「一人遊び」とソーシャルビジネス・フォーラム・イン京都

1. 海太郎さん、度々有り難うございます。15日から昨夕方まで京都に滞在しており、お礼が遅くなりました。
「一人遊び」という言葉、初めて知りました。「読書にふける」ことを言うんですか、なるほど、面白いです。
ちょうど今、気楽に読んでいる『快楽としてのミステリー』(ちくま文庫)に丸谷才一がこんなことを書いています。

・・・・ぼくたちはみな、小説を一人きりで読み耽るのだ。ごらんなさい、喫茶店の隅で『失はれた時を求めて』を開いている少女の姿がなんと寂しいことか。あるいはまた、満員電車の釣り革にぶらさがって『腕くらべ』を読んでいる中年男の心が、いかに周囲から隔絶していることか。


2. 京都では、府の助成により、この3月まで続く「京都式ソーシャルビジネスひとづくり事業」の一環の活動です。
塾生との付き合いで私が担当するゼミが11回あり、16日が最終日でした。

この間、2冊の本を読み、発表してもらい、話し合いをしましたが、本は「一人で」読むにしても、それを仲間と語り合い、経験や思いを共有することも大事だと思います。

塾生12人は、3月末には旅立ち、夫々が夫々のやり方で、自分の道を切り開いていくわけですが、私のゼミを通しての狙いとしては、
(1) なぜアメリカ(我々にとって「最大の他者」とも言える)を知ることに意味があるのか?
(2) ビジネスと働くこととは?
(3) ソーシャルとは?
を考えてもらうということにありました。

3. 最後のゼミは、上の(2)と(3)について話合ったのですが、私なりにまとめると、
(1) 僭越ながら、共著『小さな企業のソーシャルビジネス』の第5章から啓発されたというコメント
=「共感」の輪を広げ、人をまきこみ、「協働」することを通して、ビジネスの価値実現をはかることの大切さ。


(2) 当たり前だがやはり、「働く」つまり自分の食いぶちぐらい自分で稼ぐ、という姿勢が大事だろう。


(3) その上で、ソーシャルビジネスは別に堅苦しく考えなくもいいし、敷居の高いものでもないのではないか。
利益はもちろん大事だが、まずは自分が楽しく続けられること。
他人に共感してもらえること。
成長しなくても大きくなれなくても、スモールビジネスでいいではないか、


・・・等の意見が出ました。

某さんからは
「昨年末にジャンボ宝くじを買った。ひょっとして(あり得ないが、それでも)ウン億円当たったらどうしょうか?と考えた。
当たったら、前に勤めていた会社はすぐにやめたろう。しかし、今続けている活動は、やめないと思う。・・・・それがソーシャルビジネスの自分なりの定義ではないか」


この発言がけっこう、メンバーの共感を呼びました。
難病支援、小児の食物アレルギー対策、外国人も呼び込む丹後地域の再生と活性化、書を通してのビジネスと文化の融合、手作りの農業と養鶏の取り組み、子供服製作を通しての母子のつながりと新しいコミュニティ、絵を描くことでひきこもりやいじめに対処しよう、環境問題を京都と舞鶴から・・・等々みんな新しいチャレンジに取り組もうとしています。
しかも誰もが「仮に宝くじが当たっても(前の会社はやめるし、もうやめた。しかし今やろうとしていることは)やめない」と口々に言っていました。


4.17日(金)には、10時から午後4時まで四条烏丸の「きらっ都プラザ(京都産業会館)の4階で「ソーシャルビジネス・フォーラム・イン京都」が開催され、


彼らも参加しました。
10時からの1時間、「起業予定のソーシャルビジネス塾生達によるオープニングセレモニー」
という副題で、

2つのパフォーマンスが中心です。参加者が見守る中で、
1つは、木積さんが、塾生として半年過ごす「カスタネット交流サロン=町家」のふすまに「書」を書く
もう1つは、6年間の引きこもりを絵を描くことで乗越えた、同じく塾生の田村さんが、やはりふすまに「絵」を描く・・・
というもの。

この点を2つ補足すると、
(1) パフォーマンスは2人だけ(司会を入れても3人)だが、1時間の企画と準備を12人全員の「協働(コラボレーション)」で実現したこと
(2) しかも、「書」にしても「絵」にしても、ソーシャルビジネスを書や絵にしたらどういうイメージになるか?を皆で話しあった上でプランを練っていった・・・
ところが素晴らしいと思います。

因みに「書」であれば、木積さんは3枚のふすまに夫々、「正」「商」「笑」という字を書きました。すべて「しょう・しょう・しょう」と読ませるそうですが、これが、12名が話合った「ソーシャルビジネスを漢字にしたイメージ」だというわけです。

4. なかなかやるじゃん・・・と思いながら、拝見した次第です。


私のゼミはいちおう終わりましたが、お陰さまで私のような年寄りも、元気のある・明るい・前向きに生きる若い人たちの仲間に入れてもらい、
12名夫々にとっても、新しい仲間との、ヨコのネットワークが出来たことでしょう。


彼らの前途に幸あれ!
とエールを送りたいと思います。