前回、面白いテレビ番組を2つ観たと申し上げました。


2つ目が、アメリカに日本酒を売り込んでいる蔵元・大門康剛さんの話です。いま、アメリカでは日本酒の人気が上昇しており、特に高級なフランス料理屋などで料理と一緒によく冷えた吟醸酒をグラスで飲むのが大流行だそうです。


もちろん売り込んでいるのは大門さん以外にも多くの企業があるでしょうが、彼の物語が面白い。


日曜の朝8時、NHKの「ビジネス新伝説ルソンの壺」という番組で紹介されました。この番組は関西だけの放映と思います、ビジネスで頑張っている関西元気人を取り上げており、時々ビデオを取って事例研究としてゼミで学生に観てもらうこともあります。
以下、簡単な紹介です。

1. 大門さんは大阪交野にある小さな蔵元の6代目。アメリカへの売り込みを考えて現地に飛んで市場開拓の努力をした。ところが、現地の日本料理屋向けの日本酒は大手の酒造メーカーの生産が主体で流通ルートも日本の商社経由等決まっている。大門酒造のような小さな・日本でも知られていないようなメーカーは相手にされない。


2. そこで彼は、ウェブを利用した英語で情報発信を開始し、日本酒の歴史や文化などをブログで書き続けた。アメリカのあるワインの流通業者がこれに目をつけ、直接コンタクトし、商売が始まった、というもの。

3. つまり、英語によるコミュニケーション能力とブログによる情報発信(しかも、単なる個人的感想でなく、歴史の説明など、内容に工夫した)が決め手になった。いかにも現代の、しかも対アメリカビジネスらしい話と思います。

4. 「無垢根(Root of innocence)」というブランドだそうですが、輸送コストの問題等あり、4合瓶の市販価格が1本50ドルぐらいする。大門さんはこれを20ドルぐらいにして、もっと大衆が飲めるようにしたいということで、流通先と話し合い、一定量の輸出を確保することで19ドル程度に下げることに成功した。さらなる価格を下げる努力をして行きたいと考えている。


5. いちばん面白かったのは大門さんの経歴で,1969年、大学を卒業(中退だったか?)して5年、欧州・アフリカ・中近東を放浪。最後の2年間をインドに滞在し、悟りを開こうとしたところ、導師から「周りの役に立たずに、何のための悟りか」と言われ、帰国して家業である大門酒造に入社。自ら杜氏職を兼務して現在に至る・・・・ということは団塊の世代、というより全共闘の世代か。


何だか、新しい時代と新しい起業家が着実に生まれている、という印象を受けました。
同社の英文のサイトもたいへん丁寧に出来ています。