ゼレンスキー大統領はいつまで発信を続けられるか?

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  1. 今回もウクライナの悲惨な状況です。「私はキエフを決して離れない。最後まで残る」と繰り返し語るゼレンスキー大統領と2百万の市民が残る首都キエフに向けての、ロシア軍の総攻撃が今にも迫っていると伝えられます。

 

他方で、ネット時代もあるにせよ、国家存亡の危機にあってここまで頻繁に世界に、国民に発信し続ける一国のリーダーを、私は他に知りません。

前回は彼のロシア国民向けを紹介しました。

今回は、以下の2つをご紹介します。彼はいつまで発信できるでしょうか?

言葉に力はあるでしょうか?

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2.一つは、市民に対する無差別攻撃を伝える言葉です。

 

(1)3月6日、侵攻11日目、キエフ郊外で、市民が砲撃され、8人が殺害されました。

ゼレンスキー大統領は、

「逃げようとする2人の子供と両親が、路上で殺されたのです。どれだけ多くの無辜の家族が、このようにして殺されるのでしょうか。

我々は決して許さない。決して忘れない」。

そして、(英語字幕で)“atrocity(暴虐行為)”という言葉を使いました。

Moscow accused of targeting civilians fleeing Ukrainian cities - as it happened | World news | The Guardian

 

(2)4日後に病院が空撃されたときも、これは「ウクライナ人に対する“genocide(ジェノサイド=特定の人種・宗教・民族の大量殺害)”だ」と、一段と痛烈な言葉を発しました。

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3.もう一つは、9日(水)、英国議会でのオンラインでのスピーチです。

(1)ゼレンスキーはまず、「私たちが始めたのでも望んだのでもない、しかし始めざるを得なかった戦い」の過去13日間の苦闘を一日ごとに振り返ります。

Thirteen days of struggle’: Zelenskiy’s speech to UK parliament – transcript | Volodymyr Zelenskiy | The Guardian

 

(2)その上で、シェイクスピアの「ハムレット」3幕1場の有名な、ハムレットの第3独白の冒頭、「to be, or not to be」を引用します。

「あなた方がよくご存知のこの問いが、13日前、私たちウクライナ人にも問われたのです。

そして、今もこれからも、答えは明らかです。

「To be(なすべき)」であり、「To be free(自由に向けて)」なのです」。

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(3)もう一人の英国人、第二次世界大戦時のチャーチル首相の,これまた有名な歴史的な演説の一節も引用します➡だから、「私たちは最後まで戦います。決して諦めません。決して屈しません。森で、野原で、海岸で、通りで・・・・あらゆるところで戦います」。

 

(4)ゼレンスキーは、戦い続ける強い決意と同時に、孤立無援で戦うことへの苦悩と、英国を含むNATOへの失望と今後の期待もにじませつつ語りました。

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4.最後に、1週間以上前ですが、英国BBCが「この戦いはどのように終結するか?」と題して5つのシナリオを載せました。

5つ自体、特に目新しくはありませんが、以下の通りです。

(1)Short war (短期決戦)

(2)Long war (長期戦)

(3)European war (戦争は欧州に拡大する)

(4) Diplomatic solution (外交交渉での解決)

(5)Putin ousted(プーチン追放)

 

5.そして以下の結論です。

――これらのシナリオは相互に排他的ではない。

しかし、どのように展開されようとも、世界は変わった。現状に戻ることはないだろう。ロシアと世界との関係も変わるだろう。欧州の安全保障の考え方も変わるだろう。

そして、リベラルな国際ルールに基づく秩序がそもそも何のためにあるのかを再度見出すことになるかもしれない。

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補足すれば、

・ このうち「長期戦」が可能性としてはいちばん高いかもしれない

・ロシアが仮に制圧したとしても、 そのあとのウクライナには抵抗と苦難と混迷が長く続く、

――とBBCは言います。