24回茅野市平和祈念式典とジョン・レノンの「イマジン」

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1.先週の日曜日には、借りている畑に行ってじゃがいもを掘りました。

今年は畝づくりと植え付けの時に体調を崩して娘夫婦に全て任せ、収穫時だけ老人が横取りしました.

そんなことで量も減らし、おまけに気候不順もあって小粒の物が多く収穫も例年の4分の1に過ぎません。しかし取り立ての味は同じで、夕食においしく頂きました。

月曜日には暑い東京に日帰り。

翌日は6日で、例年通り第24回茅野市平和祈念式に家人と二人で出席。

あとは当地や東京から来た友人に会ってお喋りを楽しみました。

2.茅野市1984年に「非核平和都市宣言」を行い、以後平和事業の1つとして毎年8月6日朝、公園の「平和の火」前で市民が中心になって行われる「平和祈念式」に協力しています。

平和への思いを作文にしてもらい、8名の中学生を広島に派遣しています。

式典は40人ほどが出席する地味な催しですが、高齢化が懸念される市民有志がそれでも熱心に準備し、企画し、実施しています。

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 手作りの質素なプログラムには、「一万年の平和な時代を築いた縄文文化のふるさと茅野市。私たちの住むまちから非戦・非核平和を世界に向け発信」とあります。

派遣された中学生8人が語りかけ、広島・長崎両市長からのメッセージが読み上げられ、皆で黙とうをし、「平和の火」に花を捧げ、歌を三つ歌って終わります。

3.今年は、地元の永明小学校6年3部の生徒が先生と一緒に参加していました。

 こういう場で、老人ばかりだと寂しいですが、小学生、中高校生の姿を見るのはとても嬉しいです。

 担任の先生がたまたま家人の隣の席に座り、少し話もしました。

 プログラムに、彼が書いたのでしょう、この小学校の1年間の活動記録が載っていました。

(1)現上皇がかって、「忘れてはならない5つの日がある」として、1945年3月10日(東京大空襲)6月23日(沖縄戦終結)8月6日(広島原爆)同9日(長崎)同15日(戦争終結)をあげられた。

 5年生の夏、総合学習の時間で、まずこれら戦争の事実を知ることで、「平和」をテーマに学習を進めていくことを決めた。

(2)1年目には、

・この5つの日について各グループで調べた内容を発表した。

・生徒たちは、佐々木禎子(さだこ)さん(注、2歳の時広島で被爆し、12歳の1955年白血病で死去した。本人を初め同じ原爆病院の入院患者や多くの人が鶴を折って回復を願ったが叶わなかった。のち平和のシンボルとなり、オバマ元大統領の慰霊碑訪問の際も自ら折った鶴を平和祈念館に寄贈した)を思いながら千羽鶴を折り、皆で数か月をかけて千羽を作った。

(3)2年目には、

・「茅野市平和祈念式典」が行われる「原爆の火・平和の塔」のそうじ活動を続けた。

・「原爆の火(当時の広島の残り火)」を実際に茅野市に持ち帰った人の話を聞いた。

ユニセフがやっている「PEACE ORIZURU」の活動を学び、同じ活動を始めた。

(4)記録はこれらの活動を記載した上で、

「この学習を通して思うことは、“まず知ること”そして“考えること”。日本が過去に経験した戦争の悲劇を知った子どもたちは、その悲劇や悲惨さを少しでも多くの人に伝えようと頑張っています。子どもたちが願い、夢見る未来を支えることは、私たち大人の責任だと考えています」

と結びます。

(5)そして、1年経った6年生の1学期の終わりには、「50年前に平和への願いを込めて作られたジョン・レノンの「イマジン」を子どもたちと歌いました。世界中の人たちと同じ思いを共有できるようにと願い、英語で歌いました」と最後に書いてあります。

こういう小学校の先生がいるのだ、とちょっと胸が熱くなりました。

(と同時に、妙な忖度をする教育委員会や市役所の小役人が現れないといいなとも思いました)。

f:id:ksen:20190806095121j:plain(6)「イマジン」はご存知の方が多いでしょうが、ジョン・レノンの作詞作曲で(2017年に、作詞は夫人ヨーコ・オノとの共作と正式に認定された)、以下の詞が2回繰り返されます。

 ―You may say I'm a dreamer (僕のことを夢見る人と君はいうだろう)

  But I'm not the only one   (だけど、僕はひとりじゃない)

  I hope someday you'll join us  (いつかは君だって仲間になってほしいし)

  And the world will be as one  (そうなれば世界はひとつになるんだ)

https://search.yahoo.co.jp/video/search;_ylt=A2RAyHWyB01dpXUALQOJBtF7?p=%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%83%AC%E3%83%8E%E3%83%B3%E3%80%80%E3%82%A4%E3%83%9E%E3%82%B8%E3%83%B3&fr=top_ga1_sa&ei=UTF-8

 

4.この日、「松井広島市長は平和宣言で、日本が参加していない核兵器禁止条約への署名・批准を政府に促し、戦争で核兵器を使用された唯一の国として核廃絶へ一層の指導力を発揮するよう求めた」と新聞は報じました(信濃毎日)。

宣言の一部を引用します。

――2度の世界大戦を経験した私たちの先輩が、決して戦争を起こさない世界を目指したことを、私たちはいま一度思い出し・・・理想の世界を目指す必要があるのではないでしょうか。 

 特に、次代を担う戦争を知らない若い人にこのことを訴えたい。そして、そのためにも1945年8月6日を体験した被爆者の声を聴いてほしいのです。

 当時5歳だった女性は、こんな歌を詠んでます。「おかっぱの頭(づ)から流れる血しぶきに、妹抱(いだ)きて母は阿修羅(あしゅら)に」。

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・・・そして、世界中の為政者は、市民社会が目指す理想に向けて、共に前進しなければなりません。そのためにも被爆地を訪れ、被爆者の声を聴き、平和記念資料館、追悼平和祈念館で犠牲者や遺族一人一人の人生に向き合っていただきたい。 

(略)今、広島市は、約7800の平和首長会議の加盟都市と一緒に、広く市民社会に「ヒロシマの心」を共有してもらうことにより、核廃絶に向かう為政者の行動を後押しする環境づくりに力を入れています。(略)

 こうした中、日本政府には唯一の戦争被爆国として、核兵器禁止条約への署名・批准を求める被爆者の思いをしっかりと受け止めていただきたい。その上で、日本国憲法の平和主義を体現するためにも、核兵器のない世界の実現にさらに一歩踏み込んでリーダーシップを発揮していただきたい・・・・・・ーー

5.核兵器禁止条約は昨年国連で122か国の賛成で採択されました。条約は50か国の批准で発効し、国際法となります。 

 現在批准国は24か国です。小さい国が多いですが、欧州ではオーストリアバチカン市国オセアニアではニュージーランド、アジアではタイ、ベトナムが含まれます。

松井市長の平和宣言のあった日、安倍首相は広島での記者会見で「「現実の安全保障の観点をふまえていない」と、署名・批准に否定的な考えを改めて表明」したとのこと。

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この人は、ジョン・レノンが言う「dreamer」ではないのでしょう。

 そしてトランプを筆頭に世界中のたくさんの人が、日本人の多くも、松井市長を、そして9日の田上長崎市長の平和宣言を「夢見る人」の言と思うかもしれません。

 しかし、ジョン・レノンは「だけど僕はひとりじゃないんだ(But I am not the only one)」と歌います。

 そして、ドイツの社会学マックス・ウェーバーは、『職業としての政治』と題する、今からちょうど100年昔の1919年、大学生に向けた講演で、政治とは何かとともに政治家の倫理と責務について語り、最後にこう結んだのでした。

――「自分が世間に対して捧げようとするものに比べて、現実の世の中が(略)どんなに愚かであり卑俗であっても断じて挫けない人間。どんな事態に直面しても「それにもかかわらず(デンノッホ)!」と言い切る自信のある人間。そういう人間だけが、政治への「天職(ベルーフ)」をもつ」(脇圭平訳、岩波文庫)。