南ア戦勝利の翌日の「サンデー・タイムズ」を買う

1.十字峡さんたいへん遅くなりましたがコメント有難うございます。ラグビー大ファンの十字峡さんのことですから大いに興奮されたと思います。たしかに殆どの人が勝てると思っていなかったようですね。
日本でも「歴史的勝利」という言葉が使われました。
もういささか旧聞ではあり、しかもその後スコットランドに大敗した後ではありますが、「歴史的」出来事である以上、時間が経って取り上げても意味はあるだろうと思い、今回も話題にいたします。


翌日の21日(月)のBA航空で日本に帰ってきたのですが、空港のショップで、世界最古の日刊新聞であり英国を代表する「タイムズ」の日曜版「The Sunday Times」を買いました。
日曜版はアメリカのニューヨーク・タイムズなんかも同じですが、腕に抱えないと持てないほど分厚く、本紙の他「文化・芸能」「スポーツ」「ビジネス」「旅」「住居」などが独立した数十ページの特集号になっています。これを日曜日、公園や自宅で1日かけてゆっくり眺めるのを楽しみにしている人が多いでしょう。
インターネットの時代とはいえ、週末は珈琲を飲みながら、何時間もかけて活字の新聞にゆっくり目を通すという習慣はいまも残っているだろうと思います。
娘の場合も、仕事上必要でFT(フィナンシャル・タイムズ)は必ず読むが、平日はネットで、ただし週末だけはやはり分厚い「Weekend FT」を自宅に配達してもらって、ゆっくり起きて活字を拡げるのが楽しみと言っていました。

2.その分厚い「サンデー・タイムズ」を買って(2ポンド50ペンス、日本円で500円弱します)やはりラグビー発祥の国だなと思ったのは、当然ながら日本の勝利の報道の大きさです。
(1)まずは48頁ある本紙の1面トップに写真(畠山選手が喜んでいる姿の)が載って
「日本(The Brave Blossoms)がBOKS(南アチームの愛称)をワールド・カップ最大のUpset(番狂わせ)で破る」
との見出し。
本紙3ページに記事がフォローされていて、
「サー・クライブ・ウッドワードというもと英国の選手兼コーチは”ラグビー史上でも最高の試合”と語った」
とあり(英国ではラグビー選手でも「サー」の称号をもらえるのだと感心し)
ラグビー・ワールド・カップの史上で最大のショック」
「過去2度もチャンピオンになった南アチームは呆然自失状態だった」
と続きます。

(2)スポーツ欄は独立して24頁ありますが、この試合はもちろん1面トップと2ページほぼ全面のフォローがあります。
1面トップの見出しは「UNBELIEVABLE(信じららない)」という大見出しの下に
「日本がワールド・カップ史上最大のショックで南アを破る」と続き、

(3)中を開けると「最後のGasp(息を呑む行為)で日本チームが南アをhumiliate(恥をかかせる)させた」
「南アにとっては屈辱的な日」
「(試合の行われたブライトン)ショックは、あまりに強烈だったので、世界中が震度を感じた」
「番狂わせは、ワールド・カップ最良の頭脳の1人(日本チームのコーチ、エディ・ジョーンズのこと)が演出した」

といった見出しの記事が並びます。とにかく最大限の表現によるたくさんの記事で、見出しだけで内容も想像できるというものです。


3.実は私は特段のラグビー・ファンでもなく、ルールもよく知りません。
そんな素人が試合を観て、あとで聞いたり、読んだり、感じたりしたことを以下に記録したいと思います。

(1) そもそも、「なでしこジャパン」の名前は知っていたが、ラグビー日本代表に「勇敢に咲き誇る花々(The Brave Blossoms)」という愛称があることも知らなかった。
(2) 前回のブログでちょっと触れたように、私は、英国に住む娘一家とテレビ観戦。全員がすべて素人。
そこへ7時前にブライトンでの観戦を終えて、電車で3時間かけて帰宅した日本からやってきた観戦組2人が興奮してジョインして、その夜は11時からのBBCの「ダイジェスト」番組を観ながら、いろいろと解説してもらいました。

彼らの報告は、とにかく試合場でも終わってからも、興奮がすごかったということ。
(1) まずは、日本が有利になってきた最後になると、南アのサポーターでも日本のでもない、ただラグビーを愛して見に来た観客の中から、「ジャパン、ジャパン」という声援が大きく飛んだこと。英国にも判官贔屓があるのでしょうか。
(2) 勝利が決まったら、日本人だろうが外国人だろうが、隣や近くに座っている人たち同士一斉に抱き合って祝ってくれたということ。
(3) 中には、南アチームのジャージーを着たサポーターまでが、「見事な試合だった」と握手を求めてきたこと。おまけにある人は「自分着ている南アのジャージーとお前の日本のジャージーを交換してくれないか」と申し出る人まで現れた。
(4) 帰りの電車の中でも、試合に行っていない乗客の中にはすでに結果を知っている人たちがいて、見知らぬ日本人の乗客に向かって手をあげたり祝意を評してくれた人たちがいたこと。

以上のようなことは、私には判りませんが、サッカーの場合とは多少異なるのでしょうか。
何れにせよ、英国でラグビーがいかに愛され、盛り上がるかを示す光景ではあるでしょう。
ラグビーは英国では上流階級や中産階級の、サッカーは労働者階級のスポーツだとはよく言われることですが、そのあたりについても考えました。

最後になりますが、ラグビーの国別代表資格は、オリンピックやサッカーと違って、国籍(日本人であること)は不可欠ではないということ、外国生まれの日本人だけではなく日本に3年以上住んで母国の代表になっていなければ有資格であることも、改めて思い起こしました。個人的には、とてもよいことだと思います。


そしてそのことと多少関係あるようにも思うのですが、
TBSの開局15周年記念番組の小沢征爾さんとドナルド・キーンさんとの対談「音楽、オペラそして人生」というBSの番組の中で、
オリンピック嫌いを公言する小沢さんが、
「国の旗のためにやるのが体育とは思わない。自分のためにやるべきではないか。
音楽にはもちろん国境はない。国を代表する音楽というのは決してやってはいけない」
と繰り返し語っていたことを思い出しました。
留守中に家人がブルーレイにとってくれた9月20日放映の番組を昨夜、再生して観たときのものです。


言うまでもなくドナルド・キーンさんは日本文学をこよなく愛し、日本の古典を普通の現代人以上に読み・書く日本人ですが、15歳のときからニューヨークのメトロポリタン歌劇場で見始めた熱狂的なオペラファンでもあるそうです。