読書会と『老人と海』再び

  1. 今回もヘミングウェイの小説『老人と海』です。原作は1952年ですから、

今や古典です。


2. 年老いた漁師のサンチャゴと彼を慕う少年マノーリンとの交流の場面が素

晴らしいとは誰もが言うことです。

  

(1)岡村さんからコメントを頂き、青春時代の海外一人旅の思い出を披露して頂きました。

 

(2)彼は、旅の途次、モロッコでもメキシコでもコスタリカでも、現地の少年と出会います。

例えば、「物をねだるわけでなく、いつまでも僕のそばから離れない男の子が居ました」。

「夕方公園のベンチに座って居たら、靴磨きの男の子が靴を磨かして欲しいというので、足を差し出して運動靴を見せたら笑っていつまでも僕の横に座っていました」。

 

(3)『老人と海』を読むと、いつもこういう一期一会の思い出が蘇ってくるのでしょう。 


3. 私はこの本を取り上げた読書会を振り返っています。

(1) 読書会では、話し合います。夫々の感想を聞くのが楽しみです。

自分ひとりでは気付かなかった発見があります。

 

(2) 私たちの会では、

「サンチャゴは孤独だろうか?」

「どの場面が印象に残ったか?」

などの質問が出ました。

 

(3) サンチャゴは、妻に先だたれ、貧しく、ベッド・椅子・机に煮炊きのできる土間だけの粗末な小屋に住み、魚を獲ってひとり暮らしている。古新聞で大リーグの野球記事を読むぐらいしか楽しみはない。客観的にみれば、「孤独な老人」としか言いようがない。

 

(4) しかし、「孤独ではない」という意見も出ます。

何よりも、彼を慕う少年がいる。

海を愛している。「老人はいつも海を女性ととらえていた」。

(5)そして沖合で漁をしながら、海鳥や魚に声を掛ける。ひとりごとを言う。思い出す。

舟に近づく二匹のイルカを見ると、いいな、じゃれ合い、惚れあっているんだな、と思い、洋上を飛んできた小鳥が釣り綱にとまれば、「なあ、チビ、たっぷり休んでいけ」 と声をかける・・・・                                                   

 巨大なカジキに出会い、苦闘の末釣り上げるが、その過程で相手に敬意と友情を抱く。

「人間は叩きつぶされることはあっても、負けはしないんだ」と呟き 、「だれでも何かを殺して生きている」と思い、執拗に襲い掛かる鮫と闘い続ける。

――それは、孤独など意識しない老人が、自然や動物と一体化して生きる姿ではないだろうか。


4. 印象に残る場面は沢山あります。

一つだけあげれば、つがいのカジキの片割れを釣ったときのこと。

―カジキの雄は、まず雌から先に餌を食わせる。この時も雌が引っ掛かって暴れている間、雄はずっと離れなかった。

―少年の手を借りて舟に引っ張りこんでも、まだ雄は舟から離れようとしなかった。

―それから、雄は高く跳ね上がって、雌がどうなったか知りたいように舟を見てから、ようやく深く潜っていった。

―「あれは立派だったと、いまも老人は思っている。(略)だからこそ、あのときは悲しかった・・・・」

  1. 岡村さんも海外での青春一人旅で、時には、少年や動物に声を掛けたり、

ひとりごとを言ったりしたことがあったでしょう。