我善坊さん、mytopgunさん、有り難うございます。

ご指摘の通り、リーダーへの評価についてのオバマの答えは、アメリカの民主政治思想の良い面が
出ていると思います。

今回も、コメントを頂いて、「ヘルシーなエゴ」について考えてみます。


1.mytopgunさんの、「自分のことはよくわかっているつもりなので・・」は
私の意訳に近いですね。自分との距離感がポイントではないかという気がします。
ヘルシーの反対語の「unhealthy(不健康な・不健全な・危険な。病的な)」なエゴとは?と考えると、
やはり「俺が、俺が・・」が強すぎる「エゴセントリック(自己中心的)」なエゴだと思うので・・・。
オバマの自伝を読んでいても、まことに希有で数奇な半生を送った人物だなと思うし、
自分を冷静に見つめる性向や他者への共感は、その人生から育まれたように見えます。



2.しかし、他方で、「ヘルシー」という言葉は、「自分を、エゴを率直に・素直に出す」という、
よりアメリカ的な意味にも取れますね。


こういう観点で補足しますと、日経の「私の履歴書」は時々、日本人以外が登場して、これが面白いです。
今月は、前駐日米大使ハワード・ベーカーですが、ここで彼は、大統領への野望を率直に語ります。


―――2度にわたる副大統領指名騒動を経て、私は悟った。受け身の姿勢では何も手にすることはできない。
もう一度、大統領選に絡むことがあるとするなら、「運転席(大統領候補)席」に座るのが一番だと」
(1月13日)――



これは、エッセイに書いたことがありますが、同じく「私の履歴書」に登場した、ジャック・ウェルチ
(「20世紀最高の経営者と言われたGE前CEO」にしてもカルロス・ゴーンの前任の仏ルノー
トップ(シュバイツアー)にしても、その野心を表明することに極めて正直・率直です。そのため、
競争心とエゴは強烈だが、きわめて率直かつフェアでもあり、むしろ好印象を与えます。


こういうのが「ヘルシー」なエゴだ、という意見もあることでしょう。

3.従って、mytopgunさんが言うように、下手に訳さないで、読む人の判断に任せた方がいいかもしれませんね。
さすが、日ごろ、翻訳で飯を食っているだけあって、面白い意見だと思いました。



4.私自身は、オバマの自伝を読んで、彼の思考と行動をある程度追いかけているせいか、前者の、
つまり「距離感」(他者への関心・共感とのバランス)
=ヘルシー、という解釈が彼の人となりに近いような気がしますが・・・・
別の考えもあるでしょう。




5.それと、「ヘルシー」なエゴは「健全な」と訳す方が普通でしょうが何となく私は、
「健康な」エゴと言いたくなります。「エゴ」というのは、やや身体的な感じを受けるからです。



6.最後に、「自分との距離感」という発想に関して、
これもたびたび引用したり、学生に語ったりしているのですが、大変気に入っている、
レヴィ=ストロース(昨年100歳を迎えたフランスの思想家)の言葉をご紹介いたします。


―――私というものは、何かが起きる場所のように私自身には思えます・・・
私たちの各自が物事の起こる交叉点のようなものです。交叉点とはまったく
受身のもので、何かがそこで起こるだけです――