立原道造とタイム誌「生きる工夫はLREFWO」

1. 海太郎さん有り難うございます。
立原道造ですか。彼の詩を読み返すとは、気持が若いなあ。
引用の詩はソネット形式(14行詩)で、こう続きますね。

―――雲がひとつふたつながれて行くのは
草の上に眺めながら寝そべってみよう ――

海太郎さんご指摘の通り、彼も
前回引用した啄木と同じく、寝て、空を見ています。
啄木は、盛岡城跡にて、立原は信州追分(いまの中軽井沢)の高原でしょう。
蓼科高原でも、或いは世界のどこかでも、いま、寝ころんで雲を、空を眺めている人がきっといるでしょうね。

2. 高原の秋、友人たちと泊まった、ペンションには秋明菊が盛りでした。
農場では保育園の子どもたちが遊び、
小学校から歩いて帰る子ども達も元気に笑っていました。
このあたり、子ども達は、毎日、子どもによっては何キロも歩いて学校に通います。公共の交通機関は走っていませんし、車で迎えに来てもらう余裕もないし、小学生は自転車も禁止されているでしょう。
私の家の近くにも小学生が居ますが、片道約4キロを学校まで一人で往復します。
まっすぐ帰る時が殆どでしょうが、時に「道草」をして、草に寝ころぶこともあるだろうか。目的地にまっすぐ行かないで無駄に過ごす、「道草」なんという言葉が、そもそもまだ使われているかなと思います。
私であれば、中学生の頃、電車通学で通いましたが、時々ひとりで、学校から澁谷駅までの約4キロ、ぶらぶら歩いて帰りました。
蓼科の子供たちと違って、急げば都電に乗ればいいのですから、まさに「道草」です。

2. 「道草」もそうでしょうが
「夭折(ようせつ)」という日本語もあまり使われなくなりました。
立原道造のことを考えると、まさにこの日本語は彼のためにあるような気がします。
1914年日本橋に生まれ、先祖は水戸藩儒学者の家。
東京府立三中(現・両国高校)から、一高・東大建築科に学び(1級下に丹下健三が居た)、建築事務所に勤めた。三中の先輩に芥川龍之介堀辰雄がいて、芥川以来の秀才と言われた。
東大の建築在学中には、卒業設計(「浅間山麓に位する芸術家コロニーの建築群」)を含めて3年連続、辰野金吾(東京駅や旧日銀京都支店などの設計者)賞を受賞し、「別荘をつくらせれば日本一」と折り紙をつけられる。
23歳のときに出した処女詩集と翌年の『暁と夕の詩』で第1回中原中也賞受賞。
生前世に出たのはこの2冊の詩集のみで、この頃から肋膜をわずらい、結核のため25歳で死去。


生前、詩人の室生犀星堀辰雄に師事し、可愛がられ、犀星は、哀惜をこめて若くして逝った立原の思い出を度々文章にしています。誰にも好かれる、本当に優しい・人柄の良い人だったようです。


3.「夭折」が少なくなった代わりに、周りには高齢者が溢れています。
たまたま昨日、大学時代のクラス会がありましたが、19名の元気なお年寄りが出席し、中に、「7年後のオリンピックを見たいという目標が出来て嬉しい」と発言する人も居ました。
東京オリンピックを見るまで元気でいたい、そういう「生きる目標」もあるんだなと、ちょっと不思議に感じた次第です。


もちろん、元気で長生きする老人が多い今は、溢れるばかりの才能と良き人柄を持ちながら25歳で世を去らなければならなかった人が決して少なくなかった(もちろん戦争の死も含めて)時代より、はるかに幸せでしょう。

ということで、「元気で長生きするにはどうしたらよいか?」に触れた文章が、数週間前のアメリカ・タイム誌に出ていましたので、ご紹介します。
「The art of living (良く生きる工夫、とでも訳しましょう)」と題する特集記事は、
「年を取っても自分の好きなことを続け、創造的に脳を使うことが大事」というメッセージです。

以下、補足します。

(1) 例えば建築家のフランク・ロイド・ライトは、名建築と言われるニューヨークのグッゲンハイム美術館の設計を76歳から約10年かけて完成した。
ゲーテが傑作「ファウスト」を完成したのは、81歳。
株式投資の専門家ウィリアム・バフェットは83歳の今も、負けなしの投資家である。
101歳まで生きたモーゼスおばあさんは76歳で絵を描き始め、80歳で初の個展を開き、その素朴な絵はアメリカ国民に愛され、切手の図柄にまでなった。
(日本でも柴田トヨさんという、92歳から詩を書き始めた女性がいますね)

(2) こういう有名人の事例だけでなく、最近の脳科学の研究によれば、年を取ることで活性化する「脳の働き」があり、いつまでも「創造的」に脳を使うことで、右脳と左脳とが互いに助け合う機能が生まれる・・・
と、何やら難しいことを学者は言っているそうです。
物事を素早く処理したり、記憶したり、事実を的確に把握して段取りをつける、というような脳の働きは確かに年を取れば間違いなく落ちる。
しかし、使うことで「創造力」はむしろ向上する・・・・そうです。


(3) 上のように言われても私にはあまり理解できないのですが、タイム誌は、例として1つの質問を投げかけます。

即ち、
「以下は英語のアルファベットを脈絡なく並べています。
  LREFWO
このABCの並び方を変えて、意味のある1つの単語にしてください」


(4) こういうパズルの答を見つけるには、若者も老人も、速さには関係ない。
むしろ、右脳(論理的な思考)と左脳(感性や直感)の両方が助け合うことで、老人の方が早く正解に達することがある・・・・


私はこの質問、いつまで経ってもさっぱり答が見つかりませんでしたが、こういう訓練をすれば、右と左の脳がお互いに助け合って、「創造力」「直感力」が高まって、「元気に長生きできる」・・・
脳科学者は言っているそうですが、本当でしょうか。


因みに、上の答は「花=flower」です。