原村のペンション「アカデミー」を守る女性

1.18日(水)に帰京しましたが、今回のブログはまだ茅野市滞在中の話です。

市に隣接する原村は人口7500人ほどの小さな村です。

そこでペンションを営む女性の話です。

  1. Mさんご夫妻は、20年ほど前、夫君の退職を機に東京から移住し、自宅兼ペンションを手に入れました。

(1)以来、原村の森や花をこよなく愛し、友人知人をお客に、宿泊と食事を提供してきました。

(2)そういったライフスタイルは、ロンドンなどの海外暮らしも影響したようです。

(3)縁あって知り合ってから、私も、大学や中高の友人、京都の仲間や英国からの友人夫婦まで泊まってもらいました。

(4)そして、昨年3月、夫君が病に倒れ、79歳で急逝。奥様は広いペンションに一人残されました。

3.今年の夏も二人で訪れて、80歳になるM夫人と歓談しました。その後もペンションを続けておられることに驚き、感服しました。

(1)いまは、宿泊客への夕食は提供せず、B&Bが原則。庭の手入れは人の手を借りるが、ペンションの維持管理はひとりでこなしている。

(2)原村には約90軒のペンションがあるが、お客の誘致や環境保護など、相互に協力し合って営業している。M夫人は仲間の最長老だが、今年はグループの班長をしている。

前日は、彼女の家で会議を開いた。オーナーの高齢化に対応して、「出払い」の負担をどうするかなど、話し合うことは多い。

―そんな話を聞きました。

 ちなみに「出払い」とは「草刈り、イベントなど、集落区で実施する共同作業のこと」

(3)ということで、M夫人、孤独を感じつつも、宿泊客のお世話や地域の仲間との触れ合いに忙しい日々を過ごしておられます。

おまけに、生来の人柄のせいか、態度に余裕があります。もとは専業主婦で、仕事の経験のなかった女性です。

 

4.M夫人には55歳の長男がいて、もともと彼の病弱を心配したことも,ご夫婦が原村に移住した理由の1つでした。

(1)自然にあふれた地に移住後、彼の健康は回復しました。いまは、11人いる村会議員の一人で3期目、今年は議長職にある由。

(2)まだ若く、ITに強く、「よそ者」の風を運んでくる彼のような存在は、原村にとって貴重な存在でしょう。

5.「ご主人がさぞ安心しておられるでしょう」という話をしました。

(1)彼は中学からの慶應義塾OBで、大学では軽音楽部のリーダーで、女子学生の人気が高い有名人だったそうです。

(2)「苦しまずに逝ったことはよかったが、もう少し生きて欲しかった。せめて、昨年夏の甲子園での慶應高校の優勝を見せたかった。在学時はブラスバンドのリーダーとしていつも応援に駆り出されていた」。

(3)夫君のご遺骨はまだ納骨せず、自室に置いてあるそうです。

「私が死ぬときに一緒に原村の墓地に埋めてもらうと決めている」と話してくれました。