ヒラリー・クリントン「私は、そういったチャンピオンになりたい」


1.散歩先の1つである東大駒場キャンパスはいま八重桜が美しく咲いています。
4月は年度替わりで、4月〜3月というサイクルが長く習性になっていた元学生・元勤め人にとってはお正月よりも4月に新しい年の始めという気持ちが強くなります。日程を入れる手帳も1~12ではなく、4月始まりを使っています。

今年の4月は地方選挙の年でもあります。
私の周りでも、大学時代の友人の長男が、愛知県の県議に初挑戦でめでたく当選。
宇治でお付き合い頂いた田中美貴子さんは、宇治市会議長から京都府に府会議員に転じてこちらも当選。何れも民主党です。大いに頑張って欲しいと思います。
とくに女性が頑張っている姿は老人には何となくまばゆく見えます。

東大のキャンパスを歩くと、新入生を部活に勧誘する看板がまだ立っています。
昔に比べて最大の違いは女子学生が増えたことでしょう。勧誘する女子学生も目立ちますし、立て看を見ても、「女子サッカー部」だの(混声はあっても)「東大女子合唱団」なんていうのは昔だったら考えられないでしょう。

2. 女性といえば、先週の海外トップニュースの1つは、ヒラリー・クリントンの大統領選出馬宣言でしょう。
ワシントン・ポスト紙は、
「政治家よりもむしろセレブリティである彼女を知らない人はいないだろう。ほとんど全てのアメリカ人が、善し悪しを問わず、ヒラリーをどう思うかの意見を持っている。その彼女がついに、手をあげた〜〜」と報じました。
以前、このブログで「エリートは社会階層、セレブは個人。かつ、後者を使うことはあまりない」と書きました。アメリカ初の女性大統領誕生するとすればいまヒラリー・クリントンしかいない・・・とすれば、まさに「セレブ」の代表でしょう。


日本の新聞でも詳しく報道されていますが、2分強のビデオで出馬を表明。
http://www.washingtonpost.com/blogs/post-politics/wp/2015/04/12/hillary-clintons-2016-presidential-bid-starts-today/?hpid=z1
メディアが「ロー・キー(控えめ)」と批評するように、
クリントンの名前を表に出すことを出来るだけ避け、自身は最後の1分弱に顔を出すだけ。半分以上は、多様なアメリカの無名の庶民の姿が写されます。登場するのは女性が男性より多く、1人はスペイン語を喋り、男性のゲイのカプルも居ます。
そして最後に本人が語る。東京新聞は「普通の米国民はチャンピオン(擁護者)を必要としている。私はその擁護者になりたい(Everyday Americans need a champion. I want to be that champion. )」と書きました。


「チャンピオン」という言葉は、まずは「勝利者・優勝者」ですが、もう1つ「他の人や主義のために闘う人( person who fights, argues or speaks in support of another or of a cause)」という意味もある、「女性人権運動のチャンピオン(a champion of women’s right)」という言い方をします。
もちろん「選挙に勝って大統領になりたい」という意味も込めて、うまい言葉を選んだものです。

まだ1年半もあるので何が起こるか分かりませんが、共和党は多数の候補者が出て来そうだが、民主党はいまのところ彼女の独走。
しかも現時点の世論調査では、共和党を含めて他の候補者(予定)を大きくリードしています。英国エコノミスト誌によれば英国のある有名な賭け屋(ブック・メーカー)は現時点で9割以上チャンスがあると言っているそうです。

ポスト紙は「ちょっと厚かましい内容」として、
"Wife, mom, lawyer, women & kids advocate, FLOAR, FLOTUS, US Senator, SecState, author, dog owner, hair icon, pantsuit aficionado, glass ceiling cracker, TBD...“(妻であり、母親であり、弁護士、女性と子供たちの味方、アーカンサス州の知事夫人、大統領夫人、上院議員国務長官、作家、犬好き、髪型を大事にし、パンツスーツを好み、ガラスの天井を打ち破り、”決めるのはこれから(の人物)”)という2013年の彼女の自己紹介を引用し、
“To be determined ”が「ついに態度を決めた」と補足しています。
因みに、彼女は、いまのところフルタイムの職業経験のある・初めての大統領夫人とのこと。


3. 初の女性大統領が誕生するか?という話題でこれから1年半以上、アメリカは騒がしくなります。
それにしても、民主主義というのは、国民の代表を選ぶのに時間とお金とエネルギーがかかるシステムではあります。

前々回のブログで、ロシアのプーチン大統領について触れ、彼が西欧流の価値観・自由民主主義への挑戦を意識しているという見方を伝えました。
そのプーチンを、米国の経済誌「フォーブス」は「2014年世界で最もパワーフルな人物(The World’s Most Powerful People 2014)」の1位に選びました。2013年に続いてです。
もちろん、プーチンを1位に選んだからといって好意や肯定ではありません、同誌の説明は以下の通り。
――2013年に本誌がプーチンを1位に選んだ時はいささかの物議をかもした。しかし1年経って我々の判断に先見の明があったことが明らかになった。2014年もプーチンである。ロシアはますます、エネルギー資源の豊富な、核戦略に力を入れる、乱暴者国家(rogue state)のようにみえる。そしてその指導者は、疑いなく(undisputed)、予測しがたい(unpredictable)、責任をとろうとしない(unaccountable)、国際世論を全く気にしない(unconstrained)人物である ――

日本のメディアは”The Most Powerful ”を「最も影響力のある」と訳しています。
「パワーフル」を「影響力のある」と訳すのも、「チャンピオン」を「擁護者」と訳すのも、ちょっと面白いなと思いました。


4.因みに,フォーブス誌の選出で、2位はオバマ大統領、3位、習近平、4位ローマ教皇フランシス、5位がメルケル首相です。
ついでに(こんな順番どうでもいいと言われそうですが)日本人が出てくるのは、最初にトヨタの豊田社長34位、以下孫正義氏38位、黒田日銀総裁48位。わが国の首相は63位です。

順番にこだわる訳ではありませんが、「世界のチャンピオン上位5人」のうち、ローマ教皇を別格とすれば、西欧の自由民主主義を代表するのが2人、共産党1党独裁とロシアで2人、2対2という組み合わせになります。
(この際イスラムを措いても)やはり世界はいま、「文明の衝突」という局面にあるのかなという危惧もしてきます。
手がかかる、金もかかる、無駄もある、しかし異論に丁寧に耳を傾け、寛容と自由と多様性を尊重する・・・そういう価値観とは異なる思考と行動を支持する人たちが世界には沢山いる、この国でも増えているかもしれない、と時々考えてみることは大事なことかもしれません。

それにしても、フォーブズ誌が選ぶ「もっともパワーフルな(影響力のある)日本人」のトップが自動車会社の社長というのは少しがっかりしますね。
不謹慎と言われそうですが、天皇皇后のお2人はどうでしょうか?
高齢をおしての先のパラオ慰霊の旅での
「ここパラオの地において、私どもは先の戦争で亡くなったすべての人々を追悼し、その遺族の歩んできた苦難の道をしのびたいと思います」
という言葉は、「ロー・キー」ながら、精いっぱい言いたいことを言ったという気がします。他方で、一度も靖国参拝をしていないという事実もあらためて思い起こされます。