- オンライン講演会が、コロナ禍の中で盛んになりました。
会場に足を運ばなくても、自宅のパソコンから視聴できるのが便利です。
このブログでも「ゴリラからの警告」など報告しました。
今回は青梅慶友病院のオンライン・イベントです。
- 「映画『いのちの停車場』公開記念の講演会をやる」という案内が病院から届き、6月27日、田舎家で妻と2人パソコンに向かいました。
吉永小百合主演で評判になっているぐらいの知識しかなく、なぜ慶友病院で「公開記念講演会」を実施するのか不思議でした。
始まってすぐ、理由が分かりました。
(1)映画は、南杏子氏の同名の原作(2020年)をもとにしたもの。
(2)南氏の本名は渡辺由貴子といい、本職は医者(内科医),
(3)しかも青梅慶友病院に勤務している。
これなら同病院が彼女の講演会を企画して、理事長と対談するのは当然です。
- ということで、まずは南杏子氏について。
(1)もともとは文系で、日本女子大卒業後、出版社などに勤務した。
(2)終末期医療への関心の原点は大学生のときの祖父の介護だった。夫の留学で暮らした英国で、40歳でも50歳でも大学に入り直す人がいることに目覚め、帰国後33歳で医者を志し、東海大学医学部に学士入学し、首席で卒業する。
(3)夫の仕事でスイスにも滞在、帰国後青梅慶友病院に勤務して15年目になる。
(4)かたわら、医療小説『サイレント・ブレス』で2016年55歳で小説家デビュー、すでに5作を刊行している。
- 次に、青梅慶友病院について。
(1) 先代の理事長が「自分の親を安心して預けられる場所をつくる」ことを目指して1980年に開院した。「医療&終の棲家」のコンセプトで、終末期医療専門の施設である。
(2) 現在600人強の患者が入院しているが、平均年齢は90歳弱、ほとんどがここで人生の最期を迎える。いままでに8000人以上、最近は年200人強をここで見送る。病院での平均滞在期間は約4年。
(3) 毎日が楽しいと感じながら過ごしてもらい、「お陰様でいい最期でした」と遺族に言ってもらえるような病院を目指している。そのため、いろいろ企画を考える、たばこも酒もOKなど、かなりの自由を患者に許容する。
5.以下は、渡辺医師(南杏子さん)の話と2代目理事長との対談から。
(1)処女作の題名「サイレント・ブレス」とは「静かさに満ちた日常の中で穏やかな終末期を迎えることをイメージする」言葉であり、それがこの病院の理念である。
(2)慶友病院に来て、患者への対応が他の病院と異なり、カルチャー・ショックを受けた。
・患者を病人というより、不自由ながら“人生の最後を過ごす人”として扱う。
・患者に対して全職員が“リスペクト(敬意)”を持つ、そのシステム作りが出来ている。
・家族との関係づくりを大事にする、
の3点である。
医療についても、来た当初は、つい、やり過ぎて失敗したが、ちょうどいい治療があるのだと教わった。検査しすぎない、薬漬けにしない、リハビリも適当に・・・など。
医師としてはもう戻れないということが分かる、ありのままを受け入れることが大事。
(3)これに対して、理事長は、ここは超高齢者が最晩年を過ごす場所であり、そのための終末期医療は、通常の「治す・良くする」医療とは異なることを強調していた。
良くなったかどうかをゴールにするのが普通だが、終末期医療は違う。残された家族に「いい旅立ちだった」という満足と良い思い出が残るのが病院としてのゴールだと思う。
――というような話で、たいへん勉強になりました。
6.実は15年前、妻の母もここで最期を見送りました。
ぎりぎりまで我が家で妻が見ていたのですが、車椅子の暮らしの仕様にはなっておらず、入院してもらい、1年弱お世話になりました。96歳で亡くなりました。
たびたび見舞いにいきましたが、気持ちよく過ごせる場所だという印象でした。東京の都心から少し遠いのが難点ですが、その代わり、緑の豊かなところにあります。
周りに家族がいない場所でやはり寂しかったろうと思いますが、本人もそれなりに満足していたようで、病院には大変感謝しています。
ぎりぎりまで家で過ごし、滞在は比較的短期間でもありました。
そんなご縁があって、病院のOB会のメンバーにもなり、今回のイベントのお知らせを頂いたものです。