ソーシャルビジネス起業塾「京都型経営とは?」

1. 皆様、詰まらぬ話にお付き合い頂き、まことに有難うございます。
我善坊さんの右脳、十字峡さんのナガシマさん、何れも知らない話で興味深いです。
お医者さんのarz2beeさんに「この頃ではないか?」と訊かれると少しぎくっとしますね。
そう言えば・・・・「この頃」少し、回数が増えているかも?
何れにせよ、柳居子さんのご指摘は有難いですが、チョンボばかりするボケた夫婦が長生きするのは
日本社会の為にならないでしょう。


どうもこの、「チョンボの多い・注意力散漫・慎重でない」欠点は、DNAのようで、隔世遺伝で孫が
引き継いだようです。

彼は中学の3年生で電車で通学していますが、車内で寝過ごすなどの失敗をよく起こして家族を心配させています。
この秋学期はついに、定期試験の1時間目に間に合わず追試を受ける羽目に陥った由。
まあ、こういう祖父が居るというのが、彼の唯一のエクスキューズになっているようで、私も周りに「心配する
ことはない。叱ってはいけない。くよくよしないところが良い」とアドバイスしています。

先日、ある若者(KSENの仲間で東京に転勤しています)から
「決まりきった人生コースというものが想定できない、若者にとって生きる選択の難しい時代になった。
そういうときには自己責任で自分の選択に自信をもつしかない。
そのためには、子供のときから、人と違った自分に自信を持たせることが大事ではないか」
という発言があって、なるほどと思ったものです。
なかなか、いいことを言う若者がいます。
「違うこと」に価値を付与するのはいままでの日本社会に薄い文化ですね。


2. ところで、帰京して10日以上経ちますが、今回も、京都の報告です。

11月26日(土)、「ソーシャルビジネス起業塾」の第3回目は、「京都型経営とは?」と題して、もとワコール
の役員を務めた加藤道彦さんの講義で、なかなか面白かったです。
僭越ながら、よくまとまった、とても良い講義と思いました。


まずは、京都企業には「老舗」が多いということ。
帝国データバンクのデータで、約130万の会社のうち100年以上続いているのが約2万2千社。
うち、京都は1030社で全国で4番目だが割合では3.8%とダントツでトップ。
1000年以上続く会社としては、「田中仏具店」「通園(宇治橋のたもとにあるお茶屋)など。

このような、京都の老舗の経営は「牛のよだれ商法」と呼ばれる。持続する、すなわち長い時間軸で考える
経営である。

3. その特徴として言えるのは以下の通り
(1) 正直であること(オリンパスの歴代の社長の態度と如何に違うか!)

(2) 身の丈、分限を守ること。無理をしない。「あれもこれも」をやらない。

(3) 品質本位=いいものを作ろうとする文化がある。
それだけ目の肥えた消費者が居たと同時に、「下らない」の語源は、消費の中心である江戸で受け入れてもらえない。
そういうことのないように留意する精神。

(4) 京都は閉鎖的と言われるが、実は「よそ者」を受け入れる文化がある(オムロンの立石一真、京セラの
稲森和夫、ワコールの塚本幸一・・・等々)

(5) 保守的と言われながら、実は、進取・革新の連続であり、同じところにとどまっていない。
(例えば、「跡取りが無能の場合は廃嫡すべし」というような家訓の存在)
(京都企業には「日本一」でなく、ぬけぬけと「世界一を目指す」と言う)

(6) いまの京都府亀岡出身の石田梅岩が始めた「石門心学」の影響も大きい・・・・「正直・勤勉・倹約」
を説き、「先も立ち、我も立つ」(いまで言えば「ウィン・ウィン」でしょうか)


4. 加藤さんの話で嬉しかったのは、前回の私の話や近著『小さな企業のソーシャルビジネス』を実にうまく
引用・参照して頂いたことです。

この本では「言葉」や「定義」(概念・考える枠組み)
を真剣に考えることの大事さにも触れており、その点が参考になったという前提で、
「京都型経営」を定義すると?
「道学(人間学)」と「実学(科学技術・革新)」と「京都磁場(歴史・文化・愛着心)の3つの要素の掛け算で
あるという説明でした。

5. いちばん面白かったのは、この「京都磁場」に触れて
京都の特色は「総合性」にあるという指摘でした。


京都では経営者や企業人が、様々な会合で同業者だけでなく、様々な分野の・多様な人たちに会う機会が多い。
しかも多くが、その分野の「一級品」の人たちである。
例えば、お寺の高僧、学者(大学の先生に限らず柳居子さんも
市井の学者ですね)、祇園の女将、文化や工芸の一人者・・・等々
若者(NPOや学生など)との交流も多い。

東京ではおそらくこういう機会が少ない。
本業から離れたコミュニケーションの場がある。しかもその道の「一級」との付き合いである。
ここから「革新」が生まれるし、企業経営者の「倫理感」も生まれるのではないか。
私流に言えば、京都には、こういう「ヨコのネットワークがある」ということだと理解しました。


6. それでは、「こういう京都型経営は京都特有なのか?他でも取り入れられるのか?」
という私の質問に対しては
「それぞれの地域は、自らの“磁場”を考えて・強くすること、例えば、“金沢磁場”でも“川越磁場”“でも、
歴史・文化・愛着心をベースに再構築できるのではないか」

という回答でした。


受講生が今回の話(前回の私の話も含めて)をどう受け取ったか?
意見交換や議論の時間はまだないので、これから来年になって「まとめ」の段階でいろいろと話合えれば
よいなと考えています。