詩集「わが涙滂々」の英訳本と東京新聞の記事など


1. 連休の田舎暮らしを終えて東京に戻りました。
孫も英国に戻りました。学校が始まり、出掛ける前に一人でチェス盤に向かっているという写真が届きました。「詰め将棋」ならぬ「詰めチェス」というのもあるのですね。前々回、たった2人が参加する課外活動で「準優勝」のトロフィーを貰ったという「ほめるのがうまい英国の学校」の話しを書きましたが、その次も準優勝、ただしメンバーはもう少し増えたようです。


2. 田舎では東京新聞は買えません。代わりにこれも地方紙の信濃毎日新聞を読み、帰京して東京新聞の購読を再開しました。
12日の同紙夕刊には、詩集「わが涙滂々―原発にふるさとを追われて」を紹介する大きな記事が掲載されました。
「福島 涙の詩 世界へ」という見出しです。

記事は――東京電力福島第一原発事故で避難を強いられた福島県葛尾村の小島力さん(82)が2013年に出した詩集「わが涙滂々」の英訳版が3月出版された。事故で人がいなくなり、荒れていく故郷の様子を書いた作品などを収録。心を動かされた東京の元英語教師が「海外にも発信したい」と翻訳を申し出た・・・――
と始まります。


記事は小島さんの写真、英訳を完成した女性の名前、出版した西田書店の社長兼編集長日高さんの名前とともに、「巧拙を超えたメッセージ性を感じた」と出版を決めた、というコメントも載りました。


実は、西田書店の日高さんには、雑誌「あとらす」を作ってくれていて日頃お世話になっています。
話題の英訳本が出たときに、彼から(ちょっと理由もあって)私にも送ってくれました。
すぐに読み、今回の英訳の意味は大きいと思い、
多少の宣伝にもなるかなと思って、ブログにも載せました。

http://d.hatena.ne.jp/ksen/20170312/1489275009

今回の記事で、広く知られることになるのはまことに嬉しいです。西田書店は彼と助手の女性(昔からの稀勢の里の大ファン、福島県出身)と2人でやっている、失礼ながらちっぽけな本屋ですが、なかなか良心的な本を出しています。


3. 田舎ではブルーレイに取ってある録画は見られないので、帰京してから見ました。
友人関連のもの2本です。
1本は「信濃コロンボ4軽井沢追分殺人事件」という内田康夫原作の推理小説をテレビドラマにした作品に、友人夫妻がエキストラで出演したもの。

彼は江差追分の日立支部長をしています。
ドラマの中で、「江差追分」を歌っている場面を入れたいという演出家の要望で、白羽の矢が立ったようです。奥様が踊りをやるので、この踊りも入ってお二人で出演、仲間と一緒に堂々とテレビの中で「追分節」を歌い、奥様がその前で舞いました。
まことに立派なものです。
このことについてはさらに次回か次々回のブログで、もう少しフォローしたいと思います。


4. もう1つは、放送大学の番組で「歌え、歓喜の第九」という番組です。

(1) 友人(家人の兄、つまり私の義兄でもあります)が放送大学でのプロジェクト「第九を歌う」に参加して、2年越しの練習をしてこの3月26日、東京芸大の音楽ホール奏楽堂で演奏会がありました。ちなみにこの日はベートーベンの死後190年の当日だそうです。

(2) その模様を練習から始まり、ずっと追いかけた番組を放送大学で製作し、テレビで放映されたものです。
公演の模様は1時間番組のうちの最後の数分でしたが、友人の顔も写って、家人と二人で「出た、出た」と確認しました。


(3) 合唱に参加したのは250人、みな放送大学の受講生から応募、中には教職員もいて、普段は先生として他の授業を教える立場にある人が素人として参加して、学生と一緒に歌う、こういう姿はいいですね。

250人の半数以上が、初めて合唱を歌うという、まったくの素人。60〜70歳代が7割だそうです。オーケストラは芸大のOBというプロ主体ですが、放送大学の学生からも募集して、オーディションで2人が合格した素人もいました。


(4) 放送大学は、基本は通信制の正規の大学です。
この「第九プロジェクト」も正規の授業でもちろん単位がつきます。南関東の7つの学習センターの合同授業で、しかし当然、通信制というわけにはいかず、「面接授業」と加えて自主ゼミも必要になり、7か所で2年で200回以上も集まったそうです。

さすがに放送大学と感心したのは、授業である以上、ただ歌を歌う、合唱の練習〈実技〉だけではなく、様々な関連の勉強とセットになっているということです。
 
作曲者ベートーベンについて、「第九」の意義、当時の時代背景や音楽史、第4楽章で歌われる「歓喜の歌」の作詞者シラーについて、
そして、ドイツ語の読みや、楽譜の読み、五線紙の書き方も学びます。


(5) 指揮者は、映画「男はつらいよ・寅さん」のテーマ曲をつくった山本直純氏の息子山本純ノ介さん。
合唱指導は某大学の教授で、おまけに、友人のお孫さんがこの先生の勤務する大学の学生でもあって、友人は20歳のお孫さんと一緒に、合唱指導の授業を受ける機会もあったそうです。何とも羨ましい・素晴らしい話です。


ご承知の通り、合唱の時間は、例えばヘンデルメサイア」に比べて、第4楽章だけでそんなに長くないですが、「専門家の誰もが認める難曲」だそうです。

「楽譜から読み取る力がないと歌えない」という合唱指導の先生のコメントもあり、放送大学の副学長が最初に、「第九を歌うって? それは無理でしょう」と笑いながらコメントしている微笑ましい光景も写りました。

残念ながら、私はとても挑戦できそうもありませんが、参加した人たちにとっては、本当に思い出に残る良い経験、そして良い勉強になっただろう、と思いました。