京都での「冷泉家時雨亭叢書百巻完結記念」の祝賀会


1,今回は紅葉見物を兼ねた京都の話まで書けるかどうか。その前にコメントのお礼と補足説明からです。

遅くなりましたが、前々回のブログへのarz2beeさんコメント有難うございます。
「リベラルがマイノリティとは思えないのですが、サイレントなのでしょうね。リベラルを好まない人がマジョリティとは思えませんが、サイレントではないようです」というご指摘をたいへん面白く読みました。

そう言えば今度の総選挙にしても、
小選挙区自民党の得票率は約48%。それなのに議席占有率は約74%。絶対得票数は約25%に過ぎない。」
これでは「反リベラル、保守」が多数派とは必ずしも言えませんね。
小選挙区制は民意を正確に反映しない。選挙制度を根本的に見直すべき時期にきているのではないか」という斎藤美奈子さん(文芸評論家)の主張はもっともだと思います。

2, (1)前回の、イアン・ブレマーの「中国にアドバンテージあり」との論説についてもいろいろご意見を頂きました。
下前さんの「隔世の思い」という言葉には実感がこもっていますね。

他方で、ブレマー氏の意見についてもフェイスブックから、
在米20年の木全さんからは「それでも最後はアメリカ型民主主義が勝つのではないか」という楽観論が、
またEconomist誌などを熟読する博学の中井さんからは「ブレマーとは個人的には付き合いがあるが、最近の発言はやや言いっぱなしに終わっていることが多い」という鋭い指摘を頂きました。


(2)確かに 「中国が勝った」の特集を組んだTime誌11月13日号にも、ブレマー氏と多少異なる意見を1つ載せています。
もと外交官でシンクタンク外交問題評議会」の会長リチャード・ハースは「習近平のジレンマ」と題して、短いコメントを寄せています。


「一見すると、中国の時代であるようにみえる。
しかし経済成長の鈍化、国有企業の債務超過、国家債務の増加、高齢化、格差の拡大・・・
等々、課題も多く、習主席の権力基盤は強固だが、その分、チェック&バランスが利かないというリスクも大きい・・・」とした上で、
「中国の将来は大方が考えているほど確かなものではない」と結論づけています。


(3)門外漢の私には何とも言えませんが、しかし習近平(シー・ジン・ピン)の存在感の大きさは、年初のダボス会議での基調スピーチから始まり、今年とくに際立っているのではないかという気はします。
恒例の「タイム誌、今年の人(Person of the Year」が間もなく発表されます。
2016年はトランプ、15年はメルケル、14年は「エボラ出血熱と闘う人々」、13年はローマ教皇フランシスコ、そして12年はオバマでした。


当たらずも八卦、当たるも八卦でいえば、今年は「シー・ジン・ピン」ではないかと推測しているのですが、果たして誰が選ばれるでしょうか?


3, ということで、以下にやっと京都の報告です。
11月23日、蹴上のホテルで「「冷泉家時雨亭叢書百巻完結記念」の祝賀会というのに出席して、序でに紅葉見物もして、大評判の京都国立博物館の「国宝展」も観てきました。「イノダ」と「松長」で知己にも親しく交流しました。

なかなか充実した滞在でした。

(1)冷泉家藤原俊成・定家を祖とする歌の家。ここにある、門外不出だった蔵書の公開を決意したのが1980年。「時雨亭文庫」という財団を設立1992年に第1巻「古来風躰抄」で始まった「叢書」が25年かけて今年11月に全100巻で完結したことを祝うものです。

(2) 無学で門外漢の私にはさっぱり分かりませんが、和歌だけではなく、国文学や歴史研究にとってもたいへんに価値ある出版だそうです。取りあえず、蔵にある、平安・室町から鎌倉前期までの主な書籍・典籍をすべて撮影して(合計3万数千カット)、これを「影印本」として出版する。


(3)長年編集に携わった学者の方々からは、蔵の中に何があるか分からない、出てきてこんな「すごい本」があるのか、(例えば、伝西行筆といわれているまだ誰も見たこのない、ある私家集の写本に定家の書き込みがしてあるもの)と驚いたと語る先生も居ます。


また、
「100巻並ぶとまさに壮観で、和歌文学研究は、この叢書抜きには考えられなくなりました」

「歴史研究の成果としては何といっても、定家自筆の『明月記』が出たこと。」
だそうです。


4, 最近は、冠婚葬祭の会に出るといっても殆どが不祝儀で、こういう華やかなお祝いの会に出席するのは珍しく、なかなかいいものでした。

(1) 学者・研究者や出版編集に携わった朝日新聞社の関係者や和歌の門人、「時雨亭文庫」の会員などが中心でしょうが、500人以上が出席して賑やかでした。

(2) 全100巻は、1冊2万5千円ぐらいする高価な本で、まず図書館ぐらいしか購入しないだろう・・・


と思っていたら、何と個人で全巻を購入した人が3人いるそうで、驚きました。
とくに専門の研究者という訳でもなさそうです。
当日、この3人の方には理事長から花束の贈呈がありました。
「まず、100巻も置いておける広い家に住んでいないと無理だね」と同席の姉などと話しました。


(3) これは、叢書とは関係ないことで面白かったのは、国文学では著名な久保田淳東大名誉教授の発声で乾杯をしたときです。
シャンパンではなく、日本酒で乾杯していただきます」という司会者の説明に、珍しいなと思ったところ、
スパークリングの日本酒でした。
しかも、同席の京都在住の従弟の説明によると、京都では、数年前に条例が出来て「乾杯は日本酒でやること」と決められたそうです。


もちろん条例なので法的な強制力はないが、市長などが出席する公の会ではやはりこの条例に沿うことが多い。
地元伏見の日本酒を振興したいという行政の意向なのでしょうが、それに合わせて、伏見の酒蔵もスパークリングの日本酒を作りだしているのだろうな、と思いました。