10日間の英国滞在で感じたこと

1. 家人は1ヶ月ちょうど、私は10日間、英国のロンドン郊外(田舎です)に滞在して、9日帰国しました。
3日以降は雪も降らず、まずまずの天気でした。少しずつ気温も上がり、マンションの裏庭では、春を告げる花として英国人の大好きなラッパ水仙(daffodil)の蕾が開き始めました。あと1〜2週間もすると一斉に咲き誇るでしょう。
  

 

2. 英国滞在中に拝読した岡村さんのコメント有難うございます。バリ島の私立の小学校を見学されたとは珍しい貴重な経験ですね。
学校に限らず、日本と他国との「違い」を実際に知ることには私もたいへん興味があります。些細な事柄での「違い」が面白く、今回はそんな「英国滞在雑感」の報告になりそうです。


学校について言えば、滞在中、娘が車で送り迎えするのに同乗して3回、いわゆる「プレップ・スクール」を訪れました。学校は幼稚園から8年生までの一貫教育です。孫は1年生になって半年ですがまだ幼稚園の延長のようで、先生と生徒が向かい合うというより皆で一緒に時間を過ごす雰囲気です。
 

教室の壁には生徒の作品が壁一杯に貼ってあります。それと「Code of Conduct(「行動規範」、要は「お約束事」)」の紙が貼ってあり、その上に「いじめ(Bullying)は駄目!」のシートも貼ってありました。「からかうこと」「のけ者にすること」「蹴ること」「(他の生徒の)持ち物を傷つけること」「下品な言葉を使うこと」・・・等々具体的に書いてあります。


―――ということは、「いじめ」はあるだろう。それを認めた上でこういう風に、「いじめ」とはどういう行動かを具体的に明示して、行動規範を示すことが大事ではないか、抑止効果にもつながるのではないか、と感じました。
日本の状況は知りませんが、同じように生徒に明示しているのでしょうか。


ところで、教室に行くにはまず建物の中に入らないといけませんが、入り口は中からロックされています。親は暗証番号で外から操作して自由に入ることができます。
私ひとりでは勝手には入れません。ところが、
たまたま通りかかった生徒(だいたいが上級生です)が、私の姿に気付くと必ず中から開けてくれて、私が入るまでドアを押さえてくれました。
何度もこういう経験をしましたから、そういう風にしつけられているのでしょう。
しつけは大事だなとあらためて思いました。


3. 学校は公共の交通機関では通えない田舎にあり、環境はいいですが、不便です。
通学は一部地域のスクールバスを除いて親の送り迎えが主体で、この負担はけっこうたいへんでしょう。下校時になると車が次々にやってきて子ども達が先生と一緒に出てくるのを待っています。
 

親の負担と言えば、1年生から宿題やテストもけっこう頻繁にあり、親が家でチェックする必要があります。こんな宿題もあります。
(1) 学校の図書から子供用の本を渡されて、それを読む。読み終えたら、返して、また次の本を借りて読む。
(2) 親はちゃんと読んだかどうかをチェックして、どこまで読み進んだかをノートに記録して先生に提出する。
(3) 面白いと思うのは、渡される本は各自がばらばらである。
かつ、1日にどこまで読み進むかは生徒の自由である。1日で1冊終えてしまう子もいればもっと時間がかかる子もいる。
(4) その上で何が書いてあるかを教室で各自が発表する。
(5) 私も、一晩、夕食のあと、1年生の彼が借りてきた本を読むのをチェックしましたが、なかなか面白い物語でした。

4. こんな風に、娘の家族と付き合い(亭主はたまたま仕事の出張で留守でしたが)、日々の暮らしをともにする時間が多かったです。
ある日は、TESCOという、ごく庶民的なスーパーに行くのに付き合いました。
日本よりも殺風景というか、内装や飾りつけに凝らない、実用本位の売り場です。
商品は肉にしても魚や野菜、果物にしても、ひとつひとつが大きいし、きれいに並べてある訳でもない。
品物をカートに入れてレジで会計をするプロセスは日本と変わりません。
いちばん目についたのは、入り口の近くに大きな箱がたくさん並んでいることです。これも見場はいっこうによくありませんが、大きな箱に
「地元の人たちを助けるために、食料品を寄付してください」と表示されています。
具体的にどういう食料品を欲しいかの説明があって(缶詰の肉・魚・野菜、ジュース類、朝食用のシリアル・・・等々)、さらに「TESCOは皆さまの総量に20%を加えて寄付します」と補足してあります。



TESCOはこれを行政の窓口に持っていくのか、それともNPOが窓口として担当しているのか、どういう体制かは知りません。しかし、家人に「日本のスーパーでこういうの見たことあるか?」と訊いたところ「ない」という返事でした。

一方で食料品が毎日無駄になっている、他方で日々の食べる物にも事欠く人達がいる、という現状は、心の痛むものです。


5. この日TESCOに行った主たる用事は、生後1ヶ月近くになる赤ん坊の、パスポー
用の写真を撮るためです。専門の写真コーナーがあってすぐに撮ってくれます。

娘は、産休中の夏に出来れば小さな子2人を連れて日本に一時帰国することを考えていて、早くも日本の旅券を申請するつもりです。
ちなみに、英国は日本と違って生地主義ですから、英国の旅券も取得できます。ただし、日本は二重国籍を認めませんから、国籍法上21歳までにどちらかの国籍を選択しなければなりません。


写真店の担当者は、インターネットで調べてくれて「日本の旅券取得の場合はベイビーでもちゃんと目を開けていないといけない。英国にはそんな規定はないので目をつぶっていてもOKだけど。」と教えてくれました。
些細なことで、行政の決まりには結構違いがあるのだと面白く思いながら、娘がしきりにベイビーの目を開かせようとする努力を眺めていました。
 

些細な「違い」と言えば、今回あらためて気付いたのは、日本人のマスク着用です。
英国ではどこに行っても、電車でも街でも人込みでも、マスク姿は皆無です。地元の多様な人種の英国人はむろん、外国人も観光客も誰もいません。
東京を歩いていると、とくにこの時期、少なくとも3人に1人はマスク姿でしょう。
羽田空港で、帰りの同じ飛行機から降りるとすぐにマスクをつけて歩きだす日本人を何人も見ました。


これはなぜか?もちろん花粉症という事情は大きいでしょう。
しかし、花粉症患者ってこんなに多いのだろうか。マスクで防ぐ以外に、もっと抜本的な対策は不可能なのか。
まさか、マスク着用が一種の「流行」や「お洒落」になっていることはないでしょうが、外国人にはやや異様な印象を与えるのではないか。
他方でマスクをつけた外国人を日本で見ることはない。日本人特有の習慣のように思える。
彼らは日本に来ても、花粉症にはならないのでしょうか。