エコノミスト誌の論説と豪州の二重国籍問題

1.お2人のコメント有難うございます。
名無しさん「田舎にステイタスを感じている馬鹿」とのこと、確かにそうですね。
しかし英国人は「田舎(country)」を実に愛し、大事にします。まさに「ステイタス」です。彼らの方が私よりさらに「馬鹿」なのでしょうね。
柳居子さんの真面目な考察には感服しました。「帰るべき田舎を持っていた時代の人を羨ましく感じる事も有ります」とあります。母に連れられた私たち一家も戦後、熊本の亡父の田舎の家に世話になりました。いろいろと考えさせられました。


2. ということで「馬鹿」な田舎暮らしを続けていますが、この夏も、家族などの滞在もあり、賑やかでした。私事ながら、遠くロンドンからも5歳半の孫を連れて娘がやってきました。
本人と亭主の日本での仕事に併せてやってくるのですが、孫に何とか日本語を覚えさせようという希望もあるようです。滞在中は、祖父と祖母は(下手なジャパニーズ)イングリッシュは使わないで、日本語で孫と喋ってくれとしつこく言われます。


40年以上も前に建てた古い「夏の家」で、他に田舎がないせいもあって子供たちも、小さい時からこの地で遊びました。
「柱の傷はおととしの〜背比べ」という歌の文句の通り、柱には子供たちの身長を測ったあとが残り、今回は孫も測りました。6歳の時の母親とほぼ同じところに「柱の傷」が残されました。

3. 娘から、飛行機の中で読み終えたというエコノミスト誌8月19〜25日号を貰いました。
茅野ではもちろん買えませんし図書館にも無いので、私が最後に東京で買って手元にあるのは7月1〜7日号です。
2冊の表紙は、この間1か月半経っていても、ともにトランプ大統領です。
まったく、相変わらず人騒がせな大統領です。「トランプの決断力の欠如、教養の低さにあきれる米国人は多い。私たちが過ごす高齢者住宅でも、彼を支持している居住者は数えるほどしかいない」と、米国に暮らす入江昭ハーバード大名誉教授・元米国政治学学会会長(政治学)は書いています。

もちろん中身も彼の記事がありますが、紹介する気持になりません。
代わりに、論説(Leaders)に、「豪州の二重国籍問題」を取り上げた「二重の幸福(Double Happiness)」が面白かったのでこれを以下に取りあげます。


4. 20年以上前ですが豪州には仕事で3年半住みました。
ただ、不勉強のせいで同国の「憲法」を読んだことがありません。


日本でも報道されていますが、その豪州の「憲法」44条には「連邦議員は他国の国民であってはならない」という規定があって、これに抵触する議員がいることが分かり、問題になっています。
最初は、野党「緑の党」の議員2名について発覚して辞職。騒ぎは拡がって、ついに与党の現副首相ジョイス氏が「ニュージーランド(NZ)の国籍も持っていることが分かった」として、NZとの外交問題にまでなっています。

緑の党」の議員は、1人は3歳のときにNZを離れ、もう1人は赤ん坊のときに両親とともにカナダから移住した。
ジョイス現副首相も同じく、父親がNZ生まれとのこと。

エコノミスト誌の論調は以下の通りです。
(1) いまや、人々が自由に移動し、移民し、国際結婚が当たり前になっている時代である。
1つ以上の国籍保持者は、彼らが税金を払っている限り、歓迎されるべきである。


(2) 中国、インド、インドネシアはいまだに二重国籍を認めない。
日本とドイツも厳格に規制している。

しかし欧米の殆どは二重国籍を認めている。豪州も国会議員は憲法で禁止されているが一般の二重国籍はOK、そもそも、26%の豪州人が外国生まれである。

(3 )二重国籍を認めないルールは、「血と国土(soil & land)」にアイデンティティを求めるという「残酷な思想(crude notion)」に基づく。

いまや兵士は志願制であり、グローバリゼ―ションの時代でもあり、このような考えには合理性はない。

国家の忠誠を脅かすのはいまや二重国籍ではなく、むしろ、金銭欲であり、イデオロギーであり、脅迫によってであろう。
国家間の緊密な関係は、衝突を減らし、貿易を通して繁栄をもたらす。
そして国籍をあわせ持つ国民が増えることは、国と国との結びつきを強める大きな要因になるのではないだろうか。


5. 二重国籍が発生するのは、国籍法が国によって違うからです。
日本は“血”を大事にする「血統主義」で、法2条に「出生の時に父または母が日本国民であるとき」は自動的に「日本国民」となります。
そして11条(国籍の喪失)1項「日本国民は、自己の志望によって外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う」。
さらに14 条(国籍の選択)は「外国の国籍を有する日本国民は〜22歳に達するまでに、いずれかの国籍を選択しなければならない」。

他方で、英米など多くの国は「出生地主義」を採用しています。
従って親がどんな国籍かに無関係に、生まれた時にその国の国籍を与えられます。

私の5歳半の孫がまさにそのケースで、彼は日本の法からは「日本国籍」、英国の法からは「英国国籍」。したがって、当然にいまは2つのパスポートを持っています。

「彼が22歳になるまでに日本の法律が変わってほしいけど・・・・・。
変わらないとすれば、その時に彼がどちらの国籍を選択するかは、本人の意思を尊重するしかない」
と娘は言っています。


6.娘家族は英国で暮らし、税金を払い、孫も英国人と一緒に教育を受けています。
両親は何とか日本語を習得するようにと、家では必死になって日本語を使い、教えています。
しかし将来も英国に住み続けるとして、彼が日英両方のアイデンテイテイを維持できるか?というと、
個人的な努力をしたとしても、日本のお国自体がそれを認めてくれません。(英国側は問題ない)


そういう個人的な状況を抱えつつ、上に紹介したエコノミスト誌の「論説」を読むと、
いつもながらの同誌の、「首尾一貫したリベラルな姿勢」が眩く感じられます。


豪州でも、44条はさすがにおかしいと言う意見が出て、憲法改正も検討課題になってているようです。

方や白鵬関が日本国籍取得を検討している、と報じられています。
出来ればモンゴルの国籍も失いたくないけど、と悩んでいるだろうと思います。
モンゴルの法律は知りませんが、少なくとも日本では「日本国籍」を取得してもモンゴルの国籍を捨てる必要はない、という法改正は難しいのでしょうか?

まだまだこの国では、二重国籍に反対する人の方が多いのでしょうか?