英国は二日間「暴風エマ(Storm Emma)」の大雪です。

1. 山口さん、遅れましたが2月24日付コメント有難うございます。ご指摘の通り、日本画は写実と装飾性が融合していると、「円山応挙論」にも書いてありました。

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「お土産話」ということですが、たいした話はありません。
私事になりますが27日からロンドン郊外の娘のところに滞在しています。
夏のような陽気だという東京と違って、英国は3月1日(木)と2日(金)は、大雪で気温も日中でも氷点下でした。
日本でも報道されていると思いますが、「ストーム・エマ」と名付けられて、欧州大陸発の大寒気が英国にも上陸、大雪をもたらしました。

娘の記憶では、2011年以来ではないかということですが、2日間は終日室内に閉じ込められていました。

到着翌日の28日(水)朝、起きたら、マンションの住人が共有する広い裏庭に雪が積もっているのでびっくり。
それでもこの日は朝日がきれいで、日中は陽も出たのですが、翌日、翌々日は終日雪景色で雪が舞い、飛び切り寒かったです。
それでもミモザの花が健気に咲いています。

ここはロンドン市内への通勤圏ですが、オタショーという小さな村。道路に出ると車の往来は激しいですが、一歩住まいのある地域に入ると、森と緑の草地に囲まれた田舎です。いまはどこも雪だらけです。
住まいは古いマナーハウスを切り売りして何十家族もが住んでいて、娘一家は長屋のような建物の一角に住んでいます。


2. 今回の滞在は、娘が二人目の出産で育児休暇を取っており、家人が先に東京から飛
んで、もっぱら子守りや家事を担当しています。私も後から追いかけて娘家族に久しぶりに会うということで、観光が目的ではありません。

従って、雪で閉じこめられてもさほど支障はなく、もっぱら室内で彼らと遊んだり、お喋りしたり、学校の宿題を見たりして、のんびり過ごしました。
そして日本のマンションと同じく、室内は暖かいので助かります。
外に出る機会がないのでせめて夕食は豪華にと、日本に比べればはるかに安いシャンパンを開けて酒盛りもしました。


3.到着翌日の28日はまだ雪も降り始めで、娘が上の孫を学校に連れて行く車に同乗して学校に行き、この日は同じクラスの生徒11人全員による簡単な「発表会」があるというので見学してきました。

しかし朝の道路は雪で混乱しており、車も慎重なゆっくり運転で、学校も翌日には早退となりました。
早退で早めに帰宅した彼は、この寒さをものともせず、早速、隣家の友人と裏庭で雪をいじって遊び始め、子供というのは元気なものです。
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彼が通う学校は、車で20分ほどかかる“オールド・ウィンザー”というところにあり、1888(明治⒛)年に創立されたイエズス会の経営する古い男子校です。日本では神奈川にある栄光学園イエズス会経営だと思います。

4歳から13歳までが在学し、最初の2年は幼稚園のようなもので、そのあと1年生から8年生までが日本でいえば小学校・中学校に当たり、そのあと上の学校に進学します。
総学生数は300名ほどと小さく、少人数教育を重視して、先生1人に生徒8人というのが平均だそうです。6年生になると少数のグループごとに「personal tutor」というのが付いて、最低週に2回、生徒の個人的な相談に応じるとのことです。


日本の初等教育のことはよく知りませんが、孫はいま1年生ですが、
(1) 2年生までは昔風の「読み・書き・そろばん」を重視する。
(2) 加えて人前で発表する機会が多く、自己表現を重視する。
(3) 運動や音楽などでは、皆で同じことをするよりも、自分の好きなことを伸ばすようにさせる。
(4) その結果、早い段階から、国語力と数学の能力を高めると同時に、個々の生徒が自らに自信を持つこと(the need to build each boy’s confidence)を重視している。
(5) 宗教教育(ここではキリスト教カトリック)がある
(6) 催し事が多い、例えば年に1回のロンドン訪問、これは全校生徒が参加して上級生が下級生の「世話係」の役目を果たす。年に2回、祖父母を招いての「ティー・パーティ」を開催する・・・等々。
といったところでしょうか。


前にも一度紹介したことがありますが、『ことばを鍛えるイギリスの学校』(山本麻子、岩波現代文庫)と言う本の中で著書はこう書いています。


「イギリスは、中学に上がるまでは、暗記重視のスパルタ式で、徹底的に知識を叩き込みます。算数だけはなく、国語の「語彙」や「スペル」も、細かいテストもたくさんあります。
その上で、同時に養ってきた表現力、発想力、論理性が、中学生以降、花を咲かせるようです」とあります。
本書は、著者がイギリスの大学に勤めながら3人の子供を現地校に通わせた実体験をもとにこの国の教育について書いた本です。
まず「はじめに」で、イギリスの初等・中等教育の特色について述べます。
(1) イギリス人にとっての「教育」とは「独立して考えることができるようになるため」であること。
(2) 「一人一人がこの世で居場所を見つけることが大切」でありそのため「生徒一人一人の個人としての評価を重んじなくてはならない」。
(3) その上で、「(母語としての)英語」の教育を何よりも重視する。
(4) 生徒への接し方は、「加点主義」を基本とする。「イギリスの教育では個々人はみな違うという前提がある。能力も違う。どの子も居場所がなくてはいけないから、一人一人のよいところを評価してやることが大切だと思っている。だから、どんな小さなことでも、達成したことはほめてやり、それによってその子の発展を促すようにしているのだ・・・・」。


3. 教育の他に、日本と多少違うなと思うのは、マンションに住む住人同士の付き合いが密なことです。
2で書いたように、子供同士が親しく遊んでいますし、大人たちもよく会っています。
別の隣りの弁護士夫婦は、上の孫の「代父母(ゴッド・ペアレンツ)」になってくれたっそうです。

この「代父母」という習慣は日本にはないのでよく分かりません。
もともとはキリスト教に関係する風習なのでしょうが、いまは宗教とはあまり関係なく、社会的・文化的に継承されているようです。

ひょっとして両親に何かがあった場合には多少の「責任」も伴うようで、そうそう簡単にお願いできない関係であるような気もします。しかし隣人の弁護士さんは喜んで引き受けてくれたようで、孫のこともとても可愛がってくれています。


また、別の隣人は家の前の道路を雪かきをして、塩をまいて、我が家の玄関前にもまいてくれました。お陰で家の前だけは雪が降っても積もらずに助かっています。
「お宅は赤ちゃんが出来て忙しそうだから気にしないで」と言って、時間の余裕のある人たちが自主的にやってくれるようです。


とまあ、こんな風に、寒い英国の田舎の家に閉じ込められてもそれなりに楽しく過ごしています。
3日の土曜日にはやっと雪が上がり、気温も日中6度とまあ普通の冬並みになったので初めてロンドン市内まで出かけて、マチネーのオペラを見てきました。