犬と猫はチョークとチーズぐらい違う?

1. 前回はアメリカ大統領選挙についての英国エコノミスト誌の論説を紹介しました。
よく分かりませんが、アメリカ人と英国人とは、ずいぶん違った国民なのでしょう。奇妙な人たちだと英国人は感じているのではないか、とエコノミストの論調からは読み取れます。
そう言えば、昨年9月英国に旅をして、ある英国人とそんな話題を交わしたときに、「アメリカ人と我々はチョーク(白墨)とチーズぐらい違う(as different as chalk and cheese)」と言われて、面白い表現だなと思いました。
本人も由来はしらず、ネットで調べてみましたが、
「本質的にまったく違う」の意味でもっともよく使われる言葉であり、14世紀の英語のテキストにすでに出てくる、由来も語源も分からず、おそらく短くて語呂がいいからではないか、と説明がありました。英国も良質のチーズの産地でチェダーが有名ですが、そのあたりで広まったという説もあるそうです。


どちらがチョークでどちらがチーズかはどうでもいい。
「ただ、まったく違う」というだけで、優劣を論じている訳ではありません。
見かけが似ていたり、同じカテゴリーに属する2つが、実はまるで違うというような場合に使うようです。

「犬と猫は、同じペットだが、チョークとチーズみたいに違う」と言ってもいいでしょう。


2. アメリカの大統領選挙を見ていて、前回も書いたように英国や日本と違って直接選挙だという「違い」は大きいでしょう。
そのことも影響しているか、特に今回の場合、顔ぶれの出自がいかにもアメリカだと感じさせられます。
共和党アイオワでの上位3人のうち、テッド・クルーズの父親はキューバからの移民、ドナルド・トランプは祖父がドイツから、マルコ・ルビオは両親ともにキューバ人(従ってカトリック)、そして民主党バニー・サンダースは両親がポーランドからの移民でユダヤ人です。
ヒラリーさんは3代前にはアメリカ人だったので別格ですが、いかにも移民の国だと痛感します。

英国や日本では考えられないでしょうね。
アメリカ人が好きな言葉に「この国では誰だって大統領になれる(Anybody could become President)」というのがあります。もちろん建前にすぎませんが、少なくとも出自には関係なく、可能性はある。
ただし、昔のアンドリュー・ジャクソンのような時代に比べて、いまのアメリカは高学歴社会ですから、高学歴とそこでの優秀な成績は必要
(例えば、クルーズはハーバード大ロースクール、トランプはペン大ウーォートン・スクール、ルビオはマイアミ大ロースクール、サンダースだって名門シカゴ大学そしてヒラリーはイェール大ロースクール)。


但し、日本以上に奨学金は充実していて苦学しても道は開かれていると言えるでしょう。
例えば、渡辺靖慶応義塾大教授の『沈まぬアメリカ』によれば(彼はハーバードのPh.Dです)、
・2014年現在の学部の学費は年間4万4千ドル(約520万円)と高額だが、
・世帯収入が年間6万5千ドル(約780万円)未満の学部生は全額免除、
・学部生の65%以上が何らかの無償の奨学金を受給、
・博士課程に行けば、授業料免除が一般的で、渡辺教授自身も自己負担したことは一度もない、
とあります。
Anybody could become President という建前もまったくの嘘ではないという気もしないではありません。
日本の大学はどうか?貧しいが優秀な若者への道は同じように開かれているでしょうか?

3. とろこで、前述した「チョークとチーズはまるで違う」からの連想ですが、天気の良い日、
羽根木公園の梅見をかねて北沢川緑道を散歩しました。
犬を連れている人が実に多いな、猫は家にいるはずだな、犬と猫はまるで違うな、とつまらぬことを考えました。
優劣でも好き嫌いでもなく、ただ本質的に「違う」。
たまたま、弟と娘夫婦が我が家に集まって喋っているときに、そんな話題がでて「犬と猫が、どこが違うか」という話が出ました。


世間には、犬派か猫派かで大議論があるはずですから、我が家での雑談もとくに珍しくないでしょうが要約すると、


(1) 猫は物臭さで、自分勝手で手間をかける必要がない。だから、飼い主はどちらかと言えば、書斎派、室内派に多い。文学者や物書きに多いのは当然。自分は勝手に原稿を書いたりして、気が向いたら相手をすればよいから。


犬はそうはいかない。毎日散歩に連れていく必要がある。猫派は、一人で誰にも邪魔されずに歩くのが好み。
北沢川緑道を歩いても、犬を連れた人は実に多い。猫はこたつで丸くなっていることでしょう。

(2) もう1つ。
猫派は、「猫なら何でも好き。別に種類を問わず、血統にも拘らず、捨て猫だって好き、野良猫だって好き」。
他方で犬派は「(種類が多いこともあるだろうが)犬一般に興味があるというより、特定の種類の犬、あるいは自分の犬が好き。ウェルシュコーギーは好きだがブルドッグはいまいちという具合に・・・」

従って、(と出版事情に詳しい弟の話ですが)、犬の本は売れない、猫の本は売れる、というのが出版業界の常識。
だそうです。

私は上記の意見が正しいかどうか判断する知識はありませんが、面白く聞きました。彼ら3人は全員が猫派なので多少偏った意見かもしれません。
しかし彼らとしては、「チョークとチーズ」のようにただ「違う」と言いたかったのだと思います。


そういえば、私はまったく見ませんが、テレビでも「我が家の猫」という番組があるそうです。
友人が投稿したところ、採用してくれた、某月某日放映するというメールがあり、「おれ、ねこ」と題する短いものですが面白く見ました。「おれ、犬」という番組は受けないのだろうなと思いました。