早朝の散歩と病院のこと

  1. 暑い日がこう長く続くと、体に応えますね。

日中は避けて、早朝30分ほどの散歩を辛うじて続けています。

  1. 有難いのは、すぐ近くに恰好の場所があること。

東大リサーチセンターのキャンパスがあり、我が家から裏門まではすぐ近くです。

ただし朝8時開門なので、少し遠回りして24時間空いている正門から入り、緑と建物の中を歩いて、帰りは裏門から出ます。早朝は静かで、犬を連れた姿を見かけるぐらいです。

3.歩きながら二人で、病のことなど話します。

(1)妻はこの1か月ほど不眠に悩んでいます。

私は、尾籠な話ですが下剤の管理に苦労しています。

いきおい外出に慎重になります。

 

(2)二つとも、原因は分かりませんが、老化だろうと言われています。

不眠の方は、行きつけの内科医で処方された薬が効かず、「睡眠障害総合クリニック」に私も同行して行きましたがうまく行かず、別の内科の先生に行き、そこで頂いた薬が効いて、今は少し安定しています。鍼灸院にも行き、これまた私が同行しました。

最初の内科医からは「私は睡眠薬の専門ではない」と言われたそうです。

 

(3)悩める患者は、お医者様のちょっとした言葉にも影響されるようで、最後に頼った内科医では「眠れないのは辛いよね」と言葉をかけられ、それだけで「寄り添ってくれると感じて嬉しかった」由。

 

4.高齢者は、躰の不具合が珍しくありません。

90歳の私の先輩は、ふらつきがあるので診てもらい、「あなたの病気は「老化」です。私には治せません」と言われたとのこと。

(1)それでも、何でも気軽に相談に乗ってくれるようで、そういう存在は有難いです。

(2)贅沢な願いかもしれませんが、小児科があるように、「老人科」があればいいな、そこに行けば、話しを聞いてくれる、「寄り添って」くれる、そういうお医者様がいると嬉しいな、というような話をしました。

  1. そんなとき、たまたま京都のNagai先生のFBを読みました。

(1) 夏風邪に悩まされながら外来に対応しておられる姿に感動しました。

 

(2)そしてある外来の患者について、こう書いておられます。

「86歳の女性。病気は安定に経過。もう25年のお付き合い。彼女から満州から戻り戦後日本の戦争未亡人に雇用を与えた父のこと、雑草のように生きたいと話していた母のこと(など伺った)。夫亡きあとも1人で暮らして自立されている」。

(3) 長い付き合いでここまで患者さんを把握しておられることに感銘を受けました。こういうお医者様に診てもらいたいものです。

 

スマホでの買物、私には出来ないけど・・・。

  1. 今の若者は、日々、スマホを活用して上手に買物をしているでしょう。

私はいまだにパソコン世代で、スマホは電話のやりとりに使うぐらいです。

ところが先週の某日、妻が次世代に手伝って貰って、「スマホでの買い物」を実行する現場に立ち合いました。

以下、その顛末です。

2.我が家には、購入して20年以上経つ古いエアコンがあります。故障もなく頑張って動いています。

(1) そこへ、東京都が省エネ推進の観点から、15年以上前に購入したエアコンの買い替えに補助金を出すということを聞きました。近くに住む姪からの情報です。

(2)都に申請するには、補助金対象のエアコンであることを立証する写真の添付が必要です。

撮影は長女夫婦に頼みました。我が家に来て、妻のスマホで、製造年月日などの写真を撮ってくれました。

(3) 購入は家電量販店ノジマの狛江店に決めました。ノジマのアプリがこのスマホにすでに入っており、狛江には長男夫婦が住んでいます。

 

3.長男の妻は、事前に店に行って、該当の新しい機種があることを確かめてくれました。

(1)そこで先週、彼女と小田急線の狛江駅で待ち合わせ、3人で駅ビル内の店を訪問しました。

閑な私も、代金支払いと荷物持ちの担当、それに好奇心もあって同行しました。

そして、無事に買物が出来るのを眺めました。

 

(2)それだけの話ですが、スマホでこんなに簡単に買物が出来ることに感心しました。

手続きは、店の若い担当者が親切に手伝ってくれます。

購入手続きは全てスマホでやります。紙の書類は一切不要です。

都への申請も、スマホ経由です。

(3)おまけに、彼の説明でいろんなポイントが付くことを教えて貰い、補助金に加えてこれも割引となり、表示価格の3割以上安く購入できました。

  1. 若い人にとっては当たり前の消費行動でしょう。

(1)英国に住む次女から、最近薔薇の花とワインが宅急便で届きましたが、こういう買物もスマホでやっているのでしょう。

(2)しかし、老人には珍しい経験でした。

買物にいろんな「ポイント」が付くというセールストークも最近やたらに見たり聞いたりしますが、実際に利用する機会も今まで、ありませんでした。

(3) 今回こういう買物が可能になったのも、姪からの情報を得て、次世代の子供たちの手助けがあったからです。

我々夫婦だけでは、エアコン一つ買うことも出来ない時代になったなと痛感しました。他の高齢者が自力でやれているとすれば、立派なものだと感心しています。

『よみよみかたる』(朝倉かすみ、文藝春秋)を読む

  1. 『よみよみかたる』という小説も、朝倉かすみという著者も、毎日新聞夕刊に載った著者の写真付き記事に出合うまで、全く知りませんでした。

 

(1)昨年9月に出版されて、今年上半期の直木賞の候補作になりました。

著者は小樽生まれの65歳、幾つかの受賞歴があります。

(2)毎日新聞の記事は、「死を語り、人生を謳歌。新著で高齢者読書サークルの風景」という見出しで,

「本を読む喜びは、一人だけで抱えるものではない。時には誰かと(略)語り合うことで本への思いが増し、人生を振り返ることにもつながる。そんな読書会の妙味が凝縮された小説が本書だ」と始まります。

(3)私も70歳を過ぎてから世田谷区の有志で集まる読書会に長年参加してきたので、どんな内容かなと興味をそそられました。

 

  1. 物語はいろいろ拡がりますが、読書会に絞ると、

(1)メンバーは6人。男女3人ずつ。年令は92歳から78歳まで、あとの4人は80代。

(2)場所は小樽市のカフェ。月1回集まり、課題本を読んでいく。いま読んでいるのは、少し古いが児童文学の傑作『だれも知らない小さな国』(佐藤さとる、1959)。

(3)そこに28歳の若者(安田)が加わる。小説を書きながらカフェの店長をしている。読書会は20年続き、記念事業として、公開読書会と記念誌の発行を企画し、安田が責任者を任される。

 

  1. というようなお話ですが、特徴は以下のようなことでしょうか。

(1) 物語は安田の視点から語られる。彼が使うネット時代にふさわしい若者風の語りと、メンバーが時々発する小樽の方言との組み合わせが面白い。

(2)メンバー誰もが読書会をこよなく愛し、「いちばん大切な居場所」と感じている。

(3) そこでの話題は、課題本の「読み」から始まり、「個人的な思い出」や「自分の人

生の語り」に拡がる。それらのお喋りを通して、読書への思いと、読書会が何物にも代えがたい特別な時間になっていく有様が読者に伝わる仕掛け。

(4) 最後に、高齢者の集まりであるからには当然の、「老いと死」の話題も出る。

この重いテーマを本書がどのように取りあげるかで、作者の力量が問われるでしょうが、語り口は決して暗くはありません。

(5)毎日新聞の記事は、以下のように伝えます。

―「朝倉さんは「高齢者の彼らにとって死は最大の関心事」と話す。「一番怖いことを語ると、楽になるじゃないですか。死を語り、みんなで笑い合うことで、怖いものじゃなくなるといいなと思います」。

 

4. 昔、「太陽も死もじっと見詰めることは出来ない」と言ったフランス人もいたな、と思いながら読み終えました。

国際文化会館でと「シュガーヒル・クッキー」

  1. 外出に傘の出番が増えました。

六本木の国際文化会館での、先輩と後輩計3人の昼食会も雨の日でした。

(1)H先輩は90歳です。体調に波があり、「ドタキャンご免」の条件でしたが、幸いに出てこられました。3時間強のお喋りを楽しみました。

(2)後輩Fさんは3歳年下です。

ご夫婦ともカトリック信者です。

奥様の洗礼は18歳。夫君の入信は63歳と後年ですが、いまは所属教会の幹部で、毎年二十人の「代父(洗礼式に立ち会う大事な役目、Godfather)」を務めている由。

(3)H先輩も、いまは足が遠のいていますが、高校3年のときに洗礼を受けています。

ということで、この日はキリスト教についての硬い話も出ました。

 F君曰く、「カトリックは全ての教えがローマ教皇の下に一本化されている。その教えは「汝の敵を愛せ」に尽きる」。

 素人の私は、カトリックアメリ福音派との違いや、日本的な「宗教の多元的な思想」(山折哲雄)についてどう思うか、質問したりしました。

 たまにはこういう会話を交わす時間も大事だな、と改めて思いました。

  1. 別の日は、妻の妹の家に女性5人が集まり、私も野次馬参加しました

(1) かつて妻は、妹とその友人と3人で、「シュガーヒル・クッキー」と名付けたクッ

キーを作っていました。仲間内に評判良く、口コミで注文を受けた外部の方にも販売していました。

(2)10年以上昔に高齢を理由にやめました。ところが長男の妻と長女とが、多少暇になったせいか、ノウハウを継承したいと申し出て、3人のもとメンバーが往年のクッキー作りを伝授することになりました。

(2)ということで、6月12日(木)の午後、義妹宅のキッチンに、旧メンバーと教えを受ける次世代の計5人が集まりました。旧世代は昔を思い出し、次世代は伝授される楽しみを味わい、意義深く過ごしたようです。

(3)私は、写真を撮り、出来上がったクッキーを皆さんと一緒に賞味し、かつての思い出話にも花が咲きました。

 25年も前に、クッキーの名前の由来となったアメリカ・ニューハンプシャー州のシュガーヒルという小さな村を訪れた昔話も出ました。

この旅は、女性3人に、いわばツアー・コンダクターとして私も参加しました。皆まだ若かったです。帰国後すぐにその際の紀行文を書き、3人が、クッキーを買って下さるお客様に配ってくれました。最近になっても「あとらす」という素人雑誌の2024年1月号にも再度寄稿し、昔を懐かしみました。

散歩と緑雨のこと

  1. 相変わらず、銀杏並木を眺めながら大学キャンパスを散歩しています。

帰りに,駒場公園内に保存されている旧前田侯爵の洋館を覗くこともあります。

先週某日の館内は、午後からコンサートが開かれるので、演奏者の一人が朝から熱心に練習をしていました。


先週は雨の日が多く、「緑雨(りょくう)」という言葉を思い出しながら歩きました。

「新緑のころに降る雨」(広辞苑)を言いますが、恥ずかしながら俳句の季語でもあることを、最近知りました。

(1)中学高校時代の友人K君は、同期生仲間とのオンラインを通じての句会の幹事をしています。

12人が参加して、月に1回、それぞれが自作の句を投稿します。

(2)その結果を、K君がメールで同期生に報告してくれます。

残念ながら句作の才能のない私は、皆さんの力作を愉しく・感心しつつ拝見するだけに終わっています。

 (3) 5月のお題は「新緑」でした。

M君の句は、「新緑に静まりかえる前山寺」。

“ぜんざんじ”とは検索すると、長野県上田市にある「弘法大師が修行霊場として開いた古刹」だそうです。

S君は、「緑雨大国魂の神輿もゆ」とあり、「新緑」に代えて「緑雨」が使われます。

“大国魂”は、府中にある神社のことでしょうか。

3.幹事のK君の句は、「旅果つる円空の寺緑雨かな」。やはり「緑雨」です。

(1) K君からは以下のメールが届き、親切にも補足説明をしてくれました。

「昔、飛騨高山へ旅したとき、途中に円空作の仏像が何体もある寺があり、それが最初の円空仏との出会いでした」。

他方で、北海道江差へ、「江差追分」の唄の稽古に平成14年から通っていたのですが、この地にも幾つかの寺に円空仏があることを知りました。こんな北の外れの僻村にまで円空の足跡があることに驚きました。

この記憶がありましたので拙句したものです」。

(2)丁寧に句作の背景を教えてもらったので、いかに無学な私でもよく理解できました。そして、何度も読み返し、心に響き、以下の返事をしました。

「早速に解説を有難うございます。

「旅果つる円空の寺緑雨かな」は、旅の思い出がこもった句なのですね。あらためてしみじみ拝読しました。

貴兄もよく旅をしておられますが、江戸時代初期の仏師円空もあちこち歩いたようで、江差まで行って仏像を彫ったとは驚きますね。

「緑雨」が季語であることも初めて知りました。俳句を通してこういうきれいな

日本語に出合うのも楽しいです。そういえば、斎藤緑雨という明治の文人もいまし

たね」。

 

4.皆さんの力作を拝見しながら、この年になっても学ぶことはあるな、と嬉しく思っています。

 

 

 

『なぜアメリカの大学は一流なのか』を読み返す

  1. 今回は厚かましくも、25年も前に書いた拙著から始めます。

『なぜアメリカの大学は一流なのか,キャンパスを巡る旅』と題して、丸善ブックスから2001年に出版。

3回刷りました。読売新聞など書評でも取り上げられました。

(1)当時宇治市にある私立大学に勤務しており、新しい学科を立ち上げる担当になりました。文科省の認可を得るには、説得力ある申請書を提出する必要があります。

(2)その準備として、アメリカの大学について調べようと、2000年5月、学長と二人で10日間、東海岸の大学キャンパスをいくつか訪れ、理事や学長や教職員・学生の話を聞きました。

(3)その結果をまとめたものですが、内容は「旅行記」に、アメリカの大学の優れた特色を少し紹介しただけの本です。

しかし、アメリカの大学人からいろいろ学ぶ機会があり、有意義かつ楽しい旅でした。

61歳とまだまだ元気で、レンタカーを運転して移動しました。

  1. いま、この本を改めて手に取ったのは、トランプ政権とハーバード大学との闘いの行方が注目を集めているからです。

(1)「闘い」は拡がり、5月24日の毎日新聞は、「米政権「知の拠点」抑圧」「補助金凍結に続き」「ハーバード大留学生禁止」「大学収入源断ち、支配強化狙う」などの見出しが並びます。

(2)根っこには、「アメリカに根付く“反知性主義”の伝統」や「右派によるリベラルへの徹底的攻撃」があるだろうとは多くの識者が指摘するところです。

(3)4月12日号の英エコノミスト誌は論説で、「昨今のリベラルの奢りや慢心にも責任があるが、50年前に大学教員はリベラル2対保守1の割合だった。いまやリベラルが6に増えた。だからこそ、トランプ政権と保守派は、リベラルを徹底的に退治しようと本腰を入れている」と述べています。

  1. これからどうなるか?

(1)メディアは、トランプ政権の留学生禁止の判断にハーバード大が提訴し、州の連邦裁判所は「一時差し止め」を命じたと報じています。

(2)エコノミスト誌は論説で、トランプの権威主義や、民主主義への挑戦を跳ね返すには、有権者、市場、そして司法が本腰を入れて大学を支え、対抗するしかないと訴えます。

(3)アメリカの大学は、同国のソフト・パワーの最大の一つでしょう。そこから、自治や自由や多様性、優秀な研究者が失われることは、大きな損失でしょう。

(4)今後どうなるかは分かりませんが、政権側が本気だけに大いに心配です。

 かつて会った大学人の顔を思い浮かべながら、自由と民主主義の大国が魅力を失っていく姿を想像すると、悲しく怖ろしいです。

 

「心の居場所」と人との交流

  1. 前回のブログで、ご近所との交流に触れました。

コメントを頂き、有難いことです。

(1)Nagai先生からは、「私もイノダコーヒの5番テーブルで洛中の町に生きる異才、粋人、など知り合いになることができ、その味わいをかみしめています」とあります。

(2)京都イノダの5番テーブルは、私にも懐かしい場所です。

60年以上毎日座っている下前さんを初め、常連に会える。

病院でお会いすると少し緊張するかもしれないお医者様とも、気楽に話が出来る。

適宜、新しいメンバーも加わり、活性化する。

友人がだんだん減っていく老人には、こういう居場所がどれほど貴重な存在かを痛感し、羨ましいです。

 常連の飯島さんのFB上の写真をお許しなく勝手に転載しますが、同氏も「心の居場所」と感じているのではないでしょうか。

2. ドイツ在住の刈谷さんからは、昔、ドイツ大使館でお菓子作りのマイスターだった日本人と仲良くなり、今も交流がある、「刺激になる話を聞かせてくれる」とのこと。

海外では、こういう出会いが生まれるのですね。

 

 3. 海外への旅が多かった岡村さんは、インドネシアのバリ島で仲良くなった友人との40年以上の交友について書いてくれました。

5月に京都に来る予定が、体調が冴えないため中止となり、「これからはお互いにますます会うことが困難になり、それぞれたどって来た人生を振り返り感慨に耽っています」。

私も、海外暮らしで仲良くなった友人が多くいますが、もう会えません。

思い出に耽るしかないのは私も同じだなあと、心に沁みて拝読しました。

4.他方で、田中議員からは、「長いサラリーマン人生があったからこその出会い」と書いて下さり、「なるほど」と納得しました。

(1)63年前に一緒に入行して同じ企業で働いた仲間とは、退職後も同期会を開いて毎月会っています。昼食会ですが、10人が常連としてほぼ定着し、誰もが楽しみに現れます。

(2)今月の会は先週開かれました。

老いや病の話が多いですが、全員海外勤務を経ており、国際情勢の話題も多く、昨今はトランプ旋風が話題になります。

今月は、某君が、トランプ不支持率が支持率を上回ったという大手メディアによる世論調査の細かい内容を説明してくれ、そのあとアメリカの現状と今後を憂うる発言で盛り上がりました。日本についても、「長年の政治の失敗は少子高齢化と、農業政策。人間を大事にしない経営の問題も大きい」という発言もありました。

「10人の怒れる老人たちだね」と呟く人もいました。

私には大切な「居場所」です。