「タイム誌2017年今年の人の次点以下」とICAN

1. 小さな庭のかりんの木の枝に家人が毎朝みかんを置くと,目白などが早速やってきて、あっと言う間にきれいに食べてしまいます。冬の寒さ、彼らも食物を見つける苦労は大きいだろうと思います。


ところで前回の「タイム誌今年の人、沈黙を破った人たち」の報告には、正月早々コメントを頂き、有難うございました。
(1) フェイスブックで3人からコメントを頂きました。
まず、「日本では政治、社会でのThe Silence Breakersがもっと多く出てきて、世の中の立て直しをしてほしいです」。まさにご指摘の通りですね。

(2) 次に、「2017年 我が国で沈黙を破った人の筆頭・影響力の大きさから考えると、天皇陛下だと考えます。退位表明のお言葉が無ければ、今頃は憲法改正論議が最高に高まっていると考えます」。
これも、なるほどと感心しました。そう言えば、昨日の東京新聞は「両陛下3月沖縄へ」と1面に報道しました。この判断にもお二人の「沈黙を破る」強い意思を感じます。

(3) また、在米20年、シカゴで自ら会社を立ち上げて頑張ってきた方からは、「日本では人権に対する考えが甘すぎる。この点を曖昧にしてきたことが最大の問題」。
」というコメントを頂きました。
こういう、外で働いてきた日本人が増えると、社会も変わるのかなと思いながら読みました。海外に興味ない若者が増えていると言いますが、広い世界の「違う社会・違う人たち」をもっともっと知ることが大事ではないでしょうか。


(4)最後にブログの岡村さんのコメント、この方も海の外をあちこち見て、「違い」を意識してきた方です。ご指摘にあるように、たしかに子育ては動物と人間とで違い、人間の中でも日本は欧米に比べて過保護だという感じは私ももっています。

子供が小さいとき、ニューヨークで、ベビー・シッターには本当にお世話になりました。
夫婦揃っての外出の機会が少なくなく、我が家の場合ベビー・シッターをお願いするのは、上司のお嬢さんかアメリカ人の大家さんのお嬢さんのどちらかでした。どちらも大学生で、もちろん資格などなく、代金も安く、彼女らにとっても比較的気楽なアルバイトのようでした。しょっちゅう面倒をみている訳ではなく、勉強道具を持ってきて、宿題をこなしながら様子を見ていたようです。我々夫婦が戻ると、彼女たちを自宅まで車で送り届けます。何度も頼んだので、子供たちもすっかりなついていました・・・・。


2.本論の紙数があまりなくなり、今回は、候補になった人たちについて簡単に触れます。
次点―トランプ大統領(扇動者)、3位――習近平(議長、
4位――ロバート・ムラー(執行者)、5位――金正恩(脅威)、6位――コリン・キャパニック(理想主義者)、7位――パティ・ジェンキンス(先駆者)


3. このうち、6位のコリン・キャパニックはアメリカン・フットボールのプロ選手、2016年までサンフランシスコ49’ersのQBでしたが、昨年フリー・エージェントとなり所属は決まっていません。2016年秋に始まった人種差別の動きに対する一部の選手たちの沈黙の抗議行動、試合での国歌斉唱に膝を折って座ったままでいた、彼がその最初の選手でした。
トランプが大統領になって「こんな選手は首にしろ」とツイートし、国論は二分し、大きな社会問題になりました。

7位のパティ・ジェンキンスについては名前も含めて初めて知ることばかり。
アメリカの女性の映画監督で昨年「ワンダー・ウーマン」という映画で評判になった。日本でも公開されたそうですが、女性だけが住む島で、昔の伝説のアマゾネスのような女性戦士が人類平和のために戦うというようなお話だと。

「今年の人」を選ぶといってもやはりアメリカ中心になるのは避けられないでしょう。
少なくとも前者は、「人種差別への抗議」と「国家への忠誠はどこまで強制できるか」という問題を提起しており、世界に問いを投げかけているのだと主張するでしょう。しかし後者はどうもピンときません。女性を候補に選びたいのなら、2017年はやはりノーベル平和賞(受賞記念のスピ―チをしたICANの事務局長ベアトリス・フィンとサーロー節子さん)ではないでしょうか?


しかし、英米のメディアは、政府の意向を受けてか、核禁止条約の報道にかなり及び腰で、この点は大いに不満があります。
タイム誌はコリン・キャパにックを「理想主義者」、パティ・ジェンキンスを「先駆者」と名付けています。オスロでスピーチした2人こそこの2つの呼称にもっともふさわしいのではないでしょうか。


4.4位のロバート・ムラー、“ロシア・ゲート”捜査のため任命された特別検察官、もアメリカ人で、今回はアメリカ重視がとくに目立ちます。
彼の捜査の行方によってはトランプ政権に激震が走るかもしれませんが、トランプから事情聴取をして、「ロシアと共謀したという確証は得られなかった」と結論づけて、それで幕引きになるのではないか、という憶測も消えません。


もっとも、タイム誌は、ムラー(共和党員、もと海兵隊ベトナム戦争にも参加、法曹界に入り、トランプに解任されたコーミーFBI長官の前任)が、公正・廉直・厳格な人物であることを強調しています。

そして、アメリカの民主主義プロセスは依然として健全であり、法治国家である、それを立証するのがミューラーの存在なのだ、と相当肩に力が入っています。


5. 5位、3位そして2位については、誰もが知っている人物ですから、以下はごく簡単に。まず5位の金正恩は?
――候補になったのは、2017年の世界を騒がせたということに尽きるでしょう。
しかもその影響力はこれから一層強まるのではないか、とタイム誌は懸念しています。
即ち、
「トランプは、本心は孤立主義者であるにも拘らず、対北朝鮮政策では、中国、ロシア、日本、韓国と共同歩調をとらざるを得ないと認識している。
中でも、言うまでもなく中国の役割がもっとも重要である。
しかし問題は、「北」が中国と距離を置こうとしており、他方で中国自体の国益も分裂していることだ。



この間アメリカは、一方では韓国や日本に対して「北」に対抗して武装強化をすべきではないと説得を続け、他方では、「北」と冷静に共存する道を探る、これが唯一の合理的な選択肢ではないか。
しかし、それは、この若き独裁者をして今後さらなる影響力をもつ存在とさせるのではないだろうか。」


6.習近平について
――今年、彼の存在が内外にとってより一層大きくなったことは周知の通り。
「中国人の夢」と「国家の再生」を掲げてグロ―バルリーダーとして飛躍しようとする野望が今年明らかになった。しかもトランプは、当初の敵対的な態度を改めて、むしろ宥和的に接しようとしている。
中国は何れアメリカのようなリーダー的存在になるのだろうか?

そのアメリカですが、次点に選んだトランプを「アジテーター(扇動者)」と呼び、「大統領の在り方を基本的に変えてしまった」という点2位を理由にあげています。
即ち、「彼を愛するにせよ、憎むにせよ、トランプは過去の大統領の誰もがやらなかったやり方で、我々が何に注目するかについての思考に侵略してきている(Trump has invaded our attention ~)」。
それが、彼を「扇動者」と呼ぶ理由なのでしょう。