1.『八ヶ岳南麓から』を面白く読んだので、このところ著者の上野千鶴子さんをフォローしています。過去の講演やスピーチを、Youtubeで視聴できるのは有難いです。
(1) フェイスブックからコメントも頂きました。
飯島さんは京都「イノダ」の5番テーブルで「著者のエピソードを聞いたことがある」とのこと。田中さんは立場上、彼女の活動への関心は高い筈です。
(2)上野さんは現在WAN(ウィメンズアクションネットワーク)というNPOの2代目理事長ですが、初代は中西豊子さんという女性で、日本で最初の女性問題専門書の出版社を京都に作りました。
当時こういう本を出す本屋が無かったとき、上野さんとその仲間も大いに応援してもらったようです。2011年に東大教授を退職するときの「最終講義」をYoutubeで視聴しましたが、中西さんを招待席に招き、感謝を込めて紹介する場面がありました。
(3)その中西さんは、2009年5月に女性の社会進出を支援するWANを立ち上げましたが、5か月後に、私の仲間が企画して京都の「カスタくんの町家」にお招きして活動について語ってもらいました。
藤野さんがコメントで教えてくれたので思い出し、「5年の歩み」という私たちの活動報告を見返しました。「京都に社会起業家の波を」という活動です。懐かしいです。
2.上野さんの数多くの講演の中では、2019年の東大入学式での祝辞が大きな話題になりました。
(1)祝辞で上野さんは、社会に出ればあからさまな性差別があると語ります。
(2) そして、そのことを研究する学問が40年前に生まれた。女性学と呼ばれ、のちのジェンダー研究となるが、自分もそのパイオニアの一人である。
(3)何が自分を突き動かしたかというと、「あくなき好奇心と社会の不公平に対する怒りです」
(4)その上で新入生たちに、「自分の弱さを認め、支え合って生きて頂きたい」
と語りかけ、こう続けます。
(5)「女性学を生んだのは、フェミニズムという女性運動ですが、フェミニズムは決して、女も男のように振る舞いたいとか、弱者が強者になりたいという思想ではありません。
フェミニズムは、弱者が弱者のままで尊重されることを求める思想です」。
3.(1)上野さんの問題意識の根っこには、「なぜ、生命を産み育て、その死をみとるという大事な再生産労働(育児・家庭教育・家事・介護など)が、その他の全ての労働の下位におかれるのか、なぜそれらの多くが無償で女性が担っているのか?」があります。
(2)彼女は,「ケア」という言葉をよく使います。「弱者」に向ける彼女の「視線」は女性だけでなく、障害のある人や老人にも向けられます。
(3)そしてケアは「非暴力の実践」であるとも言います。
社会的強者である男性もまたそこから学ぶことができる、とも。
(4)老化を日々実感している私たち夫婦も、「弱者の一人だな」としみじみ思い、上野さんの視線の対象に含まれていることに感謝しています。