介されます。


6.なお最後に補足しますと、
「西アフリカにおけるエボラ出血熱」という表題でウキペディアの英文・和文ともに詳細な記述があります。
これによると、同年12月29日までにおける世界保健機関 (WHO) のまとめでは、感染疑い例も含め20,116名が感染し、7,857名が死亡(死亡率39%)した。

(しかし実態はこれより多いだろうとはタイム誌も書いています)。
感染が広まる理由に、アフリカの森林隣接地帯では葬儀で死者に触れる習慣があり流行を加速させている、と国連は述べている。
そして以下のようなコメントもあります ―――グローバル化の影響で人の移動が広範囲となっているため、地球上の遠隔地への拡散も懸念されており、万が一先進国で流行した場合には人類の文明に大きな打撃を被る可能性がある。