「モツレク」を聴きました。

  1. モツレク」とはモーツァルトの「レクイエム(死者のためのミサ曲)」のことで、合唱仲間ではもっぱらこの略語が使われるそうです。

 

2.その「モツレク」を、4月16日(日)文京シビックホール大ホールで聴きました。

麻布OBプラス合唱団の演奏会です。

混声四部合唱ですが、学校は男子校なので、女声は在校生と卒業生の母親たちで、「+」と命名される所以です。

3.最年長は84歳の男性で3人登場。何れも私の同級生ですが、うち1人は義兄でもあるので妻と二人で聴きました。

3人の活動力には感心します。1年間の猛練習をこなし、楽譜に加えてラテン語も覚えたのでしょう。

義兄のS君からは、「思いっきり声を出してレクイエムを楽しむことが出来たのは最高でした。合唱はやっている人が一番楽しんで、聴きに来る人はその付き合いで、まあ巻き添えですね」とあり、老人の生き甲斐のお手本です。

4.「まあ巻き添え」の私としても、彼が事前事後にいろいろ解説をしてくれたお陰で、

充分楽しみました。

(1)モーツアルトニ短調レクイエムK 626は、1791年に死去した彼の絶筆であり、未完に終わったため、残された楽譜をもとに弟子が完成させました。

 

(2) S君によると、

「今回のモツレクは、鈴木優人補筆校訂版という楽譜を使ったほとんど初演です。

モーツァルトの死後に楽譜の断片がみつかり、それは多分レクイエムの中にアーメンコーラスを入れようとしたのだろうと多くの研究者が考え、数人の作曲家・研究者はその断片から想像を膨らませて補筆校訂版を出しています。

鈴木優人(麻布OB です)のもその一つです。

曲の中程に有名な合唱「Lacrimosa (涙の日)」がありますが、その次に「 Amen 」を独立した楽章として入れました」。

 

(3) 「涙の日(ラクリモーサ)」と呼ばれる楽章は、「やさしきイエスよ、かれらすべてに安息を与えたまえ、アーメン」で終わる4分ほどの美しい曲です。

 

(4) "Lacrimosa" from W.A.Mozart Requiem KV626/ モーツァルト「レクイエム」より「涙の日」 - YouTube

モーツァルトを主人公にした映画「アマデウス」で、ウィーンの宮廷楽長だったサリエリが病床にあるモーツァルトのレクイエム作曲を手伝う場面があります。この挿話自体は作り話ですが、このあと、モーツアルト死去後の映像のバックに流れるのが「涙の日」の韻律です。

(4)私が愛聴するリッカルド・ムーティ指揮ベルリンフィルスウェーデン放送合唱団によるCDもそうですが、通常の演奏では前述したように最後に「アーメン」と歌って楽章を終える。

ところが、モーツァルトはその後に続く10秒ほどの自筆の譜面、美しい旋律を残していた。

そこで鈴木氏は、この譜面を主題にして1分強の「アーメンフーガ」を補筆し、「涙の日」のあとに独立した楽章とした。

 

5.そしてこの日、この「アーメンフーガ」も演奏されました。

(4) Requiem in D Minor, K. 626: Sequence VII. Amen - YouTube

これも美しい曲です。

6.ということでいまも、生のモツレクを聴いた余韻が続いています。

CDを聴き、図書館で『レクイエムの歴史、死と音楽との対話』(井上太郎)を拾い読みし、若い頃に愛読した小林秀雄の「モーツァルト」を書棚から出して読み返し、妻と二人で「アマデウス」のDVDを観て、モーツァルトの世界にひたっています。