信州暮らしと「小さな村の物語イタリア」

1. 信州の田舎暮らしが続いています。昨日の、いや昨年の繰り返しの様な平凡な日々です。

昨年の20日には、地元のリーダー2人、東京からの一時滞在5人総勢7人の老人がボランティアで「オーハンゴンソウ」駆除作業。
我々夫婦も参加しましたが、今年は22日、昨年と同じメンバーで同じ作業でした。

オーハンゴンソウ(大反魂草)は、北米原産、キク科の「特定外来生物」とされ、
「特に北日本や中部日本の高地で多く、繁殖力が強く、在来植物の生態系に影響を及ぼす恐れがある。そのため、全国各地で駆除作業が行われている」。

因みに「明治以降に日本に入っている外来生物のうち、環境庁が法律で「特定外来生物」と指定した生物は、全部で132種類、そのうち植物は16種類で、輸入・飼育、栽培、運搬・野外に放つことが禁止されている」とのこと。「オオハンゴンソウ」もこの16種の1つです。


この、「在来植物」と「外来」との区別が私にはちょっと分らないところがあります。

「在来」といっても、日本原産だけではない。
要は、日本に入ってきたのが「古い」か「最近」かの違いに過ぎない気もするのですが、環境庁には、それだけではなく、前者は「善玉」で後者は「悪玉」という明確な線引きが存在するのでしょう。「繁殖力の強い新参者が、日本人に懐かしい古くからの草花を駆逐していく、これは生態系に影響する」という判断でしょう。

少なくとも、地元の人の長い歴史感覚・常識からすれば、このあたりにある「おたからこう(雄宝香)」(写真2)「月見草」「ホタルブクロ」「われもこう」「コスモス」、これらの野の花は「在来」種で大事にする。「オーハンゴンソウ」はそれらを駆逐してしまう。

長野県は「絶滅のおそれのある」動植物を「希少種」と指定して、その保護を呼び掛けています。


この日も、リーダーが「希少種」の1つだという「燕尾仙草」という花が咲いているところをわざわざ連れていってくれました。(冒頭の写真)

ということで、私たち「外来」者は、こういう「在来」の人たちの「保守」感覚を大事にして、大いにボランティア作業に参加して、いい汗をかきました。

雑木林の木陰で休みましたが、「あれは何の木ですか?」という私の質問に「くるみ、ミズナラ、落葉松、栗」と教えてくれました。

身近な自然に肌で馴染んで、変わらない穏やかな日々を大事にする。「特定外来生物」は警戒し、出来れば駆除する。田舎の人々の暮らしって、そういうものかなと感じました。


2. 2日前にTV で見た「小さな村の物語、イタリア」を思い出しました。
最近になって時々見るようになったのですが、長く続いている人気番組ではないでしょうか。


(1) もちろん、TV用に脚色された物語ではあるでしょう。イタリアの田舎の人たちが皆が皆、こんな風に穏やかに、幸せに暮らしている訳はないでしょう。現実には、いさかいも憎しみもいじめも、家族内のもめ事もあるでしょう。

(2) しかし、ここに登場する人たちは皆、善良で、真面目に働いている労働者階級の人たちが多く、豊かではないが、自足している家族の物語です。
食事の場面が必ず出てくるが,いつも家族が一緒で、手作りの、普通は一皿だけの素朴な料理を皆で賑やかに囲みます。

(3) しかも家族が数世代にわたってすぐ近くに住んでいる。
若い、子供の世代も、生まれ故郷に留まり、親の仕事を引き継ぐか、何とか職を見つけて故郷に戻ってこようとする。

(4) そして、故郷を、家族を愛し、友人との気の置けないつながりを大切にする。時には仲間と楽器を弾いたり、ボランティアで子供たちにサッカーを教えたりする。

(5) 何とも平凡で派手さや贅沢を全く感じさせませんが、彼らはまことに幸せそうで、田舎の「小さな村」が「不便だが、いちばん好きなところ」です。
    

3. この日見た番組に登場する主役は(A)96歳の老人と(B)、夫とレスラントと宿を経営している46歳の女性の2人です。

(1) Aさんは、勉強が良く出来たが、村を出て高等教育を受けるほど裕福ではなく、親の後を継いでブドウ園を維持し、いまは引退して自分用に畑を作っている。

10年間認知症を患った妻が4年前90歳で死去し、いまはひとり暮らし。妻との楽しかった思い出を淡々と語る。近くに2人の娘とその家族が住んでいてしょっちゅう来てくれる。
毎日夕方には教会の裏手に同世代の幼馴染が集まってのお喋りを楽しみにしている。
「私は誰かと話すのが好きなんです」と語る。


(2) 他方で、46歳の(B)さんは勉強が嫌いで、専門学校を中退。人に会うのが大好きで自然にこの職業を選んだ。
母もすぐ近くに住み、子供の面倒を見てくれる。
TVからは、あくせく働いている様子を感じない、余裕をもってできる範囲で働いているという印象をうけます。


4. この番組が好感が持てるのは、
(1) 物語を伝えることに徹するという姿勢。ナレーションが入るだけで、芸能人などが一切登場しないし、大げさな感嘆符(「すごーい!」)も発しない。
(2) 田舎で暮らす庶民の日常を、ただ淡々と物語るだけ。
(3) 提供するスポンサーはいま苦境にあえぐ東芝だが、地味で嫌みのないCMである。

というようなところでしょうか。


5、信州の山奥で見るから余計そう感じるのかもしれませんが、、「イタリアの小さな村」に暮らす人々が心に残る、良い番組です。
それにしても、日本では若者が(いかに故郷を愛していても)親のところに帰ってきて職を見つけて近くに住むという状況が、ほとんど見られない。その点の違いが、いちばん気になります。