「在宅医療を知っていますか?」の勉強会


1. 岡村さんコメント有難うございます。昔ニカラグアの首都を歩いていて日本企業の名前を見て「抱きしめたくなった」という思い出、そういうことってありますね。
Bank of Tokyo の名前も、デビ夫人のように海外でそういう思いを感じてもらえる人が居たとしたら嬉しいです。


2. その・昔懐かしい職場で一緒だった友人の某君から教えてもらった「クオリティ・オブ・デス」という重い話題を、このところブログで取り上げています。

これを読んだ京都の下前さんから、過去の文藝春秋の記事のコピーを大量に送ってくださいました。
36頁もある記事を送って頂き、親切な方です。
文藝春秋は普段は読まないので、これも有難く頂き、拝読しました。
「うらやましい死に方」という特集で、読者の投稿の中から五木寛之氏が選んだものです。


しかも同誌は、最初は1999年、次は2013年と2回にわたって同じ特集をしています。
選者は何れも五木氏で最初は804通、2回目は795通の投稿の中からそれぞれ30通を選んで掲載しています。


その中身を紹介する紙数はありませんが、それぞれ投稿者の身内や友人の最期に触れた文章です。
何れも五木氏が「感想」を書いていますが、2013年には以下のような文章があり、なるほどと思いました。
――私たち日本人の「死」に対する感じ方、考え方は、14年のあいだに確実に変わってきたようだ。
いま、「生き方」と同じように、「逝き方」を現実の問題としてオープンに語りあえるようになってきた気配がある。
その「死」に対する日本人の感覚の変化が、前回と比較すると手にとるようにわかるのである」―――

なるほど、こういう考え方の変化が、友人に教えてもらった、「クオリティ・オブ・デス」を考える取り組みが日本でも徐々に広まってきている背景にあるのだなと理解しました。


3. 友人某君の方は、数年前に大病をして無事に回復したこともあって、いろいろと考えるよ
うになったのでしょう。


いまは、ボランティアで終末期医療の研究や普及活動を行う団体の事務局を手伝っています。彼に誘われて、本郷の東大医学部セミナー室で開かれた「在宅医療を知っていますか?」という勉強会に行ってきました。
100人ほどの出席で、私たちのような高齢者と、現場で医療や介護の仕事に携わっている主として若い人たちがほぼ半々でした。ケアする人と何れされる人とが交じり合った勉強会です。

まずは、
「現状は病院で死去する場合が約8割。
但し、徐々に在宅医療の理解が進み、行政の相談窓口もある。在宅医療に取り組むネットワ―クも構築されていて、体制も進み、取り組む人たちも増えて家族の負担も少なくなった」
という一般的な説明があり、続いて、
訪問看護師とは?」「訪問医師とは?」の順番で専門家の具体的な話がありました。


4. 看護師さんは若い女性、「がん性疼痛看護認定看護師」の資格をもつ。
初回訪問からの流れを、事例を交えて話されました。
感じている全ての痛みを聞いて、観て、触れて、その上でアセスメントをして、緩和措置をとる。症状のコントロールが大事。
他職種(在宅医、ケアマネージャーなど)との連携を図る。
そして、「病院では患者とその家族」だが、「家では、暮らしている人全てが主役」であり、「それぞれが自分の生活を大切にしていること」を忘れず、「家族の持つ力」を信じる。
そして「本人はもちろん、家族にも寄り添う」こと。

――ということで、
末期のがん患者の自宅を訪問看護していて、奥さんの誕生日が近いことを聞いて、「手紙と贈物をあげたら」と言ってみた。彼は実行してくれて、奥さんは初めてのこと、と涙を流して喜んだ。その数週間後に彼は亡くなった・・・という事例も話してくれました。


5. 医師は、東京大田区で開業している。午前午後に普通の内科外来を行い、その合間に在宅医療をしている。
原則、自転車で回れる範囲を看ており、年間約80人を担当し、20人ほどを自宅や高齢者施設での看取りをしている。
――という自己紹介のあと、本人と家族の了解を得て撮ったというビデオも見せていただき、以下のような話を聞きました。


(1)・在宅緩和ケアを選択しても様々な支援が得られる。
・病院と縁が切れたわけではない。
・医療だけではなく、介護による生活支援も受けられる。


(2) 在宅医療の基本的な考えは
・「和らげること」と「支えること」を重視する。
そして、治す医療(治癒モデル)から支える医療(生活モデル)への発想の転換である。

(3)「治す医療」は、病院で入院して治すことが目的、高度治療が前提。
対して「支える医療」は、生活の場(自宅、介護施設など)で展開する。生活を障害する医療行為は行わない。高度医療は必要がないことが多い。心とからだを丸ごと診る必要がある。
➜その結果、痛みや症状が軽くなることが多い。
(4)従って、「在宅医療」は、お金のかからない医療を行う。
また「スピリチュアルケア」にも取り組む。
――即ち、本人や家族との話し合いを大事にし、現状を肯定してもらう、最後の日まで生活者であること、様々なつながりを大事にする・・・
➜その結果、死が「敗北」ではなく、納得感や満足感を有した「到達点」に変質しうる。


6.というような話しを聞きました。 お二人の紹介するのは、70代の方の事例が多く、まさに身近に感じました。

看護師・医師のお二人とも実に誠実に取り組んでいるという印象を受けました。
質疑応答では活発な質問が出ましたが、むしろケアに取り組んでいる若い人たちからの質問が多く、悩みを語る方もいました。

答える医師の方も「ケアする人たちのケアが本当に大事なんです」と答えておられました。
辛い・大変な仕事に取り組んでいる方たちから実際に話しを聞いて、勉強にもなり、感動もし、頭が下がりました。