2017年お正月に考える

1. おめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。
忘年会も終わって暇になったので、昨年末以来たまった新聞雑誌を読んでいます。

まずは、安倍首相の真珠湾訪問です。
(1) 安倍首相のスピーチは、なかなか良かったと思います。
「不戦の誓い」を確約したのは良かった。願わくば、この誓いを2017年本当に実践してほしいものです。

ただ、「パールハーバー。真珠の輝きに満ちた、この美しい入り江こそ、寛容と和解の象徴です」という呼びかけは、レトリックとしてはきれいとは思いますが、「ここが和解の象徴」と言われると、個人的には「うん?」という気持もあります。


(2) ワシントン・ポスト(WP)の「オバマ、日本のアベ、パールハーバーへ悲しみの訪問(somber visit)」と題する記事では、安倍首相のスピーチについて「殆どを日本語で語った」とした上で、以下3か所を引用しました。


・戦争の犠牲者に「永劫の、哀悼の誠をささげます」
・「戦争の惨禍は二度と繰り返してはならない。私たちはそう誓いました」
・「(日米同盟は)いままでにもまして、世界を覆う幾多の困難に、ともに立ち向かう同盟です」


(3) WPは「和解の象徴」という言葉は引用しませんでした。
以下のような解説もありました。
「(真珠湾攻撃は)不意打ちであった。しかし日本政府は、意図的な「奇襲」ではない、事務的な過ちで通知が遅れたのだ、と繰り返し主張している」

また、
「日本の指導者たちは、国内の右翼の反対もあっていままでパールハーバー訪問を避けてきた。アベは、1945年8月”戦争を終わらせるために”アメリカが最初の原子爆弾を落とした広島への5月のオバマ訪問が日本人に好意的に受け止められたのをみて、好機がきたと判断した。」

いまだに拘るようですが、
「戦争を終わさせるために(to help end the war)」原爆を落とした」という表現は個人的には反発を覚えます。


日本側の敗北が決定的だったあの時点で、それが果たして「より少ない犠牲」だったのか、他に犠牲を少なくする選択肢はなかったのか、がまずは問われるべきでしょう。

アメリカの政治学者マイケル・ウォルツアーは、根底から否定します。「1945年の夏において、勝利を目前にしたアメリカには日本国民に交渉を試みる責任があった。こうした試みすらもなく原子爆弾を使用し民間人を殺害し恐怖せしめることは、二重の犯罪であった」(『正しい戦争と不正な戦争、邦訳は風行社』)。


(4) WPのこの記事には、140以上の読者のコメントが寄せられており、なかなか面白いです。
かなり真面目に、きちんとした知識をもとに、コメントした人同士でアメリカ人の好きな「ディベイト」をしようという姿勢が見えます。

もちろん、「二人とも税金を使ってハワイに休暇に行ってその時間をちょっと使っただけさ」なんていうクールな感想もあります。

日本に対する厳しい意見もあります。あの戦争そのものについて、原爆を正当化する,天皇の戦争責任を追及する,「バタアン死の行進」のような捕虜虐待を指摘する・・・等のコメントがあります。
また、「その後すぐに、閣僚が靖国に参拝したではないか。不戦の誓いなんて口先だけさ」という厳しいコメントもあります。因みに防衛大臣の参拝は真珠湾慰霊と同じく取り上げられました。
靖国については、もちろん参拝する人たちの動機はさまざまでしょう。純粋に特定の故人を詣でるという人も多いと思います。
しかし、欧米を含む国際社会からは、歴史修正主義東京裁判の否定と一体化して理解される、それは結局は日本の国益にはならない、と私は考えますがどんなものでしょう?)


(5)他方で、「世界でいまだに戦争は続いている。だからこそ、平和であろうとする努力は常に称えられるべき」とか、
「俺たちの国だって、無警告で原爆を、しかも市民に落としたではないか。
シリア空爆だって宣戦布告をしていないじゃないか・・・」といった意見もあります。

もと海軍の軍人だったという人からは「第1に、なぜ、どのように戦争になったかをもっと学ぶべき、第2に、汝の敵を愛せよというキリストの教えを自ら問うべき」
「そもそも、アメリカは1945年12月には交戦国ではなかった。しかし、実際に連合国に軍事支援を行っていた。

そういう状態で(市民への無差別攻撃なら許されないが)軍事基地への不意打ち攻撃に米海軍自身が、備えるべきではなかったか、その責任はどうなのか・・・」


――等々、両論入り乱れて、(ひどいコメント、誹謗中傷もありますが)だいたいが真面目に、かつ長々と論じています。


2. このアリゾナ記念館、もちろん行ったことはありません。
ただ、これも忘年会で某先輩の話を聞きました。

彼は、父上が横浜正金銀行勤務でホノルル支店勤務の時に、自らもハワイに暮らし、オバマさんと同じ、小中高一貫の名門私立校に通って、真珠湾攻撃直前に帰国した方です。

帰国子女のはしりで英語の方が得意。
帰国した中学生時代、日本の学校で遠足に行った感想文で「牛がいらっっしゃいました」と書いて笑われたそうです。
それはともかく、今でも同窓会で数年に一度は母校を訪れるので、アリゾナ記念館に行ったことがある。

館内で英語のオーディオを聞いたが、説明は「真珠湾攻撃は奇襲」だし「この戦争は日本が仕掛けたもの」。但し、「日本が戦争に及んだのは追い詰められた国際状況にも一因がある」と解説していて、まあまあフェアな印象を受けた、と言っておられました。


ところで、米紙の記事の中に、オバマ大統領の就任当時といまの2つの写真を一緒に載せているのがありました。
8年の間に年を取ったなとあらためて痛感します。すっかり白髪になりました。
やはり激職だったのでしょうね。
そのあたりはまたの機会に。