今年も忘年会、「吉原毅X古賀茂明講演会」のことも


1. 前回は職場の先輩との忘年会の話でした。
先週は世田谷区有志による読書会と忘年会もありました。
古い付き合いではないので、意外性という楽しみがあります。
某女性から、私のブログに「雑誌「The New Yoker」についての記載があり、私も長く購読しているので、ちょっと嬉しくなりました」とメールを貰いました。「あの雑誌を読んでると やっぱりアメリカはすごい と思ってしまいますが・・・」と。

昔、家族で住んだことがあるそうですが、日本から購読する人は珍しいでしょう。
私はもっぱら東大駒場の図書館で読んでいます。
確かに楽しい・かつレベルの高い雑誌です。
11月28日号には「まさかが起きた(It happened here)」と題して、トランプ選出後のオバマを取材しての11頁の長いエッセイで、面白かったです。

読書会では、殆どが現役世代ではありませんから、今何をやっている、昔こんなことをしていたなんていう私事はあまり喋らないのが普通です。当日選ばれた本についての意見交換に終始します。
しかし、忘年会はそうは行かないので、お酒も入り話は私事にも広がります。
たまたま隣に座った白髪の美しい女性はどうやら同年代で、お茶大卒とのこと。
話が学生時代に及び、お互いに60年安保の世代で樺美智子さんが亡くなった当日も国会へデモに行ったという話で盛り上がり、握手をしました。そうしたら、近くにいた2人の女性がそれぞれ当時高3と高2と年下でしたが、やはり当日デモの中に居たと発言。
こういう「意外性」が新しく知り合った人との、面白い出会いです。


2. 以上は長い前置きですが、
これもやはり読書会のメンバーの同世代の女性に教えてもらって、12月1日(木)に「吉原毅X古賀茂明講演会」というのを聞いてきました。彼女は古賀さんの親戚だそうで私が同じ中高OBだと知って教えてくれました。チラシには、「お二人は麻布高校の先輩後輩で、遠慮のないお話が期待できます」という宣伝文句もありました。表参道の「ウィメンズ・プラザ」は100名ほどの超満員で、老若男女、多様な出席者でした。

(1) 古賀さんはもと経産省官僚。番組を観たことがないので経緯は知りませんが、テレビの「報道ステーション」で政権批判をやって降板させられた由。この日の発言を見る限り、政策批判はありますが特に過激でも感情的でもなく、もし事実ならこの程度でテレビ番組を降ろされるというのは理解できません。


(2)一部紹介すると、
・日本経済の先行きに大きな懸念を持っている。経産省の罪は大きい。
日本は(a)原発推進を止めず〈コスト的に合わないのに)世界の潮流から遅れ、
(b)太陽光・風力の芽を摘み、
(c)排ガス強化規制で遅れを取り、
(d)技術革新などで世界との連携が出来ず、
(e)IOTや3Dプリンターでも出遅れ、
➡1人あたりGDPは今や20 位まで下がり。
これで先進国と言えるか?
例えばアメリカのGE社は最近航空機のエンジン部品を3Dプリンターで完璧に製造することに成功した。日本の伝統的な「匠の技」が通用しない時代に入っている。

・いま問われているのは、
(a) 経済成長不要論があるが、成長はやはり必要、ただし質が重要。
(b) グローバリゼ―ション批判も流行だが、批判してもダメ、避けて通れない。要はマイナスをどう抑え、果実をどう配分するかの問題。
(c) 目指すべきは、真の「先進国」、「経済と倫理との一致」ではないか。
即ち(イ)人を大切にする国、(ロ)自然環境を大切にする国、(ハ)経済に公正なルールが適
用される国の3つが大事。電通の過労死が象徴的、これでは「真の先進国」になれない。

さすがにも元経済官僚だけあって、産業政策などの知識と意見には傾聴すべきものがあると思いました。

(3)他方で、吉原さんはもと城南信用金庫の理事長。いまは城南総合研究所の所長で、改革派の経営者として知られています。
・「人を大切にする」は「思いやりを大切にする」と並んで城南信金の経営理念である、
との説明があり、

原発反対の立場から、原発がいかにコスト的に合わないか、中国を含めて、世界の動きがいま太陽光、風力に進んでいる現状を具体的に説明し、

・さらに、福島原発事故の後始末として取り組んでいる
(a)「トモダチ作戦被害者支援基金」(いまも400名がガンや白血病の後遺症で苦しみ、7名が死亡し、アメリカの医療が高額な問題もある・・・)
(b)「3.11甲状腺がん子ども基金
などの具体的な説明がありました。「トモダチ〜」は福島の事故の直後に救援活動に入ったアメリカ軍兵士の放射能後遺症の問題です。彼らを支援する活動は、小泉・細川元両首相と吉原毅氏他1名が発起人になって始めたものです。城南信金も組織をあげて支援しているようです。サイトは以下の通りです。
http://www.jsbank.co.jp/38/tomodachi_kikin.html
吉原さんは、今年、アメリカに行ってこういう米兵たちにも会って話を聞いてきた、
記者会見で報告しながら、涙が止まらずに困った、と語りました。


3. ということで、少し感想を補足すると、
(1) 城南信用金庫は、地域に根ざしつつ、こういう支援も行っていて、なかなか立派な金融融機関だなと思いました。

(2) 日本のメディアは少し怠慢ではないか。
例えば、この講演会の模様を数人の麻布OBにメールしたところ、「トモダチ作戦被害者支援基金」の話なんて初めて聞いた、購読している日経で読んだことはない、という返事を貰いました。東京新聞は割に丁寧に報道していますが、なぜか大手のマスコミはこういうニュースを流さないらしいです。
また、米兵の救援で放射能を浴びた後遺症があるのなら、福島の住民、とくに子供たちにも問題が出ているのではないか。
吉原さんと城南信金が取り組んでいる「3.11甲状腺がん子ども基金」はこの点に絡む活動です。サイトは以下です。http://www.311kikin.org/

4. 最後に、もう1つ忘年会。大学時代の級友が集まりました。
雑談に終始しますが、1つ面白いと思った発言は某君からで
天皇誕生日天皇の言葉がとてもよかった」というものです。
実は私は読んでいなかったので反省し、帰宅して1日前の新聞を探しました。
彼は、加えてこういうコメントもあり、ちょっと心に残りました。
「僕たちが大学2年生のときに、天皇・皇后のご成婚があった。それ以来、お二人がずっと元気でおられて、それ以来青年時代からいままでの、まあまあ大過なく暮らしている僕らの老年とまさに重なっている。これはとても幸せなことだと思う。その間、戦争もなかったし・・・・」

こういう庶民が居るということを、83歳になられた天皇に知らせてあげたいと思いました。
それでは皆様良いお年をお迎えください。